ヴェール8 交差点2

 あれからあのオーラについて何の情報も得られてない。

 MaWの被害とかも聞かないし、この静かさが不気味な数日を過ごしていた。


 しばらく経って真凛にちょっと来いと言われて行ってみると

「じゃーん!」

 美咲が館にいた。ここにいるはずなんてと思って、

「どうしてここに?! 病院からでて大丈夫なの?」

「驚いた? こうやって外出できるようになった理由が剛のおかげだって聞いたからここまで来ちゃった」

「俺のおかげ? 何にもしてないとおもうけど」

 身に覚えがないだけに考えていると

「お前が回収したプログラムのカスさね」

 真凛が教えてくれた。

 あのカスの中に対象を気付かないようにするコードが残っていたようで、解析・修復ののちネックレス状のデバイスとして完成させたとのこと。

 美咲の胸元には可愛らしいネックレスが。

「そのデザイン、似合ってるよ」

「でしょ? 可愛いし気に入ってるの」

 美咲は嬉しそうだ。可愛いネックレスもそうだが外出出来たことがご機嫌な理由なのだろう。

「これで剛さんとお出かけできるわ!」

「まだだ」

 真凛が釘を刺す。

「まずは効果があるのは確認できたが、作ったばかりで持続時間やらまだ調べることが山積みだよ」

「オババの意地悪!」

 美咲が膨れっ面をしながら言っているがその表情が可愛らしいので笑ってしまう。真凛のことをオババと呼ぶとか。

「こんなとこまで出るのは駄目だが、病院周辺を散歩するくらいはいいさ。しばらく我慢しな」

「はーい」

 初めて二人が話している所を見たが、初対面でもなさそうだし、気軽に話せる間柄のようだ。

「ほれ、今日はもう帰んな。オーラの件はこれで良くてもお前は体力がなさすぎなんだよ。今度は身体を鍛えな」

 部屋の奥へ引っ込む真凛にべーと下をだしながら美咲は俺に向かって

「もうすぐしたらお出かけだからね! 約束ー」

「ああ、約束だ」



「あれから動作確認やら不具合がないか見てたけど大丈夫そうだ。と、言うわけで、外出の許可をだそう!」

 早乙女院長は美咲の方を向いて話した。

「外にでていいの!?やったー!」

 よほど嬉しかったのだろう。美咲はは大はしゃぎだ。

「ただし、街の中だけだ。また暗くなるまでには帰ってくること」

「はーい」

 なんか過保護すぎた条件な感じだが色々と心配なんだろう。

 当の本人ははしゃぎすぎてあまり耳に入ってないようだ。院長は少しあきれながら、

「もう一つ、街中への外出は一人では駄目だ。蒼炎くんと一緒に外出すること。わかった?」

 え、毎回俺の付き添いってこと? ちょっ、と言いかけたが

「剛さんと出れるの?やった!」

 手をぶんぶん振って喜ぶ美咲を見て、断りにくくなった。これは仕方がないか。外の話を楽しそうにしたのは俺だし。

「だったら来週までに何処か行きたい所を決めておいてくれ」

「蒼炎くん、そこはエスコートしないのか?」

 早乙女院長、あなた。

「えーと、その辺りは美咲さんに今までいろんな所を喋っていたわけです。まずはその中から気になる所に連れて行ってあげようと思っえいる次第でして」

 院長は何かいいたげだったが、美咲はそれを聞いて急に考え出して

「じゃあ、Kモールに行きたい。服屋さんとかゲームセンターとか行ったり、美味しいものとか食べてみたい」

「わかった。そうしよう」


「では、よろしくな」

 院長は手をふりながら病室を出て行った。

「じゃあ、来週ここに来るから一緒に行こう」

「うん!」

 美咲は笑顔で返事をした。

 さて、これから大変だな。色々と調べておかねば…

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