2年目の始まり②

 2年目が始まり数日が経過したが、今のところ俺の生活スタイルは去年とは変わっていない。

 とはいえ、明日にはついに集団戦闘訓練が始まる。

 どんなことをやるのか楽しみだぜ。

 週末にはギルドにも顔を出してみよう。

 俺は恒例のマークとの特訓をしながらそんなことを考えていた。



「そういえば、マークに聞きたいことあったんだった。」

「どうした?」

「クリティカルって知っているか?」

「知っているかってお前…授業で説明したの俺なんだが…」

「ごめん…」

「まあいい。それで、何が聞きたいんだ?」

「全部。」

「はぁ。わかった。ちゃんと聞いておけよ?」

「おう。」


「クリティカルっていうのは、いわゆる致命の一撃というやつだな。」

「攻撃が、より深く相手の急所に当てるほど、ダメージが大きい。」

「急所?」

「ああ、人体でいうところの脳や心臓だな。」

「だが俺たちこの世界の住人は、急所に攻撃を当てられても簡単には死なないようにできている。」

「それは、HPの防御幕が、急所により深く当たっているほど、ダメージを引き受けようとしてくれるからだ。」

「その時、武器の限界以上のダメージをHPに与えたとき、HPの防御の幕が黒くはじけ飛ぶとされている。」

「これがクリティカルの絡繰りだ。」


「そうだったのか!クリティカルを発動するにはどうやったらいいんだ?」

「まずは相手の急所を理解するところからだな。」

「人間相手ならともかくとして、他の魔物の急所がどこにあるのか、それはわからない。」

「探り探りでやっていくしかない。」

「次に重要なのが、どれだけ急所に当てられる技術があるかだ。」

「相手はこちらの攻撃を避けてくる。単に攻撃を当てるだけじゃ、急所は外されるだろう。」

「だからほとんどの場合は運が絡んでくることが多い。」

「急所を当てる一番の方法はまず軽戦士としての訓練を積むことだ。」

「軽戦士は急所を当てる訓練をずっと行っている。」

「お前も軽い武器を持って的確に狙う訓練していたが、まさか無意識だったのか?」

「そうだったのか、確かに俺は軽い武器の方が狙いやすいって思って使ってたけど…」

「そんなことは考えてなかったな。」

「そうか。まあなんにせよこれからの訓練は、急所を当てることを考えながらやるといい。」

「了解!」

「あとは戦技、《必殺攻撃》を覚えることかな。」

「必殺攻撃?」

「ああ。必殺攻撃は武器の殺傷性が高くなるように意識して攻撃する技だ。」

「ただし、武器に意識を割いてしまうため、回避がおろそかになるという欠点がある。」

「だがこの技を極めていけば、いずれ手になじむように意識を集中できるようになるうえ、敵の防御力を貫く一撃が放てるようになる。」

「す、すげえ!それ教えてくれ!」

「構わないが、今お前は《両手利き》の動きを練習しているんだろう。」

「そうだけど?」

「いいか?戦技っているのはそうホイホイ覚えられるものじゃない。」

「少しずつ覚えていけ。今は両手利きの訓練を続けるんだ。」

「それが扱えるようになったと思ったら、次の訓練を考える。これが基本だ。」

「まあ、前もって何を覚えたいのか考えて奥のは悪いことじゃない。」

「だが、一つ一つを丁寧に覚えていくことだ。」

「うーん、分かった。必殺攻撃はまた今度だな。今は両手利きの方に集中するよ。」

「それがいい。」


「他にはなにかないのか?」

「他にか?うーむ専門外だから詳しいことはわからないが、思いつく限りでは3つあるな。」

「マジで!?」

「ああ。ひとつは操霊魔法に【ソニック・ウェポン】という魔法がある。」

「ソニック・ウェポン?」

「ソニック・ウェポンは武器に風を纏わせ、より身軽に攻撃できるようになる高等魔法だ。」

「操霊魔法か…それに高レベルってなると俺には難しそうだな…」

「その場合は、お前が強くなった時、操霊魔法を扱える高レベルの魔術師を味方につけておけばいい。」

「そうか!」

「2つめは賢神キルヒアあから与えられる祝福、【ウィークポイント】だ。」

「ウィークポイントは相手の急所を明らかにする弱体化魔法だ。」

「そんなのもあるのか!でも俺、キルヒアの声は聞こえねえんだよなぁ。聞こえんのはライフォスだけだ。」

「お前、ライフォスの声が聞こえていたのか!」

「まあね。」

「話が逸れたな。とにかく、これも同じように仲間を集めればいい。」

「最後の一つは?」

「錬金術にあるとされる【クリティカルレイ】という秘術だな。」

「詳しくはわからないが、なんでもほんの一瞬だけ武器の殺傷性を高める秘術らしい。」

「錬金術か…なんだか難しそうだな。この学校にも錬金術の先生はいないし、どうしたもんか…」

「そうだな…錬金術の講師は探しているんだが、なかなか見つからなくてな…」

「まあ今後の人生でなにがあるかわからないんだ。いずれどこかで錬金術に出会うときが来るかもしれない。」

「気長に探せばいいさ。」

「そうだな。」


 クリティカルを極めるっていうのはかなり時間がかかりそうだ。

 しばらくは両手利きの修業をメインに考えていこう。

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