第6話 怪しい壺は買うべきです。
僕の名前は田中直政。現在絶賛フリーターで、このマンションの生活も三日目を迎えた。かなり内容の濃い2日間だったが今日は何が起きるか少しワクワクしているのである。
『ピンポーン』
誰かが来た。
「はい、何でしょう」
僕は恐る恐るドアを開ける。
『こんにちは!株式会社やまだ鈴木から来ました、カンパニーです。あっや、
間違えたぁ!株式会社やまだカンパニーから来ました鈴木です!』
明らかにヤバい人だ。僕の直感が警鐘を鳴らしている。
「何のようですか?」
『はい、我が社で製造しているものすごく怪しいツボを売りに来ました!』
「いやいや、売りに来ました!じゃなくてあなたアホなんですか?そもそもツボが
怪しいってのに、その上に自ら”ものすごく”をつけるなんて。絶対買いませんよ!?」
『おねがいします』
「無理です」
『お願いします』
「無理です」
『お願、 「しつこぉぉぉぉおおい!!!」
『うぅ……僕の家は貧乏で妹の手術代を稼がないといけなくて……
それでも無理だというのなら諦めて帰ります……』
「妹さん、どこか悪いんですか?」
『はい、心臓あたりが……』
「それなら、うぅん……わかりました。妹さんに助かって欲しいので……
買いましょう」
『うっしゃあああああああああっっっっ!!!』
「え、大丈夫ですか」
『あ、すいません……つい取り乱してしまいました。えぇ〜こちら
250万円になります』
「あ、無理ですね」
『はい?』
「あの、無理ですよ」
『え、なんでですか』
「いや、圧倒的に価格設定ミスってますよね。妹さんの手術台のために
だせる金額じゃないですよ」
『うーわ、なんでだよ。妹の手術台って言ったら絶対買ってくれるってタクミ先輩言ってたのに……くそが!!』
「本当に妹いるんですか?」
『いませんよ、嘘です』
「兄弟は?」
『完全なる一人っ子ですね』
「帰ってください」
『無理です』
下手くそな商品勧誘のせいで気づけば10分がたとうとしていた。
『立ち話もなんですし、中でお話します?』
「いや、なんでだよ!おまえが会話の主導権握んな!いらないって言ってますよね!?」
『仕方ないですねぇ……この手はできるだけ出したくなかったのですが」
ま、まさか……暴力でねじふせるつもりか!?
『痛い痛い〜〜!やめてください〜〜!殺されてしまう〜!』
「おまっ、ばか」
突然の奇行に僕はあせって彼を入れてしまった。
◆
『で、いつになったら買っていただけるんですか?ずっと待ってますけど?』
「いや、高圧的な感じやめてくれる?!買わないから!」
『なんでですか!ならなんで入れてくれたんですか!家に入れたら確定演出だって
タクミ先輩が言ってたのに…』
「タクミが馬鹿なのか!?確定演出とかいうなよ、ガチャか!まず250万円という
価格設定からおかしいんだよ!普通は2500円くらいでしょ、それでも高いけどね!」
『あ……』
「どうしました……?」
『2500円でした』
「もう帰ってください」
『無理です』
「ぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!かえれよぉぉぉお!そんなツボいらないんだよおぉぉお!しかもでかいし!なんか安っぽいし!そのツボをかったらなにかいいことがあんの?!ないですよねぇぇぇぇぇええ!」
『あります』
このときすでに30分が経過していた。
『このツボは霞ヶ浦先生が作られた作品で………す』
「いや効果とかないから、作品で……す、でおわってんじゃねぇか!!」
『買わないんですね?本当に』
「はい、買いません。」
『ほ、ん、と、う、に、いいんですね?』
「はい、全然いいっすよ。」
『チッ』
「うわ、舌打ちした!舌打ちした!」
『まぁいいです。その代わりまたきますからね!』
「まじでくんな」
◆
その夜、僕はテレビを見ていた。内容は依頼主の物品を鑑定してもらう
という内容のものである。
「ん?」
僕は目を疑った。昼の商品勧誘のつぼが鑑定されているのだ。
(それでは鑑定結果に参りましょう。オープンザ・プライス!
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん
300まんえんで〜〜す!)
「…………頼む、もう一度きてくれぇぇぇぇえええええええええええええええ!!」
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