EX5・小野伸二
初めて彼を見たときの衝撃!
私は当時浦和レッズを応援していました。
まだ日本全国各地にJのチームはなかったのでね。
小野伸二選手は、とんでもないタイミングと、テクニックでパスを出す選手でした。
日本人にはないタイミングなので、それまでサッカー写真を撮っていたカメラマンもフレームに収められないという規格外。
とりあえず、本当に『ボールと会話できる』選手でした。
小野伸二っていうヤベーやつがいるっていうのは風のうわさで聴いたことがありました。
それが浦和に入団して、わずか半年で1998年のフランスワールドカップに召集されるのです。
通常、オリンピックは23歳以下なので、大卒の選手は半年で結果を出さなければならないので、ほぼ出場できない、と私は自身の小説で書いてます。
それを、高卒の選手がワールドカップを舞台にやってしまった!
当時の岡田監督は『中田ヒデに万一のことがあったら、代わりを務められるのは小野しかいなかった』と語っています。
そして、ジャマイカ戦に途中出場ではなく、最初から出ていれば勝敗は変わっていたかもしれないと、当時のジャマイカの監督も言っています。
1999年のワールドユースで準優勝したのも、彼の価値を上げる要因でした。
準決勝でなぜかイエローカードを貰ってしまい、決勝は欠場。
結果としてスペインにボロ負けしますが、『小野が出ていれば……』という論はいつまでたっても消えません。
そして、日本をオリンピック優勝に導くかもしれないと言われていた日。
日本サッカーの芽を潰す悪質なファウルが起こってしまうのです。
みんなその直前の交代で『伸二が交代だな』と思っていたのに、たしか小笠原満男選手が交代したのです。
ピッチの中、外、みんな意外だったそうです。
ここで、小野伸二が交代していれば、その後の日本サッカーの命運も変わったに違いありません。
小野伸二はテクニックこそそのままですが、フィーリングを失ってしまいました。
その後怪我が治り、オランダで活躍しますが、もはや以前の彼ではなかった。
『ファンタジスタ50』という雑誌では、『小野はもはやファンタジスタではない』と書かれてしまいます。
トップ下からボランチ、フリーキックを蹴る方から壁に入る方へと変わってしまったからです。
でも当時のバルセロナの監督、フランク・ライカールトが『バルサはオノというラストピースで完成する』と言ったらしいことを覚えてらっしゃる方も多いと思います。
本当に言ったかどうかはわかりませんが、全盛期の小野伸二ならバルセロナでシャビやイニエスタと中盤でやれたはずだ、と思いますよね。
でも、アヤックスのスカウトが高校時代の小野に惚れ込んでしまうのですが、プロになったあとの小野を見て『高校時代と何も変わってないやんけ!』と言ったこともあります。
オフ・ザ・ボールの動きやら運動量、守備への貢献が彼ならもっとやれたはずだ、とのことなんでしょうね。
日本代表では2002日韓ワールドカップで虫垂炎を患いながらも薬で散らし、ベスト16に貢献。
2006では、全盛期を迎えた小野がエースとなるはずが、逆にチームに混乱をもたらしてしまいます。
正直、筆者は清水エスパルスに移籍してからはそんなには知りません。
『もっとやれた選手』ではないかと思います。
『止める蹴る』の基礎技術は、日本歴代最高、世界でも屈指だったのではないか、と。
ショートパス、ミドルパス、はたまたロングパスも巧い。
ですが、その基礎技術に『プラスアルファ』が何かあれば、彼は世界でも屈指の存在になっていたはず。
それは、スピードだったり、パワーだったり、オフ・ザ・ボールの動きだったり、スタミナだったり、するのかもしれません。
遠藤保仁選手がオシムさんとの出会いで『考えて走る』ということを覚えたように、小野伸二さんもプロになってから良い指導者に恵まれていたら……
怪我さえなかったら、のたらればが許されるのであれば、彼はオランダで終わる選手ではあるはずがなかった。
やはり彼は『技術特化のもっとやれたはずの選手』だと思います。
ジダンとフィーゴに囲まれたフェイエノールト時代の写真がありますが、もしかすると小野本人もその白いユニフォームに袖を通していたかもしれない。
そんな淡い期待を抱かずにはいられない『日本人に一番夢を見させてくれた選手』
そんなところでしょうか。
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