Fさんの話
「私、中学三年生であと数日で、後期の高校受験なんですけど…この大事な時期に怒られそうな話なんですが、塾で一緒の男子と自習室で勉強したり、帰る時に少し話をする中でだんだんその男子のことを好きになってしまったんです。」
前は珍しかったのだが、今ではたまにある学生からの相談。お年玉やお小遣いなどがあるとは言え学生が相談料を捻出するのは難しいのでは、と話題にあがったこともあり学割も用意している中で来てくれた本日の相談者は近隣の学校の制服を着ていた。
「でも、今までずっと勉強、部活ばっかりで恋愛とかも興味なかった、というかする暇がなくて自分でもどうしていいか分からなくて..。そんな時に小学校、中学校と一緒に過ごしている唯一の親友に、その男子のこと相談したら恋のキューピッドになってくれる、て言うんですよね。親友は私なんかよりも可愛いし、付き合ってる彼氏もいるし協力してくれたら心強い!って感じでお願いしたんです。そしたら親友はメイク道具を使って私にメイクしてくれたり、洋服のアドバイスとかもしてくれたりして少しずつ勉強よりもオシャレとかの方が楽しくなってしまって...。
お正月は息抜きしなさい、てお母さんが言ってくれたから親友とショッピングモールに遊びに行ったら、そこで好きな男子と会ったんです。その時にいつもと違うね!て声かけてくれてさらに好きになっちゃって。親友もよかったね!絶対脈アリじゃん!て言ってくれて本当に幸せだったんですけど…。
前期の受験前に親友と好きな男子が仲良く歩いてるの見ちゃって、親友に聞いたらSNSで友達の友達にいたから繋がっちゃった!やりとりするうちに好きになっちゃった!ごめん!て報告されて困惑してる中で前期落ちちゃって…。
母も今まで以上に勉強しなさい、しか言わないし塾では好きだった男子と嫌でも顔を合わせなきゃいけない、親友は彼氏を振って私が好きだった男子と付き合いはじめたみたいで…もう逃げたいです…。」
と相談を受けてからしばらく経った後、Fさんの母親からの電話で、Fさんが後期受験当日に電車に飛び込んで亡くなったことを知った。最後にお礼を言った彼女の、どこかすっきりしたような顔が離れない。
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