第10話 (後編)マダムが子供を連れてきました。
クソガキとの生活は未だ始まったばかりだが、今思っていることは
「早く帰れ」 である。
『お兄さん、僕は喉が乾いたけど?』
「………お茶でいいかい?」
『ジュースが有るならそっちのほうがいいけど……まぁ仕方ないなぁ』
相変わらずのクソガキっぷりである。
「はいどうぞ……お茶ですよ」
『ありがとうございます〜』
クソガキはコップの
『美味しいです!』
クソガキの急ないい子っぷりに ”ツンデレ” と同じ症状が起きて、すこし可愛くみえてしまった。
『あなた、早く仕事を始めたらどうですか?』
否、前言撤回である…… 一ミリも可愛くはない。
「い、今探し中なんだよ。ほっといてくれ」
そう言って、僕は気まずい空気になったのでテレビをつけた。
「ん、”小学三年生より賢いのかいお前さんらは”じゃん」
** 小学三年生より賢いのかいお前さんらは とは **
小学三年生の問題に答える。ただそれだけの番組である……
もちろん賞金などはなく、ゲストも一時期一世を風靡した一発屋芸人や、オワコンなタレントなどである。
「そういえば、君小学四年生だよね?もちろん全問わかるよねぇ〜」
『いや、当然でしょう。何をふざけたことを言っているんですか?」
「じゃあ、お兄さんと勝負するかい?」
『いいですよ?ニートに負けるわけがないので」
僕(24)と小学四年生のクソガキのクイズバトルが、今始まる……!
◆
実はこの勝負、完全なる勝機があるのだ……なぜならこの番組が僕がこの前みた回の
再放送だからだ……
ん、ズルしたらだめって?関係ねぇぇぇんだよぉぉお!!僕はこのクソガキに痛い目みてほしいんじゃぁぁぁあ〜〜〜!
「「第一問、カブトムシの足は何本でしょう」」
早速見たこともあり、常識的にわかるクソ簡単問題が飛んでくる。
「せーの!六本!!」
『え……?なんで答えてるんですか。せーので言うなんて聞かされてないですし』
「あ……ごめんごめん」
僕はこのクソガキに勝ちたいあまり、つい早とちりしてしまった。
「じゃあ、次からせーのって言ったら同時に答えるんだよ」
「「第二問、4+2−1+4=?」」
相変わらず簡単である。
「せーのっ、2!! あれ?」
何故か答えない。
「どうしたの?わからなかったの?あれれれ〜」
『は?ち、ちがうし。そもそも”せーので言う”って言ってたけど、どっちがせーのって言うかは決まってなかったし。そっちの不備だし』
クソガキに痛いところを突かれる。だが、さっきとは明らかに違う表情をしている……
「「第三問、”福” なんと読むでしょう」」
僕がせーのっていうからこたえてね。いくよ……
「せーの!ふ……」
『ごめんなさいぃぃぃぃいいいいいい!!!』
突然クソガキが謝ってきた。びっくりして言葉が出ない……
「え、?どうしたの」
『僕、実は頭がわるいんだ。でも、ムキになって勝負を受けちゃったんだ……
ごめんなさい』
やはり”ツンデレ”と同じような感覚に陥る。少し可愛く見えてしまうのだ……
『だから、実は勉強を教えてほしくて宿題を内緒で持ってきたんだ……』
「俺にまかせろ。できるとこならおしえてやる」
急だが、僕はコイツの一日家庭教師になった。
◆
気づけば、帰りの時間が近づいていた…とっくに五時間は過ぎていた。
…だが、小学三年生の範囲なのでさほど疲れてはいない。
『お兄ちゃん、今日はありがとう!!わからなかったところも解けるようになったよ!!』
やはり、可愛いと錯覚してしまう……異常だ。
『『ピンポーン』』
迎えが来た。少しさびしい……ことはない。
『『ガチャッッ』』
『あぁら圭ちゃん!ママザマスよ。このお兄さんに変なことされてないザマスね?』
相変わらずこのマダムのことは好きになれない。
『うん、されてないけど……別に特に何も得ることはなかったよ。ママ』
『ってことで、今日は子守感謝してるザマス。また困ったことがあったら来るザマスよ』
「はい、やめてください」
そうしてマダムらは帰っていった……
マダムの息子はクソガキではなくクソ素直じゃないガキだった。
【悲報】クソ上司にリストラされて死物狂いで入居した物件がヤバイ奴らしかいないニートマンションだった件について。 ふきゅい。 @yuiyuiyui1031
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