第25話 2人目の同期
現在時刻20時50分。
顔合わせ約束まで残り10分。
そして今、私はものすごく緊張している。
「ど、どうしよう・・・あと10分で・・・」
とはいえ、やっぱり私には逃げ出す勇気などない。
いや、別に逃げ出そうとしているわけではない。ただ、決心がまだついていないだけで。やっぱり一度も話したことがない人となると緊張してしまって・・・
結局そんなことを考えていたら、時間を迎えてしまった。
「覚悟を決めるしかないか・・・」
もう他の二人は一足早く通話に入っているようであった。
つまり私待ちである。そもそも今日の顔合わせ自体、私が咲さんとまだ話したことがないから開かれたものであるので、私が行かなくちゃ意味がない。
「よし・・・」
覚悟を決め、通話に入る。
『あ、きたきたー』
「あ、こんばんは・・・」
『お、初めまして!』
これは第一印象×ですね・・・
やっぱりだけどコミュ障拗らせてしまっている。自覚はしているのに、直すことがいつまでもできないでいる自分が少し嫌になってくるかもしれない。
「あ、え、えっと・・・」
『空乃さん初めまして水無瀬咲です!よろしくお願いします」
「あ、如月空乃です・・・よろしくお願いします」
咲さんはものすごく元気っ子みたいな感じがする。
このままじゃ佐奈さんと咲さんに揉まれて、陽キャに挟まれる陰キャみたいな構図になりそうだなあ・・・
『そういえば、空乃ちゃんってコラボで何やるか決めたの?』
「あ、それがまだで・・・あはは」
『なら私、やりたいのがあります!』
そういえばマネージャーさんからコラボの内容考えてって言われていたんだったけか。まあ、特段やりたいこともないから二人に任せようってなったけど。
『お、じゃあ教えてよ』
『APAXやりたいです!』
「APAXですか・・・」
APAXとは最大3人マッチまでプレイできるFPSゲームのことだ。
「FPSゲームはやったことないですね・・・」
『私も前に数回やったくらいかなー』
『大丈夫です。私に任せてください!』
そういえば咲さんはFPSゲームをメインに活動をしていた覚えがある。
かなりの腕前みたいだということもリスナーさんから聞いたことがあった。
「とりあえず今回はAPAXをやるという感じで行きますか・・・?」
『そうだねー、他に何もないならそれでいいんじゃない?』
『いいんですか!?いやー、同期の人とFPSコラボとかしてみたかったんですよ!私、まだあんまり
咲さん。あんまりしたことないとか言っているけど、私が以前チャンネルを除いた時にはかなりの数コラボをしていたように見えたんですけどね・・・私からしたら。
というか、平然と先輩とか外部の人とまでコラボできているのが凄いというか・・・
『それに空乃さんとコラボできるのも嬉しいです!』
「わ、わたし・・・?」
『はい!だって空乃さんって何だか桃さんの所有物・・・?みたいになっていて、他の人とコラボしないんじゃないかみたいな感じで――」
「しょ、所有物・・・?」
もしかして、私って他の人からしたらそんな風に見られていたのだろうか?
た、たしかに他の人とコラボしない感じになっていたのはそうかもしれないけど――
『咲ちゃん!?』
『まあ、とにかく空乃さんのコラボ相手は2人目になれて嬉しいです!』
「あ、あはは・・・」
まあ、何はともあれ咲さんに喜んでもらえたなら幸いだ。
『それに、同期の人で唯一話せていなかったのは空乃さんでしたしね』
「あー、そ、その節は・・・」
『同期全員の顔合わせのときに空乃ちゃんだけいなかったもんね』
少し胸が痛くなる。いやあれは私が悪いわけではないのだ。
風邪を引いてしまっただけであって何もやましいことはないのだ。けど、やっぱりあれを休んでしまった罪悪感みたいなものは少しだけある。
『空乃さんってあのときなんで休んだんですか?』
「あ、いや・・・あのときは本当に風邪を引いてしまって」
そりゃ疑われても当然かもしれない。今までの配信とかを見ていたら、私がそういったものを逃げ出してもおかしくないと思ったのかもしれない。
でも残念、私みたいな陰キャにはそういったイベントから逃げ出せるような勇気すらもないのだよ。
『まあ、そういうこともあるようねー』
『そうだったんですねー。いや、なんかすみませんでした』
「あ、いや別に・・・そりゃ気になりますよね・・・」
あ、あれなんか空気が・・・
わ、私よ・・・何か話題を―――
「あ、あと決めることは日程決めですかね・・・」
『あーそうだね!』
『それだったらこの日はどうですか――』
無事に話題をすり替えることに成功した私であった。
このあと今日の通話は日程決めを終え、そのあと少しの雑談を交えてから終わりましたとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます