成人の儀⑧

 俺とエレノアはマークたち3人の冒険者に挟まる形で遺跡内を進むことになった。

 前にマークとレベッカ、その後ろに俺とエレノア。

 最後尾にオリヴィアという並びだ。

 マークはおそらく前衛の戦士でレベッカは格闘家だと思う。

 オリヴィアは杖を持っているから魔術師だろうか。

 道中細かい点にすぐ気が付くし、かなり腕利きの冒険者なのだということがわかった。

 こんな機会はめったにないし、今のうちに3人から冒険者としての技術を盗み見てやるぜ!


 しばらく進んでいくと、扉に突き当たった。

 扉を調べていくと、問題なく扉は開いた。

 かなり奥まで進んできたし、そろそろゴールも近いんじゃないだろうか?

 なんとなく緊張してきたな。

 おっと集中集中。

 扉の先は大きな部屋だった。

 竜のような形をした銅像が部屋の各所に配置されていて、いかにもって感じだ。

 ん?この入り口の燭台、なんで火が灯っているんだ?


「貴様ら、冒険者か?」


 今の声誰だ?

 俺がきょろきょろとあたりを見まわすと、マークたち3人の冒険者はすでにあたりをつけているみたいだ。

 急いで俺もそっちを見ると、視線の先には、ローブに身を包み、仮面をつけた4人組の集団がこちらを見ていた。


「その風貌、まさか剛剣の英雄に天雷の魔女、崩狼姫か!」

「そういうお前さんらは悪夢の旅団だな?」

「お得意の遺跡荒らし中ってところか?」

「っち、仕方がない。お前達にはここで死んでもらおう!」

「ふっ、イキのいいやつだ!」

「オリヴィア!サポートしろ!レベッカは2人を守れ!」

「わかったわ!」

「了解です!」

「ちょっと待てよマーク。俺も戦うぜ!」

「わたしも!」


 マークはそれを聞いて、少し悩んだように顎をこする。


「ま、あの程度の相手なら大丈夫か。」

「お前ら無茶だけはすんなよ?」

「「了解!」」

「ガキどもを抱えてずいぶんと余裕そうだな!」


 そういうと4人組はこちらに向かって特攻してくる。

 そのうち2人が、あからさまに俺とエレノアを狙ってきた。

 それを引き受けるようにマーク、レベッカが前に躍り出る。

 そのガードの脇を突くように一人がレベッカに攻撃をしかけた。

 チャンスだ!

 そう思った瞬間、俺は駆け出す。

 そして手に持った鉄棒を仮面の一人にたたきつける。

 不意を突かれた仮面の男は俺の鉄棒のダメージに悶絶する。

 するとそのままエレノアが追撃を仕掛け、そのままそいつはうめき声をあげて動かなくなった。

 どうやら気絶したみたいだな。

 すると後方から黄色い光が放たれ、俺とエレノア、マーク、レベッカの体が少し輝く。

 これはオリヴィアの魔法か?


「【アース・シールド】だね。」

「【アース・シールド】?」

「うん、物理攻撃に対する耐久力をあげる魔法だよ。」

「そいつはありがてえ!」

 俺は初めて受けた魔法に興奮し、再度攻撃を仕掛けようと動こうとした。

「待って!」

「なんだよ?」

「もう一人はどこにいったの?」


 そういえば?どこに行ったんだ?

 エレノアに言われて俺もあたりを探し始める。


「ハッハッハッ残念だったな。仲間ならもうすでにここにはいない!」

「なに!?」

「はなからお前たちを殺せるなんぞ思っていないさ。」

「俺たちの目的はあくまで陽動。」

「真の目的は、仲間を逃がし、この状況を伝えることにあるのさ。」

「くそっ、殺気は本物だったから油断したぜ。」

「それは当然だ。殺せるならそれにこしたことはない。」

「さあ、俺たちの最後の抵抗だ。存分に味わってくれ!」


 残った仮面の二人が一斉に仕掛けてきた。

 マークとレベッカがそれを引き受けようと行動に移す。

 一人は受け止めることに成功したが、もう一人は間を抜け、俺とエレノアのもとに接近してきた。

 そしてそのままエレノアに肉薄し、ナイフを振り下ろし、エレノアが切りつけられた。


「ハッハー!雑魚はとった!」


 仮面の男が笑みを浮かべている。

 くそっ!よくもエレノアを!

 俺は男の元へと駆け出す。

 するとエレノアの切り傷から噴き出した血液が、男の顔に付着する。

 するとどうしたことか、付着した場所がじゅう、じゅうとなにかが焼けるような音を立てはじめる。


「ぎやああああ!いてええええ!」


 仮面の男は苦しそうに悶絶を始める。

 俺はそのすきを逃さず、鉄の棒を男の顔面にたたきつけた。


「こんにゃろ!くらえ!」


 男はうめき声をあげて気絶した。

 マークたちの方を見ると、同じように仮面の男は倒れていた。

 どうやらあっちも終わったみたいだな。

 俺は戦いが収束したことを確認し、鉄の棒をしまい、一息ついた。

 これが冒険者の戦いか…

 人と戦うこともあるんだな…

 俺は気絶した仮面の男を見やる。

 なんとか殺さずに済んだけど、次こんなことがあったとき、俺は人を殺さずにいられるのだろうか…

 そう考えると無性に不安に駆られる自分がいた。

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