初めての依頼③

 指定された安全な区域を出て、私たちはバルレマの原にある森に足を踏み入れた。

 森の中は静かで、小動物が動いているくらいだ。


 なんだ、別に危険とかないじゃん。

 期待して損した気分だ。


 イゴール「お!あそこにいっぱいあんのって救命草じゃないか?」


 イゴールが指さした方角を見ると、確かに多量の救命草が自生していた。


 イゴール「全部持っていこうぜ!」


「全部はダメだよ。」


 イゴール「なんでだよ。」


「全部とっちゃうと、新しい芽が出なくなっちゃうから、次取りに来るとき困るでしょ?」


 イゴール「へぇーそうなのか!」


 私たちは、救命草の採取を開始する。

 私たちはこの時完全に油断していた。

 それゆえ、近くにすでにいた魔物に気が付かなかった。


 救命草を採取していた私の身体に、突如衝撃が走る。

 しなる鞭のようなもので攻撃を受けた私は、そのまま数メートルほど転がった。

 どうやら痛恨の一撃を受けてしまったようだ。

 HPが半分以上削られてしまった。


 私はすぐに周りの様子をうかがう。

 ジーク、イゴール、ラフィー、マノンも同じようにダメージを負って、離れた位置で倒れている。

 さらに、マノンはすでに気を失ってしまっていた。

 まずい、完全に非常事態だ。

 油断した!


 私はみんなの位置を探りつつ、敵の正体を探していた。

 だけど、近くに敵らしい敵の姿は見当たらない。


 どういうこと…?

 近くには木や草といった植物しかない。

 他にはゆらゆらとがあるくらいだ。


 ん?ゆらめく茨?

 そうか!あいつか!

 あいつの正体はダンシングソーンだ!

 レベル3の植物の魔物だ。

 なんとか、しないと!


 イゴール「やったのはあいつか!やるぞ相棒!うおおおお!」


 ジーク「おう!」


 ジークとイゴールが立ち上がりダンシングソーンに向けて走り出す。

 ジークはナイフを抜き、ダンシングソーンの身体に突き刺す。

 イゴールはパンチを繰り出した。


「「やったか!」」


 二人がそう叫んだのも束の間、ダンシングソーンによる反撃が、二人の身体にもろにクリーンヒットした。

 二人はダンシングソーンの茨に吹き飛ばされて転がっていく。

 二人はそのまま、起き上がることはなかった。


 ジーク、イゴール!


 私の脳裏に、”死”がよぎった。

 このままでは確実に全滅し、私たちは帰らぬ人となる。

 よしんば死体を見つけてもらったとしても、蘇生処理も間に合うかはわからない。

 こんなあっけなく終わるなんて嫌だ!

 まだ死にたくない!復讐も果たせないまま、こんなところでみじめに死ぬなんて…!

 そんなの嫌だ!


 私は必死に斧を振るった。

 生き残りたくて、ただがむしゃらに斧を振るった。



 しかし、現実は非情だった。

 隙だらけの私の身体にダンシングソーンの茨が飛んできて、私の身体はメシメシと悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。

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