2年目の始まり①
私たちが冒険者学校に入学してから1年が経った。
今日から授業が再開されるため、私は友人であるラフィーと共に学校へ向かう。
2年目からは2つあったクラスが一つに統合され、現在53名の生徒が在籍している。
この学校は2年ごとに生徒が入れ替わる仕組みを導入しているため、今年の新入生はいない。
はじめは120名もの生徒がいたのに、今では半数を切っている。
最近になって私はこのことに対して疑問をもつようになった。
せっかく冒険者を目指そうとする若者たちをどうしてこのように切り捨てるのだろうか、と。
理由の一つとして考えられるのは、精鋭を鍛え上げるというものだ。
生徒の数が多ければ多いほど、1人1人にかけられる時間はその分少なくなる。
ありきたりな人間を育成するならそれで十分だろう。
だが、この学校の方針はそうではなさそうに思える。
基準に至らないものを絞っていけば、最終的には優秀な個体しか残らないというわけだ。
もしかすると、ここから先の授業で、学校の狙いも見えてくるのかもしれないな。
そんなことを考えていると、すでに生徒たちが教室に集まってきていて、担任となるマーク=フレイザーが姿を現した。
「よし、揃っているな!それじゃあ、本年度最初のホームルームを始めるぞ。」
「前もって説明していた通り、本年度からクラスは統合され、俺が担任となる。」
「改めてマーク=フレイザーだ。よろしくな。」
「さて、さっそくだが、本年度のカリキュラムについて説明していく。」
「基本的には昨年と変わらないが、2年目からは大きく変わる点が2点ある。」
「まず一つ目が、新たな授業集団戦闘訓練が始まるという点だ。」
「昨年まではお前たちに個々の能力を伸ばしていってもらったと思う。」
「だが戦闘というものは基本的には1人では行わない。」
「なぜなら俺たち人は弱く、俺たちが戦う魔物はいつだって強大だからだ。」
「俺たち人間の一般人の平均レベルは0。」
「それに対して、人間の敵ともいえるべき蛮族は下級と呼ばれるゴブリンですらレベルが2もある。」
「自分よりも格上の相手を一人で倒すことのできる事はほぼまれだ」
「だが単純に人数、手数を増やせば、自分たちより強い魔物であっても、対応が遅れ倒すことができる。」
「こういった理由から、俺たち冒険者はここに役割を分け、集団で行動するのが常だ。」
「だが、いきなり見知らぬ誰かと連携を組むというのは難しい。」
「だから俺たちは、最低限の集団戦闘の基本をお前たちに叩き込んでいくつもりだ。」
なるほど…
人族はそういった考えで戦っているのか…
私たち蛮族は集団で行動することもあるが、協力して戦う種族はまれだ。
リザードマンのような種族内での仲間意識が高いものくらいじゃないだろうか。
あとは上位蛮族に命令されて動くようなやつくらいだろう。
トロールみたいな誇り高いやつは、特に1対1の戦いを好むというし。
面白そうな授業だな。
「次に二つ目だ。」
「お前たちは今年から、冒険者ギルドオリエントに実際発行されている最低ランクの依頼の受注資格が与えられる。」
「授業外でこれらの依頼を受け、無事達成できれば報酬も規定通り受け取れることに加え、成績にも加点される。」
「興味があるやつは、どんどん依頼をこなして実践を積んでいくといい。」
「ただし、依頼に失敗すれば減点対象となることは忘れないように。」
「それから、依頼は1人では受けられない決まりにしている。」
「依頼を受ける際はかならず3人以上のパーティーを組んでから挑むようにしておけ。」
へぇー自主的な実践もできるようになるんだ。
あとでラフィーやジークを誘ってギルドの方に顔だけ出してみるのもいいかもしれないな。
よさげな討伐依頼とかあれば、受けてみよっと。
「説明は以上だな。」
「おっと忘れるところだった。半年後のバルム砦祭では我が校通例の演舞祭が開かれる。」
「楽しみにしておけよ。」
マークはニヤリと笑って教室を出ていった。
演舞祭…
確か毎年この町で開かれているお祭りで、学校側が出す演目だったっけか。
1年次は先生たちと魔物が戦う様子を観て、2年次は私たち生徒がチームを組んで戦い合うという催しだったはずだ。
ということは次にライバルたちと競い合うのは、おそらくその演舞祭になりそうだ。
それまでにもっと力をつけておかなくちゃ!
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