第20話 開戦




 

 




 フォボスとの対談から、五ヶ月強。決戦の日まで残り一週間。

 レイキは相も変わらず、賢者特製のゴーレムを相手にしていた。


「graaaaaa!」


 激しい速度で迫る拳を、間一髪で避けると共に斬撃を加えるが、即座に再生された。距離をとりつつ、レイキは必殺技を夢想する。

 求める必殺技――一点特化の絶死の一撃。

 荒波を立てぬ水面の如き静けさで、吹き荒ぶ嵐の如き力を解き放つ。極限の集中状態、無駄を全て削ぎ落とした刹那で、行使される技。

 

 では、静けさとは何だ。

 何処まで突き詰めても、これは闘いであり、闘争本能は昂るが定め。昂りを無理やり抑えつけるのは、戦闘に支障をきたすだろう。

 闘争本能を猛らせたまま、粛然の境地に至る。それが、少年が会得すべき領域。

 どうするか、簡単だ。

 己と他の境界線を希薄にすれば良い。


(溶ける)


 彼我の差を溶かす。

 周りの環境に溶け込む。

 己の内情を操るのではなく、己の輪郭を曖昧にし、周囲と溶け込めば、猛りし静けさを得られる。

 耳を疑うような矛盾の極みを、少年は掴みつつあった。

 彼がその風景に存在するのではなく、その風景の一部として彼が存在する。

 大空の絵画を描く際、必ず太陽が必要なように、彼が其処にいて当然と思わせるほど、己を溶け込ませる。


「――――――」


 レイキが構えた。

 深く腰を落とし、【盈月】の切っ先をゴーレムに向ける。左手で柄を握り、右手で穿つ場所を補足する。

 剣を地面と水平にする、平刺突と呼ばれる技を、彼は片手のみで行使しようとしていた。

 狙いはゴーレムの動力源たる赤玉。

 追撃も、魔術も必要ない。

 この一突のみで決着をつける。

 レイキは地を蹴り、一直線に突進する。

 極限まで振り絞った矢のように、間合いを一瞬で詰める。


「――――u!」


 生命なきゴーレムは驚いたように赤玉を光らせた。

 核を貫かんとする大剣が、目と鼻の先に迫っていた。

 攻撃対象レイキから目を逸らしてはいない。だが、彼が構えた場面も、地を蹴った瞬間も分からなかった。

 いや、違う。

 それらの行動は、風景として溶け込んでおり、異常と認識できなかったのだ。

 機械の内部に発現する驚愕と讃美エラー、それさえも心地よく思い、少年の必殺を阻まんとする。

 たとえ対象との距離が一寸もなくとも、設定された速度スピードはプテロン級。

 デイモス級の力をもって、右腕で薙ぎ払おうとして――


水弾魔術スフェラ


 ――澄み切った水弾に弾かれた。

 目線を向ければ、ニヤリと笑う少女の姿。


「決めなさい」

 

 状態を崩し、核たる赤玉を不様に晒す。

 まさに格好の餌食。最高の瞬間を、少年は取りこぼさない。


「――貫け」


 寂滅の刺突が、核ごとゴーレムの頭を穿ち壊した。

 パリンと割れた音が響き、赤い破片が飛び散る。それは涙のようにも、盛大な礼讃ファンファーレにも思えた。


「でき、た……」

「おめでとう、レイキ」

 

 拍手と共に賞賛が聞こえた。


「あぁ。そして間に合った」


 振り向けば、白光の粒子を流しながら、消え掛かっている賢者の姿。

 決戦まで一週間、すなわち賢者が消える日はとっくに過ぎていた。騙し騙し現界を保っていたが、今日が峠だったのだ。


「これが最期だ。心して聞いてくれたまえよ」

 

 ひび割れた身体で、賢者は笑う。

 レイキをもっと褒めたいし、イコルの水弾の講評だってしたい。だが、それらをするには時間が足りない。

 最期の瞬間に、三人は押し黙って賢者を見ていた。

 

「まずはお疲れ様。三人とも予想以上の進化だ、教師として鼻が高いよ」

「先生の教え方が良かったからだよ……」

「ふふ、嬉しい事を言ってくれるね。そんな頑張った君たちに言葉を贈ろう」

 

 佇まいを直した。

 おちゃらけた先生ではなく、世界を背負う英雄としての貌に、固唾を呑む。

 初めて会った時のような、強者のプレッシャー。


「剣を執り、盾を翳し、遍く人々に光を与えなさい。仲間を守って、己を賭して、神々を打ち倒す。現世に黎明を告げる――人類の黎明アトナリー


 それは、賢者がしてきたことだった。

 最期の最後まで生命を焚べて、雷霆神に立ち向かった。親友と共に激戦を繰り広げ、終着点に封印されたとしても、その生き様は民の心を震わせた。

 だからこそ、叛逆の灯火は耐えていないのだから。

 アトナリー……黎明、太陽昇りし方角を表す言葉。

 彼らの偉業が、人時代の幕開けになることを願って、【八叛雄】が好んだ言葉。


「英雄となりなさい。我が弟子たちよ」


 これこそ、賢者の存在理由。

 分身が作られたのは、英雄の種を植え、芽が出るまで導くこと。史上の宿命にして、悲願である。


「と、言うのが英雄ケイローンの言葉でした」

「ん?」


 纏う雰囲気が変わった。

 大英雄たる賢者ではなく、弟子の成長を喜ぶ先生に。


 

「分身に過ぎない『僕』から贈る言葉はただ一つ――――どうか、笑顔に溢れる生を」

「わっ」

「ちょっ」

「おい」


 

 そう言って、先生は三人を抱き締めた。

 己が存在理由とも言える生徒たちを、宝物のように優しく抱き締める。


「世界で一番幸せなのは自分だー! って言えるくらい至高の生を紡いでくれ」


『彼』は思う。

 英雄とは希望の光であるが、進む道は地獄。数多の期待を背負い、沈黙は許されず、突き進む善心の奴隷。

 命尽きるまで英雄の称号は呪いのように付き纏う。休まる時はない、報われないことの方が多い。

 故に、笑顔に溢れる生を。

 どんな時でさえ、口角を上げ、羨むくらい美しい大輪の笑みが必要だ。


「湿っぽいのは嫌だからね。『僕』も笑顔で去らせてもらうよ」

「まっ、先生!」


 三人から身体を離し、ニコリと笑みを浮かべる。

 レイキは、胸から迫り上がるものを必死に押し留めた。きっと、先生が望むのは泣き顔なんかではなく、笑顔での別れだから。

 レイキは泣き笑いを作り。

 イコルはわずかに微笑んで。

 プテロンは鼻を鳴らし、片側の口角のみ上げた。


「さらばだ。君たちの未来に、大輪の加護がありますように――――!」


 最期まで『彼』は笑っていた。

 身体が粒子となり、魔力体の構成が崩壊する。

 レイキの伸ばした手は空を切り、三人の前に人はもう居ない。立ち尽くすレイキの肩を、プテロンが喝を入れるように叩く。


「行くぞ、レイキ」

「――あぁ、決戦を始めよう」


 

  




 その日、トラキアの闘士に首輪を通じて、決戦の内容が送られた。

 中身はフォボスに語ったものと変わらない。参加は自由、闘争区を戦場とした大乱戦。総大将であるレイキかアレスが倒された瞬間、勝敗は決まる。

 メッセージの最後には、レイキの言葉が添えられていた


 ――闘争を終わらせるために、最後の闘争を行う。


 選択の猶予は三日。

 

 半年間、闘争を望んでいた狂人達は猛った。

 ようやく、真のトラキアが帰ってくる。

 平和など生温く、致命的に合わない。いや、合わないよう己を作り変えた。

 闘争国で生き抜くために狂った者は、もう戻れない。少年が唱える理想など、唾棄すべきもの。狂人達の居場所は、闘争国しかないのだ。

 

 半年間、平和を享受していた闘士達は荒れた。

 また、闘争をしなくてはならないのか。

 生命を賭ける勝負に投じ、敵を殺さねばならないのか。

 沈んでいた恐怖が浮き上がると同時に、納得の念も湧き上がっていた。

 トラキアの歴史は、我々の手で終わらせる。

 誰にも譲らない、自分が積み上げてきたものは自分で壊す。尻拭いを他者にさせるわけがない。これは、我々の権利であり義務だ。

 怯える闘士は、叛逆者となる。


「これは……」


 アレスの認可をとり、参加するか及び、どちら側に味方するかは、首輪を通じて集計される。

 三日を待つことなく、一日で集まった結果にレイキは目を剥いた。

 。普通区に避難するのは、幼子や妊婦、障害を持つ者のみ。

 闘士達は、国の命運を他者の手に握らせない。

 組み分けは、アレス側が三割、レイキ側が七割。


「予想より集まったが、強さは予想通りだな」

「軒並み勝利数の低い者がこっちに着いたけど、勝利数の多い熟練の狂人達は、アレス様の方に行った」


 量ならレイキ、質ならアレス。

 異能社会において、万の軍勢より一の英雄が重宝される。状況は良いとは言えない。

 苦い顔をする二人に、レイキは指示を飛ばす。


「賛同してくれた七割に、決戦までの六日間訓練を施す。いつもの修練場に分けて集めて欲しい」

「今からか?」

「うん、しないよりマシだし。それに――」


 レイキは言葉を切り、先を見据える。

 量より質、確かにそうだろう。一対一が主流のトラキアには深く根付いている思想。

 だが、レイキが想う未来は個々が競い合う世界ではない。


「――彼らが、これからのトラキアの在り方を示してくれる」








 あっという間に六日は経ち、決戦の日がやってきた。

 太陽を隠す雲は消え去り、夕刻が迫る。鈍い紅が空を染め上げ、無人の闘争区を照らす。

 既に非戦闘員の避難はすんでいる。

 闘争区に集結しているのは、国の命運を変えようと足掻く叛逆者達と、阻まんとする狂人達。


『指定の位置、着いたぞ』

『こっちも、直ぐに敵陣に入り込める』

『隠密隊、いつでも大丈夫です』

「あぁ、ありがとう」


 首輪の通信機能を通して、準備が進む。

 アレス軍は北から進軍し、レイキ軍は南から進軍するため、決めた刻限までは南北の境界線を渡ってはいけない。

 六日間の鍛錬で、各々の特性を把握し、合った部隊に配属した。移動の速い異能は隠密隊、火力の高い異能は特攻隊、回復系異能は点在させ、南半分は叛逆者で埋めた。

 相手が圧倒的な力で捻り潰すなら、此方は個性を活かして戦うのみ。

 刻限まで少し時間がある。

 首輪の通信を、味方全員に繋いで声が届くよう設定した。


「もうすぐ決戦が始まる」


 レイキの声が、叛逆者達に響く。

 六日という短い時間で、数多の者と交流できた。もっと話してみたいし、出来るなら戦争なんて一緒にやりたくない。

 だが、此処はトラキアだから。

 未来は、闘争で掴み取らねばならない。


「もはやかける言葉は不要だ――――闘争国の歴史に終止符を打つぞ」


 レイキの鼓舞に、少女は微笑み、青年は静かに目を閉じる。

 背後の特攻隊は、小さくも強い背中に向かって、声にならない猛りを発した。


 

 叛逆者達が士気を高めるなか、アレスに与した狂人達にも動きはあった。

 彼らは最北端、闘神アレスの元に全員跪いている。

 レイキ達のように人員を分けることはない、正面突破で充分だ。小細工の必要はなく、全員が刻限になれば南へと突っ込むだろう。

 

「聞け。堕ちた闘争の獣どもよ」


 デイモスとフォボスを両脇に侍らせ、闘神は告げる。


「貴様らには、平穏の味が合わなかったのだろう? だから此処にいる」


 闘神の言う通り。

 彼らが平和を享受するには、闘争に浸かり過ぎた。


「今宵は復活祭だ。拳を振るい、剣を翳し、叛逆者を討て。我は貴様らを肯定しよう」


 狂人達は歓喜に震える。

 半年間の平穏でも拭えなかった、心底に潜むドロドロの闘争本能が呼び起こされる。


「指示は出さん。好きにやれ、我も好きにする」

「「「「「はッ!」」」」」

 

 雄叫びが上がった。

 狂気のままに彼らは吠える。

 命果てるその時まで、狂い続ける。

 それが、トラキアの狂人としての矜持だから。









 時計の針が進む。

 時間の経過と共に、闘争区では静寂が支配していく。

 普通区の養母と双子は家族の無事を願う。

 麗人は矢を番える。

 別働隊の少女は血槍を顕現する。

 狂信者は叛逆者を見据える。

 隠密隊の青年は暗獣を纏う。

 闘神は獰猛な笑みを浮かべる。

 少年は静かに双剣を握る。

 そして、刻限に至った。


「行こう」


 戦士全員の闘志が膨れ上がった。

 決戦、開幕。

 後に、闘争国大乱戦トラキア・マキアと呼ばれる闘いの幕開けである。











『あいつら一直線に南に向かってやがる。気をつけろよ!』

「あぁ、想定通りだ」


 レイキは兄に返答をし、前方を凝視すると、鬼気迫る表情で駆け抜けている狂人達。

 そのどれもが長年【血闘】を生き抜いてきた、一筋縄ではいかない熟練者ベテラン


「手筈通りいくぞ」

「おう!」


 レイキは一旦下がり、司令塔となる。

 背後にいた特攻隊が、狂人達とぶつかり合った。

 乱戦最初の戦いは真っ向からの突撃、意思のぶつかり合いにて勝った者とは。


「舐めるなよ、若造どもが!」

「がッ」


 先鋒を進んでいた男が一撃で倒され、数人を巻き込んで吹き飛ばされる。


「平穏に侵された根性なしの青二才が! 我が剣の錆にしてくれる!」


 熟練者の猛攻は止まらない。

 半年ぶりの闘争に打ち震える身体を存分に行使する。抱くのは怒り、平穏にどっぷり浸かった者達の粛清を始める。


「トラキアに生まれた以上、闘争は避けられぬのだ!」

「――それは違うよ」


 叛逆者達が倒れていく。屍の山を築き、狂人達は突き進む。

 トラキアの闘士として、その在り方は当たり前だ。

 だが、レイキの望む未来は違う。

 蹴落とし合うしかない国など、認められない。


「隠密隊、回復隊、頼む」


 首輪で連絡を入れる。

 その間にも、狂人達の進撃は続いていた。


「どけ! 総大将を殺してくれるわ!」


 奥にいるであろうレイキの首を求めて、立ちはだかる叛逆者達を薙ぎ倒す。

 今まで通り剣を横に一閃しようと試み――背中に痛みが走る。


「ッ、なんだ!」


 振り向いても、下手人らしき者はいなかった。

 味方の攻撃が当たった? いや、熟練の戦士はそんなヘマはしない。

 目を凝らして、人の合間を縫うように高速で翻弄する黒衣に気づく。


「隠密の類か、卑怯者どもが……!」

「頭固いのはアンタだよ!」


 叛逆者の剣士が、憤怒に燃える狂人に斬りかかる。

 お世辞にも速いとはいえない剣。背後に意識を割きながらも、歩法の容量で躱そうとし――――剣士の後ろに隠れるように迫っていた女が、狂人の胴体に拳を

打ち込んだ。


「がはっ!」

「今やってるのは【血闘】じゃない、戦争なんだよ!」

「小癪な!」

 

 これが、熟練の戦士の弊害だ。

 彼らは【血闘】の専門家ゆえ、多数から攻められることを知らない。【血闘】では一人の攻撃を防げば充分だった。だが、戦争では四方八方に気を遣わねばならず、対峙する敵は一人ではない。


「舐めるなよ!!」


 剣士と女の連携を剣で切り裂こうとして、狂人は違和感に気づく。

 相対する剣士、その相貌には見覚えがあった。


「お前は、我が最初に倒したはずだ!?」


 その剣士は、最初に一撃を喰らい、仲間もろとも吹き飛ばされたはずだ。絶命には至らずとも、致命傷は与えた。普通ならば復帰できない。

 

「言ったろ? これは戦争なんだって」

「まさか、治癒師ヒーラーか!」


 重傷を負えば、回復隊まで行って治してもらう。

 その間の穴は別の人が埋める。人が多いからこそ出来る基本戦術で、【血闘】ではあり得ない光景。

 狂人は、いくら経験を積んでようと、多数との闘い方は素人。協力するという概念を知らない者に、対応出来るはずがなかった。


「がぁぁぁぁ!」


 剣士と女、闇に潜む隠密が、狂人の一人を倒した。三人は勝利を噛み締めるのも束の間、別の戦いの援護に向かう。


「仲間と助け合い、道を切り拓く。これがトラキアの未来だ」


 段々と押し返してきた戦線に、レイキはホッと息を吐いた。

 六日間の急拵えの訓練、それは徹底的な連携と役割分担。相手が一対一の専門家なら、わざわざ相手の土俵で闘う必要はない。

 

『南西戦線、押し返してます!』

『南東地区、大丈夫です!』

「みんな連携に慣れてきた。……俺も戦線に出る、指揮は頼んだ」


 あらかじめ任命していた指揮官に代わり、レイキは戦場へと飛び立った。

 総大将だからといって隠れるのは愚策だ。アレスを倒さない限り、勝利は訪れないのだから。

 比較的敵の少ない屋根に飛び乗り、駆け足で北へ駆ける。


「拮抗してるな」


 眼下を見れば、何とか渡り合っている同志達の姿。あのレベルの狂人なら、人海戦術が通じる。

 問題は、徒党を組んでもどうにもならない相手。レイキが認識する限り、二人と一柱。闘神アレス、弓兵フォボス、そして……


「会いたかったですよ、レイキ」

「ッ!」


 概算五十個の炎槍が降り注ぐ。

 激しい熱量を有したそれらを、躱し、屋根の瓦をぶつけ相殺して防ぐ。

 数多の炎槍を操っているのに、息切れ一つ起こさない男を睨みつけた。


「派手にやってくれたな――デイモス」


 デイモスは反対側の屋根に飛び乗った。

 展開されている炎槍は、全てレイキに照準を合わせている。


「半年前、貴方が乱入してから、全てが狂った」


 デイモスは、ポツリと心の内を語り始めた。

 会話というよりは独白に近いそれを、レイキは黙って聞いている。


「すぐに死ぬと思っていました。身の丈に合わぬ愚者、何も見えていない夢見がちの子供」

「……」

「しかし、貴方はイコルを倒し、アレス様を唸らせ、プテロンを救った」


 デイモスは大きく手を広げる。

 眼下で行われる交戦を、少年に見せつけるように、咎人の罪を告発するように。


「そして、兵を率い叛逆した。策を教え、人を導き、歴史を変えんとしている――あぁ、許せない」

「俺も、お前とは分かり合えないと思ってたよ」


 レイキは双剣を構える。

 デイモスはこちら側に与するとは思わなかった。

 アガロスを嬲り、嗤っていた異常者とは、何があっても合わないと確信していた。


「異能、解放」


 デイモスは獣の本能を解放する。

 爛々と煌めく狼の犬歯が狙う先は、レイキの首のみ。


「あの日の続きといきましょう」


 ここに、レイキとデイモスの火蓋は切られた。











 

 




 


 


 

 

 

 





 

 



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