第2話  隣の住民に呪われそうです。

――ギシッ! 

 階段がきしむ音が鳴り響く。

 どうやらエレベーターが故障中らしい。


「ここがお前の部屋、202号室だ。」


 タフジジイの受付がそうつぶやく。


 年期の入ったドアが待ち構えている。

 やはり1000円のマンションなど良い物件なわけないのだろう。

 どうせ汚い、狭い、家具もボロボロ、あまり過度な期待はしない。


 恐る恐るドアを開けると……


『ガチャッ』


「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっ!!!」



 そこには、新品の家具、最高の日当たり、ガス、水道、

 家に住むのに必要な条件が全て揃っている……



 はっ、夢か……





 となることもなくただ呆然とドアの前で立ち尽くした。





         ◆  




 玄関に靴を脱いで部屋に入る。

 未だ実感は湧いていない。ドアの年期とは裏腹に中は新築のものになっていた。

 部屋を見た感想はすなわち歓喜ではなく”恐怖”である。

 こんな部屋が1000円、そんなはずがない!だが、本当なら……


「最高じゃないかぁぁぁあああ!!」


「ハッ!」

 重大なことに気づいてしまった……

 このマンションに長く住み続けるには

 ご近所づきあいが大事じゃないか!!


「隣の部屋の人に挨拶だ……」




 〜201号室〜


 隣人に挨拶……初めての体験だ。

 家賃1000円、快適な部屋、こんなとこに住んでいる人なんてクソニートしかありえない……


 まともに挨拶できるのだろうか……


『ピンポーン』


 押してしまったぁ!どんな人だ? やばいひとかっ?!

 やめればよかったあぁぁあぁあっっっっ!


『ガチャッ』


「はい、なんでしょうか?」


 ……予想とは裏腹に好青年が現れた。


「隣に引っ越してきた田中直政たなかなおまさです。

 よろしくおねがいします。」


「あぁ、そうですか!僕は清水涼しみずりょうです!

 よろしくおねがいします!」


「どのくらいお住みになられてるんですか?」


『一年くらいっすかねぇ、めっちゃいいんで!ここに住んだらもう他に住めないっすよ』


 ……この人、普通にいい人だぁぁぁぁあああ?!!!


(部屋の奥に……が……)


 呪い道具を見つけてしまった僕は清水さんの

 笑顔が急に怖く見えて仕方がなくなった


「で、では、あ、あはは……」


「はい!よろしくおねがいしますね!」



 

      ◆




 部屋に戻ったがまだあの笑顔を忘れることができない……

 最初は爽やかな笑顔だったが今では狂気的な笑顔にしか見えなくなってしまった。


「ハッ!」


 まだ203号室があるじゃねぇかああああ!!




 頼む……203号室の人は普通であってくれえええぇ!!!


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