第12話 情動
情動
♡♡ おにぃ
俺の唇は美鳥の唇で塞がれた。柔らかい。そして彼女が俺を強く抱きしめる。
ブラウスの上から、体が重なる上から柔らかさが伝わってきた。暖かいなあ。
彼女の温もりも伝わってくる。愛おしいよ。
彼女から良い香りが立ちあがる。なんと甘美な香りだ。思わず
♡♡ 美鳥ぃ
私の唇で
一孝さんの唇を塞いであげた。柔らかいの。
もっと感じたくてぎゅっと彼を引き寄せた。
そうしたら一孝さんも私を強く抱きしめてくれたのね。暖かい。
シャツの上から丁度、胸の辺りから彼の体温が伝わってくる。
すると心がホカホカと温められるのよ。
ああ、魂が揺さぶられるがわかるの。
そうしたら私から自分でもわかるくらい良い香りが薫り出す。
体が彼を誘おうとしている。彼が欲しいの。思わず、
♡♡ おにぃ
俺の耳に美鳥が囁いてきたように感じる。何事かと唇を離してしまった。
瞼を開くと目の前には薄く開かれた瞼が見える。その奥に涙に濡れ蕩けた瞳が見えた。金色に見えるヘイゼルの瞳が俺を見つめている。
俺の魂が震えたよ。すると唇が俺の眼に映る。紅く艶やかに濡れた美鳥の唇が薄く開いている、俺を誘っている。思わず、
♡♡ 美鳥ぃ
一孝さんの唇が離れちゃう。だメェ。もっとしたいと目を開ける。あまりにもスィートなキスで潤んだ視界の向こうに彼の目が見えた。見開いて潤んだブラウンの瞳が見えたの。
するとの目が近づいてくるの。いえ、違う、彼が私に唇を近づけてきてる。また、キスしてもらえると思って、私も唇を差し出した。すると一孝さんは私の上唇を啄みだす。ハムっハムっと小さく何度も啄んでくる。甘噛みしてくるの。私の唇が彼に食べられちゃう。
とうとう下唇までされて、私の唇の力が抜けてしまった。そうしたら力の抜けて薄く開いた唇へ柔らかいものが差しこまれる。思わず、
♡♡ おにぃ
美鳥の柔らかい唇を啄み、柔らかさを堪能してた。そうしていると唇から力が抜けて開いていく。俺はそこへ舌を差し込んでいった。美鳥の唇の奥を知りたいと、もっと君を知っていきたいと差し入れていく。感じるのは丸くツルツルした、君の歯、歯茎。それを
そうッとそうッと探っていく。するとホウッと顎が下がっていく。もっと君を感じてもいいのかい?
♡♡ 美鳥ぃ
一孝さんが唇の裏側に舌を差し入れてきた。上の歯と下の歯を探っている。でも不快じゃないんです。弄られてゾクソクって、なっちゃいました。フッと力が抜けて歯の間が開いてしまう。
そう、私が開いていく。そこへ彼の舌の先が入ってきたの。ようこそ、私の中にいらっしゃいました。入ってきた彼の舌を私は自分の舌を使って探る。チョンってついてみる。一瞬、引かれたけど、今度は私の舌をお返しとばかりに彼のがノックしてくるの。でも、息が苦しいなって思ったら一孝さんが舌を引いた。
えっ、もっと思って吐息を履いてしまう。切なくなるの。そうだ息しないと、そして新鮮な空気を吸っていく。そうか、息継ぎさせてくれているのね。優しい一孝さん。今度は私があなたと中に入っていく。言葉のない舌を使ったスローな睦み合い。
そのうちに一孝さんの舌が私の先をクルクルって探ってくるの。あぁ、
♡♡ おにぃ、
美鳥の舌の先をゆっくりと探って、絡めていく。慌てない。あくまでもスロー、スロー。いつもより、深く差し入れてみたけど、頭の奥が痺れている。なかなかいいな。
そうしていると、美鳥の舌の動きが激しくなっていく。それに合わせて彼女からの甘い香りが匂い立つ。俺は手を美鳥の首に回して引き寄せ、唇を強く押し付けて口の奥まで舌を差し入れて、弄り絡めていった。
すると、クッと彼女が震えた。ククッとまた、俺が抱きしめる中で美鳥の体が惹きつけでも起こしたように痙攣していく。彼女が俺を抱きしめる力が強くなる。
♡♡ 美鳥ぃ
一孝さんに私の奥を探られているの。心に触ってきてる。そこから私の中の彼への想いが掘り出されていくみたい。どんどんと甘い想いが湧き出していく。それが上へ上へと上がっていくの。だんだんと大きくなるのね。私の中がいっぱいになって パァーンって弾けちゃた。
眩い光が私の意識を吹き飛ばしてしまった。吹き飛ばされた私はチリヂリになってしまう。チリヂリになったものは、ふわふわと漂うの、そしてフワリフワリと降りていく。降りたものが集まり出して私になりました。こんなの知らない。初めての感じ。なんなの?
♡♡ お兄ぃ
美鳥の体が、一瞬、硬直した。慌てて彼女から唇を離した。どうかしたかと離れてみると、ドクンと鼓動が高まった。頬だけじゃなくて目元まで赤く染まっているんだよ。さらに、目を潤ませて縋るように見てくるんだぞ。薄く開いた唇は何を囁くのか。
今度は、腰からゾクゾクっとしたものが上がってくるんだ。頭の奥が熱り勃って自分のものが激っているのがわかってしまう。お前が欲しいって思ってしまった。お前はどうなんだい、
♡♡ 美鳥ぃ
甘美な世界でした。いきなり夢にでも入ったようでした。目を開けると、彼が目の前にいるのがうっすらとわかっていくの。一孝さんの目が揺らぐ。彼は目元まで赤くなって私を見てくるの。
その目が語るの、私を欲しいって。私も貴方が欲しいって言う気持ちが溢れてくる。そして私の中の疼きが唇を動かした。
『私を、もらってえ、貴方のものにしてぇ』
喘ぐように唇が
囁くの。貴方に私をあげる。だから、もっと、私を甘美な世界に誘ってえ。
♡♡ 一孝さぁん
美鳥から、激しいリビドーを感じる。俺は、それに応えるべく、彼女の頬に手のひらを当てて指先で目元をさする。
『クゥン、クゥン」
と、美鳥の唇から吐息が漏れでいく。彼女の目の潤みがまし、雫となっていった。なんて可愛い、なんて綺麗なんだ、なんて愛しいんだ。
だから、俺は、指先を下げて唇を………
左右に広げた。美鳥は吐息を吐こうと息を出していたからなのか、
ブフュッ
唇が震えて、思いもしなかった音がした。美鳥は潤んでいた瞳を露わにするように見開き、俺を見てくる。そして鳩が豆鉄砲をくらったように、瞼をパチパチさせている。
「な、なん、なんでぇ、とっ、とっ、突然、何するんですかぁ。折角、気持ちが高まって決心できたんですよぉ。私の全てをあげようって。おにぃに全部貰ってもらおうって」
驚かして、ごめん。美鳥の気持ちは気づいていていたよ。
「私を揶揄ったんですかぁ。他に好きな人ができて、どうでもいい私を揶揄ったんですか? 私の体を貪って、私の心を弄んでいたのですか?」
彼女の頬が色を失い蝋人形のように生気を感じなくなっていった。
美鳥の目から雫がひとつ流れた。
しまった。失敗した。ごめんな。揶揄うなんて滅相もない。俺は全神経でお前を感じているんだよ。お前の魂に触れたいって。
美鳥の目に涙が溜まっていくのがわかる。俺はそれが流れ落ちないように指先で目元を押さえる。
「美鳥」
俺を見つめる美鳥の瞳が揺れる。
美鳥の涙の雫が指先では止められずに、こぼれて頬を伝っていく。
仕方がない。誤解を解いてやらないといけない、恥も外聞も気になんかしてきられない。
俺は美鳥の手を取ると、スラックスのファスナーの上に載せた。
「?」
美鳥は生気を失った瞳をさらすように見開き、俺を見てくる。鳩が豆鉄砲をくらったように、瞼をパチパチさせている。
「!」
そして自分の手をスラックス生地ごと押し上げているものが何か判ったようで、美鳥の頬が赤く一気に染め上がった。
「俺だって美鳥が欲しいよ。君を俺のものにしたい。手の下のものが激っているのが何だか判るだろ。お前とひとつになりたいんだ」
頭の中で渦巻いていたリビドーが口から吐き出されていく。
「なら、なんで? 私を貰ってくれないの?」
美鳥は探るように聞いてくる。
そこで俺が今までずっと考えていたことが唇から紡がれていく。
「美鳥はものじゃない。ひとりの女の子だ。可愛い彼女なんだ。大切な人なんだよ」
「お兄ぃ」
「だから、美鳥との初めては……」
「初めては?」
「ゴージャスなホテルのベットの上でって、決めているんだよ。翌朝、ふたりブランケットにくるまってモーニングコーヒーを飲むんだって」
「お兄ぃ」
「だあぁーーー! 言っちゃった。兎に角だなあ! はじめてが外で青姦なんて、やだ。そんなマニアックで恥ずかしいのは嫌なんだ。判るだろ。わかってくれよ。美鳥」
美鳥も色々と理解してくれたのか、顔を手で隠して耳まで赤くして、うなづいている。
俺も大概だけど美鳥さんも耳年増なんだね。
そのうち、美鳥が染めたままの顔をあげて、俺を見つめてきた。
「だけどね。おにぃ。いえ、一孝さん」
お、名前呼び。真剣な話だろうか。
「私に自信がないのです。一孝さんには、好きだって付き合ってくれって言ってもらえた。ステディになれたって思ってたのですね」
美鳥は、言いづらそうに訥々と話してくれている。
「美鳥、君は俺の彼女だろ?」
「違うんです! 違わないけど違うんです」
いきなり、美鳥は語彙を荒げた。
「美鳥…」
「さっきみたいに、他の子に言い寄られている一孝さんを一度は誤解してしまったのだけど、すぐに違うって、貴方を信じたつもりになってた。一孝さんはここに来てくれる。話してくれるって」
すぐに落ち着いて語ってくれた、
やっぱり、美鳥は俺のことを勘違いしていたんだ。部活が終わって部長の話が終わるやいなや、追いかけてよかったよ。
「それでも、ほんの少しだけですよ。貴方が来ない。捨てられたって思ってしまったんですよ」
美鳥。俺はここにいるじゃないか。誰が誰を捨てるって、どいつが言ってるんだ、べらぼうめえ。
「私の想いが足りなかったのかなぁ。心は繋がっているって自信持てなかったのですよ」
大丈夫だよ。俺たちは両想いなんだよ。心が繋がってお互いを欲しいって言ってるじゃないか。
「だからね…」
いきなり、美鳥は制服の半袖ブラウスのタイを緩めて取り去り、ボタンを外していく。
「みっ、みっ、美鳥。何? いきなり、ボタンを外して…」
そう、美鳥は自分のブラウスを脱いでいく。次第に見えていく胸元の真っ白い肌。キャミソールの前をはだき、見えてくるブラのフリル、そしてレースと刺繍。カップの間のリボンまで露わになっていく。
上乳は丸く、谷間が深い。襟を開いて心を露わにしていくように見えた。
「一孝さん。お願い。心がふたり結ばれているという証をください」
美鳥が縋り付くように、話してくる。
「指輪をくださいなんて言わない。心があるっていう、こ、こ、に」
そこを見せつけるように胸を差し出してきたんだ。
「キスを、してください。マーキングしてください。それだけで、私は自信が持てます」
美鳥は、探るように縋るように見てくる。でも瞳は俺から動かない。自分が愛した男を信じてくれている。
俺は、頭を下げて胸元に潜り込むようにして、唇を真っ白な肌に近づけていく。厳かに行われる儀式のように、そして唇をつけた。口を窄み息を吸う。
スゥ
周りから金木犀の甘い香りを感じる。それまで完全に意識から外れていたんだ。それとも俺と美鳥のデュエットを聞いていてくれたのかな。
そんな気配を感じながら、俺は顔を離し、美鳥の肌に跡が残っているのを探る。そして見つけた。赤く跡が残っている。
香りが強くなった。クライマックスなんだねと金木犀が拍手を鳴らしてくれているんだ。
そのまま、視線をあげていくと、
「一孝さん。これで私たちは繋がっていると自信を持てるわ」
美鳥は喜びに目を潤ませている。
「愛しています」
「俺も、愛してる」
香りが更に強くなった。何度も押し寄せてくる感じがする。。拍手喝采をしているみたいだ。まるでカーテーンコールのようだった。
それに絆されたわけじゃないけど、俺は美鳥の胸に再び唇をつける。美鳥は、俺の頭に手を回して抱きしめてくる。
「一孝さん」
美鳥が俺の耳元に唇を寄せて、囁いてきた。俺は胸から唇を離して美鳥の顔を仰ぎ見ると、唇を薄く開けたり閉じたりして、物欲しそうな彼女の顔が見えた。俺は、伸び上がって、美鳥の顔に近づけていく。
唇がもう少しで触れ合うというところで…
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