Gさんの話
「こんにちは。初めまして。Gと申します。本日はよろしくお願いします。」
そう自己紹介してくれた男性は高身長に爽やかな笑顔を携え、腕には価値のありそうな時計を巻いた、有り体に言えば"勝ち組"と呼ばれる部類の人間だった。
「こういう相談をするのも初めてなので、何か失礼がありましたら申し訳ございません。
結婚して一年になる専業主婦の妻がいるのですが、やれ予約の取れないフレンチレストランに行きたいだの、ブランドのバッグが欲しいだの浪費癖が激しくて…。金額もどんどん高くなっていくので、自分で稼いで買えばいいじゃないか、と伝えるのですがその度にあなたと結婚した意味がないじゃない!とヒステリックにキレるか、一晩中泣いてこちらが折れるのを待つんですよ。
そんな妻に嫌気が差してしまって、既婚者であることを内緒にしたまま合コンに参加してしまって、そこで素敵な女性と出会ってしまったんです。その日に連絡先を交換してやりとりしてるのですが、彼女は自炊をしたり、仕事も真面目に取り組んでるみたいで、ダメとは思いつつもどんどん惹かれていってしまうんです。部屋も散らかったままご飯も作らずに友達と飲みに行く妻とは正反対で、彼女と一生を共にしたい気持ちが大きくなって…。
先日、ついに離婚したいと妻に告げたんです。そしたら泣きながら離婚したくない!捨てないで!といった数分後には、あんたが私に指輪を送らなければ、私だって殺されそうな目に遭うことはなかった!と訳のわからないことを叫び出して…。僕からしたら何のことか本当に分からないんですけど、そのことについて聞いても決して口を割らず、離婚の話も進まず、で今日に至ります。
やりとりをしている彼女ならきっと、ブランドの物なんて強請らないし、結婚後も仕事を続けてくれるんじゃないかなぁ、て思うんです。彼女とこれからの人生のために、早く離婚して妻のことを忘れてしまいたいです…。」
と、こちらの様子を伺うように話す様子からGさんとGさんの奥様は似たもの同士でお似合いの夫婦なのではないかなと思いつつ、ふとGさんの手元に視線を下げると離婚しか選択肢にないのか、左手の薬指に指輪はなかった。
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