成人の儀②

 もらった地図を頼りに、私たちはすでに3時間ほど歩き続けていた。

 ジークなんかすでに暇そうにしながらナイフをいじってる。

 相変わらずこういうことに関しては集中力のないやつ。

 またそれから少し歩くと、大きな崖に差しさまった。

 変だな。地図にはこんなのないのに。

 不思議に思った私は周囲を探索することにした。

 その時、私は何となく胸がざわつくような気配を感じた。

 なんだろう、この感覚。

 まるで、誰かに強く求められているような、そんな感覚だ。

 それは祭壇のある方角から感じ取れ、億劫だったこの儀式が少しだけ楽しみになってきた。


 周囲を見回ると、裏手に緩やかな坂道と看板を見つけた。

 看板にはこう書かれていた。


 ”祭壇は崖の上にあり”

 ”安全でゆったりとした平坦な道”

 ”困難ではあるが、早くたどりつける崖登りの道”

 ”好きな道を選べ”


 この看板を見つけた私は、早速ジークを呼ぶことにした。


「どうするジーク?」

「わたしとしては、ゆっくり言ってもいいかなって思ってるんだけど。」

「うーん、そうだな~」

「俺は崖登りの方がいいな!」

「どうして?」

「祭壇の位置って村から見えるだろ?」

「うん。」

「早く着いたらさ、あいつらすげぇ!ってなるじゃん?」

「孤児院のやつらに自慢したい。」

「え~。そんな理由だったら私はこっちの道の方がいいかな。」

「ふーん。」

「なによ。」

「びびってんだろエレノア。」

「は?」

「まあ、チビのエレノアにはこんなに険しい崖登りは厳しいか!」

「言ってくれるね。その挑発、のってあげるよ。どっちが早く登れるか勝負しましょう。」

「お!いいね!じゃあせめてものハンデとしてこの聖火は俺が持っててやるよ!」

「はあ?その聖火、よこして。私が持つから。」

「いや、いいって。」

「よ・こ・せ!」


 そうしてしばらくジークとにらみ合う。

 そしてどちらともなく、同時に

「「じゃんけん、ぽん!」」

 と手を出した。

 悔しい。


「へへーん。じゃあ聖火は俺が運んでいくぜ。」

「ちっ!」

「ちょ、舌打ちはやめろって。」

「せいぜい負けたときの言い訳にすればいい。」


 私はそう言うと崖に手をかけ登り始めた。


「おい、ずりいぞ!」


 ジークも慌てて私を追いかけるように登り始める。

 私たちはいつの間にか、成人の儀とかいう面倒な催しの煩わしさを忘れた。

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