2.邂逅

 司たちが今日から通うことになるのは、宇都宮新設国立高等学校である。二年前に国によって新設されたばかりのこの学校は、現在唯一、国が設置し運営している高校だ。

 栃木県に首都機能が移転してから四年が経とうとしている。あれからこの街もかなり変わった。


 四月九日。今日はその高校の入学式の日だ。他の多くの学校でも入学式が行われる。春の日差しが暖かさが心地よく、かつてならばその温もりをもっと素直に感じられたかもしれない。


 「その手、どうしたの……!?」


 登校中、隣から驚きの感情が込められた声が聞こえた。それは明らかに司に向けられた言葉だった。

 芹奈の視線が司の手に向けられている。司も目線を下ろすと、手のひらから少量の血が流れているのを見つけた。


 「うわっ、なんだこれ……」


 自分でもいつ流したか分からない血に戸惑いを覚える。どうしてこうなったのか、自らが取った行動を思い返してみるが、答えは見つからない。どこかで無意識に手を擦ったのだろうか、と考えを巡らせていると、


 「ダメだよ、怪我したらすぐに手当てしなきゃ」


 と言いながら、芹奈はポケットから取り出した白いハンカチを司の手にそっと当てた。


 「わ、悪いな。まだ朝なのに、俺なんかに使わせて。それに、白のハンカチに血は洗っても落ちにくいんじゃないか?」


 「ううん。いいの。私がこうしたかったんだから。それに、いつも二つハンカチ持ち歩いてるから大丈夫!」


 「そう……か。でも、それじゃ申し訳ないから、今度新しいハンカチ買っておくよ。」


 「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらおっかな!」


 と笑顔を向け、更にどこからか取り出した絆創膏を手のひらに優しく貼ってくれた。


 彼女のこういうところには、いつも助けられる。近々空いた日にハンカチを買いに行こう。

 芹奈はお言葉に甘えると言うが、こちらがここまでしてもらっているから、当然のことなのだが。


 二人は学校に向けて再び歩き出した。

 少し歩くと桜の木が増えてきた。あちらこちらで桜が咲き誇り、今がまさに満開の時期を迎えていた。道路沿いに植えられた桜の木々が列をなし、桜並木が美しい景観を作り出している。

 綺麗だと、そう思った。単純な感想だが、そこには自分でも分からない感情が含まれている気がした。

 ずっと見ていたいとも思うが、時期的にもう少しでこの桜も見納めだろう。

 

 司の隣を歩く芹奈もまた、この光景に感動を覚えていたのか、感慨深く舞い落ちる桜に片手を胸のあたりで挙げて触れ、手のひらに落ちた花びらをじっと見つめていた。一体どのような表情をしているのか、窺おうとしたその時、


 「桜、きれいだね」


 と、芹奈は少し顔をあげてつぶやいた。その表情はどこか切なく、何かをかみしめているようにも見えた。


 「芹奈?」


 先ほどまでの明るかった姿はそこにはなく、普段は見せない幼馴染の表情に、司は少し心配して名前を呼んだ。

 反応は返ってこず、芹奈は未だに手のひらの桜を眺めている。もう一度名前を呼ぼうとしたその瞬間、


 「来年も、一緒に見れるといいね」


 と、どこか儚げな雰囲気を漂わせつつも、こちらを向いてにこやかに笑って語りかけてくる芹奈。


 「ああ、そうだな。見よう。一緒に。」


 そんな彼女に、こちらも少しの笑顔を浮かべて言葉を返す。


 それから二人はたわいのない会話を続けた。


 歩いていると、同じ制服を着た生徒が少しずつ増えてきた。これから通う宇都宮新設国立高等学校の生徒たちだろう。国立高校が新設されたのは一昨年で、去年からようやく生徒が通い始めたため、先輩にあたる生徒は今の二年生しかいない。

 入学式に登校するのは在校生代表と、一部の部活に所属する生徒だけだろう。よって、この時間に登校しているのはほとんどが一年生だ。


 そんな中、道行く生徒たちの間を縫うように、こちらに向かって走ってくる人影が見えた。その人影は瞬く間に司たちへと近づき、次の瞬間には司の横を風のごとく駆け抜けた。

 その青年は、司よりも少し年上に見え、背丈はほぼ同じくらいだった。僅かにしか見えなかった顔立ちは、端正で整い、美しい白髪が風になびいていた。その一瞬の光景に、司は思わず心を奪われた。


 「――さ。――かさ。司?」


 飛んでいた意識が芹奈の呼びかけで現実に引き戻された。どうやら無意識に立ち止まってしまっていたようだ。


 「どうしたの?」


 「あぁ、いや、なんでもない。」


 見惚れていたなどと口にすれば笑われるだろう。司は言葉を濁し、歩き出そうとした瞬間、突然後ろから肩に何かがぶつかった。

 振り向くと、それは同じ制服を着た少年だった。背丈は同じくらいで、とても理知的な顔立ちに眼鏡をかけているが、その眼光はとても鋭い。どこかで会ったことがあるような気が――。


 「チッ。道の真ん中で止まんじゃねよ。」


 青年は目が合うなり、鋭い視線を投げかけ、舌打ちと共に強い言葉を吐き捨てると、そのまま前を向いて歩き去った。


 「司、大丈夫?」

 「ああ。なんだよあいつ……」


 立ち止まっている方も悪いかもしれないが、あそこまで不機嫌な態度を取られるとは思わなかった。司は内心でそう思いながらも、気にせず歩こうとすると、


 「ねえ、ちょっと学校に行く前に一つ寄りたいところがあるんだけど」


 芹奈が司の進路を阻むようにぴょんっと前に出てきた。

 行きたいところ?どこだろう。司はそれに頷き、芹奈に連れられるように通学路から外れた。




 「こ、これは……」


 連れてこられた場所で目に入ったのは、息を呑むほどの絶景だった。街を見下ろせる少し小高い丘に植えられた一本の大きな桜の木。その木の幹は太く、根元から力強く伸びる枝は空を覆い尽くすほどに広がり、その全てに満開の花びらが咲き誇っていた。

 それから、桜の木の背後には壮大な街の風景が広がっていた。高層ビルが立ち並び、ガラス窓が陽光を反射してキラキラと輝いている。行き交う車や人々が小さく見えた。しかし、街の喧騒もここには届かない。静寂に包まれた空間に聳え立ったそれは、何百年も何千年も根を張り静かに佇んできた姿を想わせるほどの風格があった。


 司はその場に立ち止まり、息を呑んだ。その美しさに言葉を失ったのか、街の絶景に圧倒されたのか。きっとその両方だろう。淡く煌めく桜雲と広大な街の景色のコントラストが美しかった。今の司にはこの光景が眩しく、繊細に映り、心を掴んで離さなかった。

 芹奈も最初は似たような反応をしていたが、どこか切なさを感じる面持ちをしていた。

 「司、ずっと思い悩んでそうだったからさ。何のことかはだいたい想像がつくけどね――。これみて少しでも気持ちが晴れてくれたらって思って……。あ、もちろん私が見たかったからっていうのもあるんだけどね」


 「そう……か。ごめん、心配かけて」


 「ううん。司が謝ることじゃないよ」


 芹奈は司の行動や態度を心配してか、ここに連れてきてくれたらしい。

 確かに、最近は特にそういう素振そぶりを見せすぎていたかもしれない。

 これは本格的に芹奈に感謝しなければな。


 「なんていうか、その、ありがとう。こんなに綺麗な桜を見たのは初めてだ。」


 芹奈は一瞬顔を俯かせて、


 「うん。見れてよかった……。じゃあ、行こっ!」


 芹奈は一人つぶやくと、次には笑顔でこちらに向き直った。


 「ああ。そうだな」


 その満足気な芹奈に司は柔らかい笑顔で応えた。この光景を忘れることはないと、胸に刻んで。




 通学路に戻り、それから少し歩いた先にそれは見えた。


 「でっけえ……。って言うか、本当にこれ学校か?」


 通りを抜けた先に現れたのは、学校と呼ぶにはあまりにも異質な光景だった。

 それはまるで城、いや居城のようにそびえ立っていた。

 まず、校門からして圧倒的なスケールを誇り、学校というよりは巨大な商業施設、いや、それ以上に要塞に近い印象を受けた。


 正面から見えるその姿は、ネットで見た写真よりも実物の方がはるかに迫力があり、圧倒された。

 受験をネットで行うという聞いたことのない方法で受けた為、実際に来るのは初めてだ。改めて見ると、やはり学校には見えない。さらに、写真で見た時よりも確実に大きくなっており、外観の設備も増えているようだった。

 芹奈もきっと驚いているだろうと思ったが、


 「行こうよ!」


 と、そんなことはなかったかのように、まだ驚いている司に歩みを促すように言葉をかけてきた。


 「お、おう……」


 芹奈のあまりに淡々とした反応に少々面食らいつつも、司は校門へと足を踏み入れた。


 入学式は、アリーナサイズの講堂で厳かに行われた。この高校の全校生徒数は約ニ〇〇人、そのうち一年生が約一〇〇人だ。

 式は一年生のみで行われ、そこに普通の高校で見られる保護者の姿はない。また、在校生代表と校長挨拶に加えて、防衛大臣と高校敷地内に併設されている総合研究所の代表の挨拶も行われ、この高校の異色さを象徴していた。


 入学式の全項目が終了すると、一年生はAからCの三つの学級に分けられ、それぞれの教室に移動した。


 「一緒のクラスになれてよかったね!」


 笑顔で語りかけてきたのは芹奈だった。司と芹奈は共にA組に配属され、さらに席まで隣り合わせだった。司が一番左端の窓際の一番後ろで、芹奈がその隣だ。意図された席順ではないかと少し勘ぐりつつ、司は辺りを見渡す。


 今はこのクラスの担任の先生が来るのを待つ時間で、生徒たちはそれぞれ振り分けられた席に座り、周りの人と会話をしている。既にいくつかのグループが形成されているようだった。

 友達を作るのがあまり得意でない司は、芹奈と同じクラスになれたことに少しホッとした。

 ――んで、あいつとクラス一緒なのかよ……。

 目線を斜め前に向けた先に居たのは、今朝司の肩にぶつかってきた青年だった。

 気まずいだろこれ……。

 その青年をじっと見つめていると、視線に気づいたのか、こちらに振り返ってきたので、司は慌てて目を逸らした。


 それからしばらくすると、教室の前の方のドアを開けて、男性が現れた。

 暗めの紺色のシャツと黒ズボンを着用した男は教卓の前まで進み、こちらに少し会釈してから、黒板に文字を書き始めた。

 男はしばらくしてチョークを置くと、こちらに向き直して教卓に両手をついた。


 「私は、今日からこのA組の担任をさせていただく、黒野拓也くろのたくやと言います。分からないことがあったらなんでも聞いて。みんな、よろしく!」


 張らないながらも響くような声で自己紹介したこの男が、自分たちの担任らしい。

 顔は整っていて清潔感があり、黒い前髪を少しかきあげている。話す声は明るさを含みつつも落ち着きがある。黒板に書かれた大きくも繊細な字から、黒野の几帳面な性格が垣間見えた。


 「黒野先生っておいくつなんですか?」

 「先生、彼女いるんですか?」


  自己紹介後、次から次へとくる質問に対して、困り顔をしながら手を前に構えて生徒たちを落ち着かせた。


 「先月が誕生日で、三十二歳になりました。結婚はしてないし、彼女もいないんだ。」


 それを聞いた女子生徒たちからは驚きの声が上がり、どこか嬉しそうな雰囲気が漂った。

 確かに三十二歳には見えない。端正な顔立ちと落ち着いた大人の気配を漂わせている立ち姿からは家庭持ちの雰囲気を感じる。老けているのではなく、寧ろ若く見えつつも歳不相応の不気味なまでの大人らしさを感じて不思議な感覚に陥る。


 生徒たちが落ち着いたところで、黒野は話の方向を変えた。


 「えー。では、改めまして、ようこそ宇都宮新設国立高等学校へ。ここではみんなが十分に勉強し、研究できる設備やシステムが整っています。各々、目的があってここに来ていると思う。その目的の達成のために、我々教員もできる限りの力添えをするから、精一杯この高校での生活に励んでほしい。――って、校長と同じようなこと言っちゃったかな。」


 黒野はそう言って、あははと頭を指でかきながら、笑みを浮かべた。敬語から話し方をラフにしていくのが自然で上手だ。

 クラスの雰囲気から、既に黒野が生徒の心を掴んでいるのが感じられた。


 「では、まずそんな君たちがこれから三年間過ごすことになる校舎をみんなで見て回ろうと思う。校舎という表現がこの学校にふさわしいかは置いといて、今君たちが一番楽しみにしていることなんじゃないかな?」


 黒野の話を聞いて、クラスの雰囲気が明らかに活気づいた。


 「ここの学校はありえないほど広いからね。この時間は全学級で校舎を回ることになってるんだよ。」


 新設されたばかりのこの学校は、一高校には相応しくないほどの敷地面積を誇っている。生徒が授業を受ける校舎、講堂、大型テラス、大型商業施設、総合研究施設など、多くの施設があり今でも敷地を増やして工事が進められ、拡張し続けている。

 最近では大学を作るという話まで出ているほどだ。全く今のご時世にどこから財源が出ているのか……

 その多くが、生徒が自由に利用できるものばかりで、魅力溢れる空間に、生徒は興味津々だ。

 司も例に漏れず楽しみにしていたことではあるが、彼の関心は他の生徒が向けているものとは少し違っていた。


 「はい!じゃあ移動するから、みんな席を立って――」


 黒野の指示でみんなが席を立とうとしたその時だった。


 いつの間にか天井から飛び出していた赤色ランプが回りだし、備え付けられていた最新式のスピーカーから不安を煽るようなサイレンの音が轟轟と鳴り始めた。先ほどまで明るかった生徒たちに緊張が走る。


 ――特異災害警報だ。


 特異災害警報には二種類ある。一つは日本のどこかで陸海空問わず、神人またはそれに準ずるものが出現した際に発せられる警報で、街に設置されたスピーカーや携帯端末などからその情報が伝えられる。その音は少し控えめでアナウンスと共にゆっくりと出現地点や状況等が流れる。


 そしてもう一つが、初期神人出現ポイントから半径十キロの範囲に鳴り響く、特別な警告音だ。その音は大きく、不安を感じさせる音色で、緊急性が高いことを知らせる。この音を聴いて平常心でいられる人など、この日本にはほとんどいない。そして、今流れているのは――後者だ。


 『特異災害警報。特異災害警報。宇都宮上空にて、神人の出現が複数確認されました。周辺の住民は直ちに地下シェルターに避難してください。繰り返します――』


 女性の声で街中に響くのは日常とはかけ離れた異常事態の知らせ。このアナウンスを聞いて、案の定教室はどよめきと動揺に包まれた。

 司のほかには芹奈、眼鏡の青年、あとは数人が焦りを見せていない。それでもクラスメイトの多くが動揺で不安を隠せないでいた。ざわめきが広がり、少しずつその集団は理性を失っていく――その時、パチンと大きな音が鳴った。音を鳴らしたのは黒野だった。


 「みんな、落ち着いて」


 黒野の手をたたく音と、声掛けで教室は一気に静寂に包まれた。


 「焦っても何にもならない。それなら、今すべきことは落ち着いて状況整理、そしてそれに基づいて行動することじゃないかな?君たちならできるはずだよ」


 黒野の顔は真剣そのものだ。


 「はい、もう大丈夫かな。じゃあ今から言ったことを守ってシェルターに避難しよう。一、押さない。二、走らない。三、しゃべらない。四、戻らない。避難訓練の常識、小中学校でやってきたことを今から実践するんだ。火事でも地震でもないけど、もうこういうこともあるって分かってるはずだよね。シェルターはさっき入学式をした講堂の地下にある。既に講堂では、他の教員たちが避難の準備をしてるころだろう。みんなには出席番号が割り振られているから、それを基に君たちで講堂まで行くんだ」


 しばらくして落ち着きを取り戻した集団に、黒野は安心させるかのように笑みを浮かべて指示を出した。


 「今は席が出席番号の順になってるから、右の列から順に廊下に並んで、みんなが並んだらシェルターまで行きなさい。君は、確か峯塚さんだったね。出席番号が一番最初の君がみんなをまとめるんだ。いいね?」


 「は、はい!」


 黒野は淡々とした口調で避難行動のすべてを生徒に託した。一連の動作、指示には一切の迷いがない。リーダーシップに富んでいるのが分かる。避難を生徒主導にさせたのは、こういう時でも自主性を高めるためだろうか。

 その冷静さと確かな判断力が、動揺していた生徒たちに安心感をもたらした。


 指示に従って一列ずつ、ぞろぞろと廊下に人が流れていく。


 「じゃあ、先に並んでるね」

 「あぁ」


 席を立った芹奈が廊下に並ぶ前に、司に対して笑顔とも冷静とも取れないような顔で言葉をかけてきた。司はそれに軽く頷き、教室を後にする芹奈を見送る。すぐに自分も教室を出るのに、まるで今生の別れになるかもしれないようなやりとりだ。


 最後に司の列が前から順番に席を立ち、一人ずつ廊下に並んでいく。そして、最後に司の番がやってきた。


 「神代君……だね。君で最後だ」


 峯塚という女子生徒の時もそうだが、この黒野という男は既にA組の生徒の名前をすべて覚えていそうだ。避難指示からこういった細かな配慮まで、先生として満点といえるだろう。

 司は頷き、席を立とうとした――その瞬間、司のすぐ左側から轟音と吹き飛ばされそうなほどの風圧と共に、何かの欠片が大量に飛んできた。あまりの風の勢いに目を開けられず、司は瞬時に腕で身を守る。


 「くっ……!」


 その何かがいくつか腕に刺さったのか、痛みがほとばしった。

 後ろでは物が飛び散るような轟音と悲鳴が上がっている。


 豪風がやんで、少しずつ目を開けると、まず目に入ったのは、厚いブレザーを貫通して腕にいくつも突き刺さった透明な窓ガラスの破片だった。刺さったところからは大量に血が流れ、床にぽたぽたと落ち続けている。

 そして、次に目に入ったのは、ばらばらに崩れて窓枠すらも跡形を残していない壁だった。さっきまで横にあったはずの壁がほとんどなくなり、大きな穴のようになっていた。


 「神代君!大丈夫か!」


 黒野の声だろうか。かすかに聞こえるが、轟音のせいで耳鳴りがひどく、まともに音を拾えない。


 「くっ……一体、何が――」


 何が起こったのか。痛みと衝撃で頭が混乱する中、状況を把握しようと深呼吸しようとしたその時――


 「……チッ。なんだよ、だーれも死んでねえじゃねえか」


 突然降り注いだ声に司は驚愕した。その声の主がこの惨状を引き起こした張本人だと瞬時に理解し、顔を上げる。


 司の視界に広がったのは異質で鮮烈な光景。

 そこにいたのは、目を見張るほどの巨大な剣を手に持ち、宙に浮かぶ男だった。

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