四 姑獲鳥と蜘蛛女

 俺はあれから週に数回呼び出されては『訓練』と言う名の『ExEM《エグゼム》退治』をやっている。

 とは言え、前の鬼の王のようなボスキャラ的なExEMはそうそう現れるものではないらしく、よく現れる動物型のカラスやヘビといったExEMを主に相手をしている。

 動物などは知能が低く、感情が単純なため低級のExEMのエサとして狙われやすい。

 結果、街には出没しやすく、その被害はちょっとした人の体調不良程度のものではあるが、事が大きくなる前に倒しておくのもSERClの仕事となるそうだ。

「これくらいなら危なくなくてお前の訓練にピッタリじゃないか」

 真凜に上手く言いくるめられてやるハメになった。

 最初はこっちはタダで教えてやってるんだからとタダ働きだったが、俺が地味にゴネ倒したら数に応じてバイト代を出してもらえるようになった。

 そんな訳でちょいちょい呼ばれては小遣い稼ぎをしている。今回はゴミ捨て場を荒らすカラスの居た場所を通ると急に体調不良になるものが出る、と言うことで俺が調べることに。普通なら『ちょっと気味が悪くて通ると気分が悪くなる』といった怪談話みたいになるところだけど、SERClとして考えればそれは『ExEMによる被害ではないか?』となる。

「だけど、依頼主が役所からとはねえ」

 SERClって秘密結社みたいなものかと思っていてあまり公にしてはいけないと思っていたらこの組織、官民合同でやってる活動で市役所に行くと俺のバイザーを見て

「お仕事お疲れ様です」

 なんて言われてしまってとても困った。こういう活動には国とか権力とかと協力関係を築いておかないと後で面倒だから大切らしい。

「なんかテレビでやってたヒーローモノとは違うのがスッキルしないなあ」

 とボヤきながらバイザーの指定する場所に着いたら、見つけた。


 鳥ような化け物、か。

 俺の場合はSERCl特製バイザーなしでも見える、とはいかなかった。毎回ではないのだ。色々と俺なりに考えてみてはいるのだが発動条件がはっきりしない。危機的状況だとか、ExEMに攻撃されたとかそんな単純なことではないようだ。

 それはさておき、『深淵の闇の領域アビス領域』に入るとAR世界が徐々に書き換えられておかしな空間になっていくのがバイザーで見えてようが見えてなかろうが感じるようになる。そしてちょっとずつだが身体から体力というか力『POS《魂の力》』を抜かれている感覚がある。

 今回のターゲットをバイザーは『姑獲鳥ハーピー』と分別した。その化け物は俺と近い大きさの身体に黒いモヤ『アビス粒子』を放出している。動物タイプのExEMにしては大型だ。

「だいぶPOSを吸い取って大きくなってるな。これは早急に片付けるに限る」

 これだけの大きさになると周囲への影響も大きいのでここで倒さないと人もただではすまなくなる。でも、それは俺にとっても危険と言うことだ。やっぱり面倒だなあ、といった憂鬱な気持ちになりつつスティックを出して構えた。

「AuV《アグメンテッド・ヴェール》起動」

 このプログラムを起動すると俺の周りをカーテンが覆い、戦闘用スーツのアバターに変わる。スーツと言っても色んなコードや術式が刻まれた全身タイツのような姿に短めのライダースジャケットのコーディネートがデフォルトになっている。これらはメンバー毎にカスタマイズが可能で、俺は色だけ青にしてもらった。翔夜などは全身赤に細々と飾りなどをつけている。どうデザインしようと性能は変わらないんだったら、せめて気分がアガるデザインにさせろということらしい。

 ExEMはネットワークの悪意を利用して質量のある存在になり、現実世界に干渉できるものの普通の人では見えないし、干渉できない。真凜はネットワークのどこかに本体がいるらしいとか難しいことを言っていたが理解はできなかった。

 そんなふざけたExEMを退治するために開発されたのがこの『アグメンテッド・ヴェールAuV』システム。このプログラムを起動すると街全体に散布されているナノ粒子が身体に集まりスーツの形になる。これを着用することでアビス粒子でPOSを奪われることなく活動が可能になり、ExEMといった霊的脅威から身を守ることができるようになるのだ。だからこのスーツはプログラムでありながら霊的なものと戦えるので『拡張霊装』とも呼ばれている。

「始めようか」

 俺は『銃』を姑獲鳥に向けて発砲した。俺が持つクリスタル製のスティック、これには中にコンピュータの基盤のような模様が中に刻み込まれていて、AuV起動に使うデバイスからコードが流れるようになっている。それに俺のPOSを触媒というかエネルギーとして様々な武器に変換して戦う。こいつを使うことでSERClメンバーはExEMに対して物理的干渉が可能となるのだ。

 今回は飛行系を相手にするので本来の『剣』ではどうやっても届かないので『銃』を使ってみた。まだどの武装が使いやすいのか慣れていないというのもあるし、AuVでも空は飛ぶことはできないから。

 それにしてもこれらの装備とソフトウェア、見た目よりお金がかかってそうだけど、どっからそのお金が湧いてくるのだろう…。SERClって退魔師みたいな集団だと聞いたから全国、いや世界規模だと思っていたらこの神無市だけだって言うし。

 そしてこのExEMもなぜかここだけで出現している…。ネットでアングラなところも含めて調べてみたけれど本当にそうらしい。結構な人を巻き込んだ事件も出ているようなのにそれほど大事にはなっていない。全てこの小さな街で完結している。

 むしろこの神無市だけに起こるように意図的に仕向けられている、とさえ思うほどだ。

「まさかね…」

 そんな事を考える余裕があるなら目の前のExEMを倒そう。射撃に関しては俺は当然素人なのだがAIによって相手の攻撃・回避などを予測してくれるので俺はその予測ポイントを狙って打てば…

「当たった」

 姑獲鳥の羽の部分を銃で何発も打ち込んだので俺の前に落ちてきた。ハンドガンを選んだというのもあるが銃では仕留められないんだよなあ。

『今だ』

 俺は銃を剣に切り替え、地面に落ちた姑獲鳥に詰め寄る。飛べない姑獲鳥はただの人、と剣でとどめをさそうとすると

「ピーーーー!」

 バイザーが警告音を発し、回避ルートが画面に出る。『なんだ?』と思ったら姑獲鳥が翼を羽ばたかせ、風の刃を発生させて俺に攻撃をしてきたのだ。

「いっっ!」

 回避ルート通りに躱すことができず攻撃を受けてしまった。実はAuVのスーツはExEMの攻撃で破れたりはしないから生身は怪我をする事はないが、痛みや衝撃吸収機能はない。だからAuVの後、やられたところを見ると青あざが残っているのはしょっちゅうだ。ここは改善して欲しいよな。

『昔、風の刃が怪我をさせるカマイタチ現象とかあったけど、こういうのを言うんだろうか』

 痛みの中で妙に冷静なことを考えながら、また同じ攻撃をさせないためにこちらも攻撃体制に入る。

「攻撃ルートを出して」

 俺はバイザーに出てきたポイント位置に攻撃を当てにいく。

「ヒヒヒヒ!」

 腹の立つような避け方で俺の振り下ろした剣をひらりと躱す。地上の姑獲鳥なら余裕じゃないのか? 本来、AIから出される攻撃ポイントの予測は俺の動きも考慮されてルートを出してきている。それで当たらないとなると…

「俺がポンコツということか」

 このスーツを着ることでスピードやパワー、いわゆる人間のステータスは何一つ上がったりはしない。どこぞの戦隊もののようなパワードスーツではないのだ。あくまでその人の能力に依存する。だから元の人間の能力が運動音痴だったら最悪なのだ。

 そんな俺のAIにも予測出来ない無能ぶり。自分でこの事実を認めるのはなかなか悲しいものがあるが現実から目を逸らす訳にはいかないし。

 そしてチャンスと見たのか姑獲鳥は俺に向かって飛びかかってくる。流石に人間大の大きさの者に飛びかかられて一瞬たじろぐ俺に姑獲鳥は鋭い足の爪で攻撃してきた。

「おっと」

 予測うんぬんなんて無視で無理矢理剣で応戦する。

『オレノナワバリダ!キエロ!』

『ハラガヘッタ!』

『ニンゲンガジャマダ!』

 接触によって姑獲鳥だった元のカラスの思考が俺の意識の中に流れ込んできてものすごい頭痛が襲ってくる。これだけは慣れないが、おや?これは俺がバイザーなしでExEMが見える時の現象のはず…

 ほんの少し思考を他所にやってしまった隙を突いて、姑獲鳥は剣を持った右腕を封じ攻撃されないと思ったのか翼の爪で俺を襲おうとしてきた。

「残念」

 空いていた左手を姑獲鳥の胸に突き出す!

「ガアアアアア!」

 姑獲鳥は身を捩って俺から離れる。

 左手に持っていたのは『短剣』、サブウェポンとして隠していたのだ。

 SERClメンバーは2本のスティックを持っていてメインとサブ、スタイルに応じて使っている。剣と盾、槍と防具など色々あるが俺の場合は『両方武器』だった。

 右手で中距離と短距離の両立をしながら、左手で油断を誘ってから相手を仕留めるスタイル。といえば聞こえはいいが、盾とか上手く使えないので相手より先になんとか当ててしまおうという苦肉の策なんだけど。

 姑獲鳥は思わぬ攻撃に驚いたようで逃げようとし始めた。

「逃がさないよ」

 同時にバイザーにアラートが出る。今度は何だと思ったら『限界時間』の表示がでていた。ヴェールには10[#「10」は縦中横]分という限界時間があって、それ以上ヴェールを使おうとしてもバッテリーがなくなってデバイスがシャットダウンし、AuVが解けてしまう。

 この街はどこでも無線充電で再チャージが可能とはいえ、フルチャージには数分はかかるので、ここで決着をつけないとこっちがやられてしまう。

 急がないと、と思った瞬間に横から斬撃が飛んできて姑獲鳥の首を落とした。

「まだまだやのお」

 屋根の上から聞こえたのは翔夜の声。

 剣による斬撃によって一撃で倒してしまった。

「いいところだったのにな」

 ボソッと俺はつぶやいた。

「なんや?不貞腐れとるんか?珍しい」

「そういう訳ではないんだけど」

 翔夜は俺に身の守り方から始まり戦い方まで色々と教えてくれる。そこは感謝しているのだが、

『なんか過保護なんだよな』

 通常、姑獲鳥相手といえど二人がかりでやったりしない。そろそろこれくらいなら一人で出来るんだけどなあ。なんか信頼されてない感じがしている。そのせいか時々イラっとしてしまう。まあ、俺の出来が悪いというのが問題なのだが。

「ここに来たんはお前のヘルプに来た訳じゃない」

「どういう…」

 話そうとしたら前の路地から『アビス粒子』反応、新手のExEMか?

「気づいたか?これがワシの本命やねん」

 路地から出てきたのは上半身は女性、下半身は蜘蛛のような姿。個体名は『蜘蛛女アラクネ』と出た。

 この名称については不思議に思っているんだけど、SERClのバイザーのExEMの名前が妖怪みたいな表記なのに呼び名は西洋風ってどうなんだ、と。SERCl専用AI『ヘカトンケイル』の学習の結果らしいがどうしてこうなった…

 それはさておき、

「結構きついビジュアルだね」

「そうか?慣れとも思うが」

「あの毛の生えた蜘蛛の足の部分がちょっと…」

「ほお、虫ダメなやつ?」

 翔夜がニヤニヤして聞いてきた。

「全般苦手だね」

「冷静そうで怖いもんなしに見えてたけどなあ」

「誰しも苦手はあるでしょう?」

 実際、普通の蜘蛛やら虫やらあまり近寄りたくないし触りたくもない。それが等身大の蜘蛛のリアルな足を間近でしかも動く姿は俺にとってはホラーでしかない。

「確かに誰しも苦手はあるよな。ま、ここはワシに任せときなさい」

「ああ、どちらにせよAuVの限界時間だ」

 俺の戦闘服が解除され私服に戻った。それを見て慌てたのは翔夜だ。

「え?マジで?アビス領域の中にそのままじゃ…ん?」

 翔夜は俺の顔を覗きこむと、落ち着きを取り戻し、

「ふーん、その状態なら大丈夫か。ほんの少ししんどいかもしれんけど、俺の後ろで見学しとき」

 そういうと翔夜は剣をかまえ蜘蛛女に突っ込んでいく。しかし蜘蛛女はその足で翔夜がくりだした居合による乱撃を軽々と受け止めた。

「なかなか硬いなあ」

 今度は蜘蛛女が前の2本の足で襲いかかっていくが、翔夜はその攻撃を1本の剣で全て受け止めていく。AIによる予測精度の高さを感じさせられるなあと思っていたら、

「剛、今の攻撃避けるのにAIは使ってないからな」

 うそ?! あれを翔夜の身体能力だけで受け切ったのか?

「ワシみたいに鍛えとるとAIの予測が邪魔になんねん。AIの予測は素晴らしいとは思うが時にはワシみたいに研ぎ澄ました勘の方がええ場合もあるっちゅーことや」

 すごいな。話しながらも翔夜は蜘蛛女の攻撃をかわし、生身に見える上半身に攻撃を放っていく。

「もらった!」

 蜘蛛女は素手のはずの左手で翔夜の剣を受け止めた。その手はいつの間にか節足動物の手のように変わっていた。

「マジか。これは過去のデータにない変異体かもしれんな」

 蜘蛛女は今度は4本の手足を使って翔夜に攻撃を仕掛け出す。それでも翔夜は剣で見事に受け止め、流す。4本の手足の連続する攻撃を一つ一つの攻撃としてではなく、連続した攻撃の流れとして捉えている。翔夜の剣はその流れに合わせるかのように当てていく。

「本当にすごいな」

「あほぅ、いずれはこれをお前がやるんや。お前にわかるように剣の流れを見せとるんや」

「それは無理だろ」

「諦めるのが早いわ!」

 翔夜は剣で全ての攻撃を弾き返し、蜘蛛女を押し戻した。

「ヘカトンケイル、データは取れたか?」

 ヘカトンケイルは名付けのセンス以外はなかなか優秀で、攻撃予測をしたりやExEMの出現場所の予測など活動で様々なことをしてくれる頼れるAIだ。今も新しいExEMの戦闘データを取っていたようだ。

「蜘蛛女のデータをアップデートしました。これにより攻撃ルート、及び攻撃ポイント全てが修正されました」

「よし。そろそろいくか」

 翔夜は蜘蛛女のデータを取るためにわざと攻撃を受けていたのか。一歩間違えたらこっちがやられるというのに。技量の差が違いすぎる。

「ヒノカグツチ」

 また翔夜の剣が炎をまとう。POSでスティックを剣や銃に変えて戦うのだが、スティックに意図的にPOSを流し込むことで武器に『属性』というか威力をあげさせることができる。

 翔夜の場合、『炎』という属性を剣に纏わせたということだ。その剣で翔夜は蜘蛛女の懐に飛び込む。蜘蛛女はその足で剣を受け止めようとしたが2本の足は炎をまとった剣によって簡単に切り割いてしまった。

「キャアアアアア…!!」

 蜘蛛女は叫び今度は両の腕で翔夜に襲いかかるが、次はその攻撃を受けもせずただ剣の一振りでその両腕も切り落としてしまった。そしてーーー

「お疲れ様」

 そう言うと翔夜は蜘蛛女を頭から一刀両断にして倒してしまった。翔夜は教えてもらっていた時からすごいとは思ったがここまでとは…

「どや?どや?」

「あーはいはい。すごいですね〜」

 このちゃらけた感じがなければ本当にカッコいいやつなのに。

「うわー、心がこもってないわー」

 とはいえこれだけの技量があれば余裕だよな。なぜだか少しばかり悔しくてそれ以上話したくなかった。でもふと思い出した事が。

「なあ、蜘蛛女になりやすい人ってどんなタイプなの?」

「見てみるか?」

 そう言うと翔夜は路地裏に入って行ってしばらくして女性を抱えて出てきた。

「もしかしてこの人が?」

「そうや。恐らく蜘蛛女を生み出した張本人」

「綺麗な人だね」

 POSを吸われて気絶してるのをいい事にジロジロと観察してしまった。

「ま、綺麗かどうかは置いておいて、蜘蛛女みたいなのになる奴は男に振られたとか、推しのグループが無くなったとかそんな感じやな」

「そうなの?」

 聞いておいて何だけど、なんで翔夜がそんな事知ってる?

「何度か聞いた事があってな、しかも束縛したがるようなタイプからExEMになると蜘蛛女になりやすいんや」

 なるほど、だから蜘蛛な訳か。糸で絡めて束縛したいってところか。

「ところでな、今更やけど剛って普段何してるん?」

 翔夜は突然思い出したかのように聞いてきた。

「学生なんだから勉強に決まってるだろう?」

「せやったな。ちゃんと勉強しとるんか?」

「してるよ。明日はレポート提出だし。誰かさんと違って真面目なんだ」

「ワシは学生は遊んでナンボやと思うとるからな」

「気楽だなあ」

「楽しんだもん勝ちやからな」

「それは言えてる」

 少し笑ってしまった。翔夜とのこういうやり取りには悪意がなく、ただ思ったままを素直に話しかけてくる。なんかこうやられると、さっきちょっと不貞腐れた俺が馬鹿らしくなってしまう。

 こいつのこういうところって得だよな。

「ま、これで仕事は完了や。じゃ解散! 気ぃつけて帰り」

 するとバイザーにまた通知が。

「歩いていけばクールタイムがちょうど終わるね。今度は俺に一人でやらせてよ」

「オーケー。わかった、今度は手ぇ出さへん」

「そう言って…」

 俺と翔夜はうだうだ話しながら次のポイントに向かっていった。


「おーい蒼炎よ。レポート提出できたのかぁ?」

「ああ。バイトの後に徹夜で仕上げてさっき送ったよ」

 話しかけてきたのは安達。大学で数少ない俺の友人だ。とっつきにくいらしい?俺にも気さくに話しかけてくれる奴だ。

「まーたバイトかよ。夜だから授業と被らないのはいいけど、大丈夫か? あのオカルトクラブだろ?」

「あー、まあ大丈夫だよ」

 これも入ってしばらくしてから知った事だが、SERClって呼び名だけじゃなくて本当のサークルみたいな活動をしていたのだ。しかも俺の通っているここ神無工科大学KITの。『妖魔とか不可思議現象解決クラブ』の名前はそのまま大学のクラブ名として通っていて、官民合同のプロジェクトを行っている形になっている。そりゃ市役所とかにも筒抜けだ。

 そしてSERClのメンバーは民間からの出向者出会ったり、大学関係者、俺と同じ学生だったりしていた。ちなみに真凛は大学の理事とのこと。こんな事がこの街で起こっているなんて世の中何かが間違っているような気がする。

「なあ、あのクラブから紹介されたバイトってやっぱり流行りの呪物の検証とか実験とかか?」

「オカルトな目線で見過ぎだ。俺のバイトは深夜の警備員だよ」

 ある意味、嘘はついていないよな。

「へー。まともやん」

「だろう? 色々訳あって入部したが意外とまともなんだよ」

「ふーん」

 そうは言ったものの普通の大学で勉学に励み、楽しく友人と遊んで卒業のつもりがどうしてこうなったのだろう…?

「今日はバイトないんか? 授業終わったら飲みに行くぞー」

「俺まだ呑んじゃだめだけどな」

「真面目やな」

「2浪の君と違ってまだ呑めないの」

 ふと通知に緊急ニュースが入ってきた。開いて内容を見ると『あの有名グループが突然解散!メンバー間の不和が原因か!?』となんとも安い煽りの記事が目に飛び込んできた。

「あ、昨日のはこれが原因か…?」

 こういうグループを推してる子達にとっては解散とかのニュースはショックでこの世の終わりのように感じてしまう事もあるのかもな。

「あー、当分は蜘蛛女ばかりがでるのかもな」

 俺には到底理解が出来ない感覚だ。でもこれが原因になるというのもな…ま、あまり考えたところで何か分かるわけでもないし、俺は俺で楽しく過ごせたらいいか。翔夜の言葉はすごいね。

「さっさと授業受けて美味いものでも食べに行くか」

 色々と片付いた後のご飯は美味しく食べれそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る