Mさんの話
「飲んでも飲んでも酔わないところを見込まれて◯◯っていうホストクラブで働かないかって誘われたんです。自分は会話とかもうまくないし、ホストクラブで仕事できるのかな…て不安があったんですけどホストクラブの代表から、【女性という生き物はただ話を聞いてほしい生き物なんだ。否定をせず黙って頷いてヤケ酒に付き合う、という営業の形でもいいんじゃないかと思う。】とアドバイスしていただいて、最初はつまらないとか言われたりもしましたが、次第に指名しているホストの好きなところ・嫌なところ、職場の愚痴を言う常連の方たちが増えていって、自分はヘルプの立場で頑張ってました。」
偏見で申し訳ないが、ホストという割には落ち着いた見た目だと感じた。あと、女性という生き物は〜のくだりで思わず激しく頷きたくなったのを抑えた。
「ある程度慣れできた頃にお店に出会った大学生の女の子がいたんですけど、最初は友人と来てたんですが後日一人で来てからはずっと一人で来るようになったんですよね。
大学生だしあまり無理しないでね、と言っていたのですがオーラスで遊びに来たり、シャンパン開けてくれたりお金の使い方がすごくて…一度聞いたら【お金の使い方を学びなさいって親に言われて今勉強中なの!】て言うんですよ。多分違うような…て思ったんですけど代表の言葉もあって否定できなかったんですよね。それで奨学金も仕送りも全部使っちゃったのか友達に紹介された風俗で働き出して、その日稼いだお金は全部使う、みたいな…。
最近は毎日メッセージが来るし、既読つけないと鬼電の嵐で…【私はこれだけお金を使ってるんだから私の気持ちに応えるべき】とか【あなたのために頑張ってるのに】、【無視するならいいよ。死ぬから。】とか言われ続けてて…あの時、きちんと否定してあげられたら今頃違ったんですかね…。」
と、ため息混じりに疲れたような顔で話す彼は最後に
「…なんか…もう、飛びたいです…」
というので、この一帯で1番高い、かつMさんの職場が入っているビルの屋上へと案内してあげると、不思議な顔をしていた彼がどこか覚悟を決めたような顔をした。
どうか、飛べますように。
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