第3話 Honeyはフランス語読みで、オネ。つまりお姉ちゃんを表す(支離滅裂な思考・発言)
射精して汚したパンツを洗って、男体化を解き、浴室で乾くのを待ってて思った……俺、魔法少女との初戦闘で、何も喋んなかった気がする。
日頃のコミュ障がこんなとこで仇になるとは……。
「お疲れ様、お賃金だよ」と黒妖精が俺に封筒を渡す。
俺は「あ、あざます」と両手で封筒を受け取り、中身を確認する。
うん、きっちり最低時給の後ろにゼロ一個足した額。端数も十倍で支払われてて、助かる〜。
「そういえばキミ、ボクにも魔法少女にも名乗らなかったよね」
「あー、確かに。エネミーネーム、なんにしよ? あ、わし以外の敵って、どういう名前の子が多いっすかね? なんか共通のモチーフとかありやす?」
「てんでバラバラだよ。好きな食べ物だったり、その時読んでた本や歌のフレーズから取ったり、いろいろさ」
好きな食べ物……唐揚げ、ラーメン、ハンバーグ、バター入りマッシュポテト……美男悪役っぽさゼロな食べ物しか浮かばん。
美男感出すとしたら、スイーツ関係とかお酒関係とか?
うーん、カヌレ、マドレーヌ、ブランデー、ラム酒、キルシュ……キルシュって何の酒だっけ? ちょっと検索を……チェリーか。
童貞のわしにぴったりやな。
てか、キルシュってキルシュ・ヴァッサーとかワルサーとか付くの、かっけぇな!
「キルシュ・ヴァサー、とかどうよ?」
「いいと思うよ、登録しとくね。で、キミの本来の名前は?」
「……言わなきゃだめっすか?」
「必須項目だし」
「……リリカ、旗見リリカでよろ。
あ、漢字の情報いる?
実際は、こんなド低音ボイスの、いろいろパッとしない奴なのに。
そういや、あんさんは? ずっと妖精呼びもあれっしょ?」
で、妖精が名乗った名前がピカソの本名級に長い上に訳ワカメで、最初のルルピエヌ……しか覚えれなかったから、ルルピって呼ぶわ。
多少乾いたパンツを洗濯機にぶちこみ、お米とか夕飯の支度をし、MommyとHoneyもといララア姉さんが仕事から帰ってくる。
俺はいつものように「おかえりんごーMy Honey♡」と抱きつき「やめい」とあしらわれるが……今日はいつになく拒否圧が強い。
Honeyにひっつきながら飯を食うなんて器用なことはできないのもあって、俺は大人しくHoneyから離れて夕飯を食う。
夕飯を食い終わって、新しいの出るたび滅べって思ってる録画された朝のドラマとか、
今季アニメに比べれば、見る優先順位が下になりがちな超長期放送もあってエピソード数がえげつないアニメの引き伸ばし回の録画とか、
つまんない、くだんないテレビ――金曜と言えば映画のテレビ放送だけど、今日は誰も見る気しないなんとか賞の発表だった――を見る家族を尻目に音ゲーに励む俺。
いつも以上の拒否圧の理由を聞かないのかって?
Honeyが俺にそういうこと話すと思えないし、話された所で俺に出来ることは大してないし、だったら喋る必要なくない?
……あ、邪念でラストノーツ、ミスった……!
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