さくら

伏見京太郎

さくら


「さくら」

母が私の名前を呼ぶ。



私は思わず目を横にやる。


ベッドサイドに涙目の母と医師がいる。


「手術、成功したよ」

「本当に...本当に...!?」


私は何度も繰り返し医師に問いただす。



「成功率は非常に低かったけども、さくらちゃんが頑張ったからだよ」


「うん...でも...」

「でも......?」



窓から見えるのは、満開に咲いた桜。


私が入院した時から一緒に一年過ごした桜。


花を散らし、青葉をつけ、紅葉となり、雪に耐え、そしてまた咲いてくれた桜。



私は自分と名前が同じ「桜」へ


「君がいてくれたから」と告げた。



カーテンを揺らす春風と共に桜の花弁がさくらの病室を彩った。




さくら 了

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さくら 伏見京太郎 @kyotaro_fushimi

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