成人の儀③

 俺たちは1時間ほどかけて崖を登り切った。

 勝負の結果としては僅差で俺の勝ちだった。

 やったぜ。

 おそらく身長差がハンデをものともしなかったのだろう。

 エレノアがめちゃくちゃ悔しそうにしてるのが面白い。

 最初はつまらなかったけど、やっぱりあいつと一緒だと楽しいな。


 崖の先を少し歩くと祭壇にたどり着いた。

 エレノアの方を見ると、どこかソワソワと落ち着かない様子だ。

 緊張してんのかな?珍しい。

 とりあえず俺は持っていた聖火を篝火へと移す。

 そして俺たちは教わった通りに祈りをささげた。

 するとなんだか、妙に自信がみなぎってくるような、そんな感覚に見舞われた。


 無事に祈りを終え、山を下りる準備を始める。

 これだけ早く着けば、あいつらに自慢できるな。


「よし、行くぞエレノア。」


 エレノアに声をかけると、エレノアは祭壇の壁の方を一心に見つめていた。


「エレノア?」


 もう一度声をかけるも、エレノアには聞こえていないようだ。

 心配になりエレノアに近づくと、エレノアは壁に手を触れた。

 その直後、壁はミシミシと音を立てながら、ひび割れていく。


「危ねえ!」


 俺は即座にエレノアを引っ張る。

 エレノアも少し遅れて反応し、驚愕に目を見張る。

 壁の一部は崩れ落ち、その先には木箱などが置かれた部屋があった。


「なんだ、これ?」

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