短編「最期ノ泣後」(完)

不可世

一話完結

世界の惨劇に

己の真価を問う事がある

生きるべき人間は

運命によって選択されていると

生き残った私は心なく思った


この混在する

数多の人、人種、人類、

全てに論理的帰結を呈すれば

人は死ぬ生き物

死を軽んじた方が

悲しまなくて済む

そう、言えるはずだ


死に対する

脆弱性など

持つだけ

哀れだ


死ぬから死ぬ

それ以上の理解を示すなど

ただの現実を見てない証拠だ


だが多くの人が別れを惜しむ

その道理が

感情的理解を超え

涙という形で流れる

なぜだ


死とは単に

別れた

会えなくなった

それだけのはずだ


なぜ惜しい

なぜ苦しい


理解に苦しむ


私は、人の死など

どうとも思っていない

なのに泣いている


なぜだ


私が生きる中で

泣いてまで死者に何を啓示してるのだ


分からない


この涙が

この虚しさが


人を失うということなのか


いいや違う

私は気づいた


人が恐れてるのは、自分の死だ

人が死ぬのを見たとき、

自分も死ぬかもしれないと

そう、直感するから


怖くて、泣くんだ

きっとそうだ


そうなんだ。


なのに、身を犠牲にして

母は私を助けてくれた


なぜ


なんで


どういう事なの

ねぇお母さん、どうして助けてくれたの


分からないよ

涙が止まらないよ


なんで、なんで

死んでまで、私なんかを


そこまでして私に何を見せたいの


分からないよ

分からないよ...


「なぁライカ、お母さんはね、お前に生きてて欲しかったんだ、

 お父さんも、同じでライカに生きててほしい。

 人が泣くのは、死んだからじゃない、生きてて欲しかったからなんだ

 だからね、最期は泣いて泣いて思いを伝えようとしてるんだ、それが涙なんだ、

 伝えきれなかった思いだったんだよ」


そんなのって

そんなのって。。。

おかあぁさああああん。おかあ、さん、、。お母さん。。


”大丈夫よライカ”


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