エレノアとジーク②

 明日は成人の儀だ。

 メアリー姉やレナード兄をはじめ、ダルグ村の皆が通ってきた道だ。

 俺、ジーク=ラザフォードも絶対に成功させて、一人前に認めてもらうんだ!


 そう奮起しつつも日々の仕事は忘れない。

 ラザフォード孤児院の家事なんかは全部メアリー姉が一人でやってる。

 洗濯物を取り込んだりとかは弟妹たちも手伝っているけど、人数分の食事をつくったりなんかは俺たちにはできない。

 そんなメアリー姉の助けになりたくて2、3年位前から俺は孤児院で消費する食料の調達を始めた。

 最初は苦労したが、今では農業だけでなく、狩猟にも出るようになった。

 村のおっちゃん、おばちゃんにうまいやり方を教わってようやく形になったところだ。

 最近では俺の次に年長の二人、ベンとリアラも俺を手伝ってくれるようになった。

 二人がいれば俺が孤児院を卒院しても心配がない。


 ひとしきり作業を終えた俺は軽食をつまみながら村へと顔を出す。

 村の人たちの仕事を助けながら、時には行商のおっちゃんと話しながら売り物を眺めたりする。

 たまに売られている魔動機械品を見ると、喉から手が出るほど欲しくなるけど、我慢するしかない。

 いつか冒険者になって荒稼ぎしたらいっぱい買い込んで、いじくりまわすつもりだ。


 なんだか村の様子がいつもと違って少し騒がしいみたいだ。

 気になって話を聞いてみると、どうやら村に冒険者の一団が立ち寄っているそうだ!

 会いたいと申し出たが、今は忙しいらしく話をするなら成人の儀が終わったあたりにでも、と言われた。

 めちゃくちゃ気になる!


 仕方なく俺は引き続き村の散歩を再開した。

 今日は俺の人生の師、バリーじいちゃんは来ていないみたいだ。

 バリーじいちゃんは俺にいろんなことを教えてくれた。

 俺の生まれである種族は村の皆とは少し違うらしい。

 俺の生まれは太陽の神から加護を受けた種族で、昼の間は無類の戦闘能力を発揮するらしい。

 その代わり夜にはめっぽう弱く、起きていられない奴が多いらしい。

 天体観測が趣味の俺はこれが結構つらい。

 バリーじいちゃんも俺と同じ種族らしく、文化の違い、言語などさまざまなことを教えてくれた。

 俺の背中にある刺青は、7歳の時にバリーじいちゃんが彫ってくれた。

 俺の種族は記念日に身体のどこかに刺青を彫る習慣があるそうだ。

 この背中の刺青は、バリーじいちゃんに一人前の証として彫ってもらったものだ。

 じいちゃんが言うには、「希望になれるように」という意味があるらしいが、俺にはよくわからなかった。

 俺は10歳の時にも、右腕に刺青を彫った。

 英雄になると決めた記念日だ。

「より高みへ向かうように」という意味を込めて彫った。

 成人の儀を成功させたら、今度は胸に彫ると決めている。

 意味は「勇ましく生きていく」とかかな。


 さて、そろそろ日課の鍛錬に向かうとしよう。

 英雄たるもの、日々の鍛錬は欠かせないからな!

 幼馴染のあいつももういるだろうな。

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