第22話 お風呂②

「じゃあリンスも終わったし、次は身体・・・洗っていっちゃうね♪」


 いよいよだ・・・

 遂に身体を洗われるときが来てしまった。


「ほ、本当に洗うんですか・・・?」

「そりゃ、当たり前でしょ!洗いっこなんだからね♪」


 これはどうやら逃げることは難しい感じですね・・・


「や、優しくお願いしますね?」

「それはどうかなー?」


 え、それはどうかなってどういうことですか?!


「うそ、うそ。冗談だってば!」


 そう言って佐奈さんは私の身体を洗い始めた。

 何かされるかもしれない覚悟も少しはしていたが、意外にも佐奈さんは何もしてこなかった。どうやら本当に冗談だったらしい。


「はい、終わったよー」

「あれ、まだ洗ってない場所も・・・」

「えー、それは想乃ちゃんに対する配慮だったんだけど・・・本当に全身洗ちゃっていいのー?」

「あ、いや・・・その」


 どうやらこれは佐奈さんなりの配慮で、佐奈さんは基本的に背中以外は洗わないようにしてくれたみたいだった。


「からかいすぎちゃったかな?」

「・・・はい」

「さすがに背中以外はあれかなーって思って。他のところは自分で洗うようにしてくれたらと思うけど、どうしてもっていうなら――」

「だ、大丈夫です・・・!」


 流石に他のところは洗ってもらうわけにはいかないだろう。

 特に胸とか・・・下の方とか――


「じゃあ、あとは自分で洗いますね・・・!」

「おっけー」


 私が全身洗い終わると必然的に今度は私が佐奈さんのことを洗う番になるわけで――


「ほ、本当に身体も洗っていいんですか・・・?」

「私も洗ったんだから、今度は想乃ちゃんも洗ってくれなきゃだよねー」

「は、はい・・・」


 髪の毛を洗うことはなんの抵抗もなくすることはできたんだけど、身体を洗うとなるとそうもいかなくなった。


「じゃ、じゃあ洗いますね――」

「いつでもいいよー」


 せ、背中を洗うだけでいいんだ。

 佐奈さんも背中を洗うだけだった。私も背中を洗うだけなんだ、だから何も緊張することはない――


「(佐奈さんの背中、大きいな・・・)」


 やっぱり佐奈さんの背中は私みたいなちんちくりんとは違って、包容力がある大きな背中をしていた。安心感がある、私のすべてを包み込んでくれそうだった。


 そんな背中に見とれていて、私は無意識のうちに手をすべらせて、前のほうに――


「あっっ、想乃ちゃん・・・前まで洗わなくてよかったのに」

「え、あ・・・あ。いや、これは手が滑ったといいますか・・・触りたかったとかじゃなくてですね・・・」

「そんな必死にならなくてもいいのに、」


 間違って、間違って。佐奈さんのお胸を・・・触ってしまった。

 こういうことは申し訳ないと思うのだけど、言わせてほしい。


「(すごく柔らかかったです・・・)」


 いや、だって柔らかかったので・・・。

 忘れろと言われいても、今のは衝撃的すぎて――


「まあ、別に想乃ちゃんにだったら、触られても不快じゃないというか・・・だから」

「何なんですか?」


 佐奈さんが何か言ったようだったが、聞き取ることができなかった。

 でも、特段嫌がられたりされているわけではなかったので、一安心かもしれない。これのせいで、佐奈さんに嫌われたりしたら流石に笑えないからね。


「あ、と、とりあえずあとは私で洗おうかな!」

「お、おねがいします、ね」


 だけど少しだけ空気が重くなったような気もした。

 重くなったというか、何というか。気まずい感じになってしまった。


「・・・」

「・・・」


 しばらく沈黙の時間が続いた。そしてこの沈黙を破ったのは佐奈さんだった。


「そ、そういえばさ!この前思ったんだけど、伝え忘れてたことがあってさ・・・私たちRINE交換してなくない?」

「た、しかに・・・?」





「無事にRINE交換できたねー」

「は、はい・・・」


 私たちはお風呂を出た後、諸々を済ましてからRINEを交換した。

 たしかに私たちはプライベートなことも話すような間柄になってきたので、そういうことを話すときはRINEのほうが好ましいのかもしれない。


 でも、こうして家族や親戚以外のRINEが追加されるのは実は初めてで――


「そんなに私とRINE交換できたの嬉しかった?」

「え、」

「だって、想乃ちゃんの顔。今、ものすごく嬉しそうだよ?」


 嬉しすぎて顔にまで出てしまったようだった。


 顔に出てしまったのは、少し恥ずかしかったけど――

 それでも、私はこれでまた一歩。

 佐奈さんとの関係が進展したような気がして、それが嬉しかった。

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