第20話 入浴前

「さ、佐奈さん・・・?」


 配信が終わったあと、私たちはしばらく無言の状態が続いていた。

 原因は先ほどの配信の最後のほうで私が佐奈さんに対してある意味告白みたいなことを口走ってしまったからだろう。


「あ、あのさっきはあんなこと言ってしまってすみませんでした・・・」

「いや・・・それは想乃ちゃんが謝ることじゃないっていうか、私があんな感じにさせちゃったのが申し訳ないっていうか・・・でも、想乃ちゃんにそんなふうに想ってもらえていたのは嬉しかったけど」


 なんというか、ものすごくしんみりした雰囲気になってしまった。

 どうしようと考えていたなか、最初に口を開いたのは佐奈さんだった。


「まあ、あれだね・・・!こんな雰囲気だとせっかくのお泊り会も台無しになっちゃうし、お風呂入ろっか!」

「あ、はい・・・って、え?」


 どうやら配信中に言っていたお風呂に一緒に入るというのは本気だったらしく・・・というか、忘れてなかったんですね。


「あれ、本当はいやだった・・・?」


 佐奈さんが急に悲しそうな眼をしてこちらを見上げてきた。


 いや、別にいやというわけではない。いやというわけではないが、なにか、なにか言葉には表せないどきどきがあるのだ。これが一体どういう感情で、何を表しているのかは今の私にはまだわからない。

 けど、一回許可を出しているわけだし、その上、佐奈さんにこんな顔までされたら断れるわけがない。


「いや、いやではないですよ。ただ、少し緊張してて・・・」

「っ!?なーんだ、だったらそんなに緊張しなくてもいいのにっ!」


 わかりやすくご機嫌笑顔になった佐奈さんだった。その笑顔はとても可愛らしくて、可愛らしくて・・・その先の感情はやっぱり私にはわからなかった。

 佐奈さんと出会ってからいろいろな経験をしてきた。その中で私はこの感情にずっと悩まされていた。このドキドキとモヤモヤが混ざりあったようなこの感情を私はまだしらない。


 でも。この活動を続けていたら、この感情の正体もいつかはわかるかもしれない。


「じゃあ、入ろっか」

「って、もう入るんですか・・・?」

「だからさっきも言ったじゃん、入ろっかって!」

「は、はい・・・じゃ、じゃあ入りましょうか」


 佐奈さんに押されて結局一緒に入ることになってしまった。別に嫌というわけでもないし、あの雰囲気的にも断ることはまずできなかったと思うが、心の準備というものがまだできていなくてですね・・・


「じゃあ、脱いじゃおうかー」

「あ、はい・・・」


 そういって佐奈さんは何の躊躇もなく脱ぎ始めてしまった。

 すごい・・・よくよく見ると佐奈さんって結構スタイル良いなあー。私みたいな中学生と間違えられるようなちんちくりんと違って、佐奈さんがTHE・大人といった感じだ。特に胸周りとか・・・一体何カップあるのだろうか。

 もはや見ているだけで、どきどきしてしまう。


 あ、下着も大人っぽくて――


「想乃ちゃん、黙ちゃってどうしちゃったの?というか、早く脱ぎなよ?」

「は、はい?!・・・そ、そうですね!今、脱ぎます!」


 び、びっくりした・・・


 佐奈さんのことをずっと見ていたことがバレたかと思っちゃった。でもバレてなかったぽい・・・?

 というか、脱ぎますとは言ったものの、人前で服を脱ぐことなんてもうずっとしてきてないわけで、緊張してしまっている自分がいる。


「脱がないなら・・・私が脱がしちゃおっかなー?」

「ぬ、脱ぎます・・・!今すぐ脱ぎますっ!」


 さ、さすがに人に脱がされるわけにはいかない。そっちのほうがなんかいやだ!・・・そう思い、私はそそくさと自分の服を脱ぎ・・・私と佐奈さんは裸になっていた。


「これが裸の付き合いってやつだねー、じゃあお風呂入ろっか!」

「そ、そうですね・・・!」


 たぶん今、私の顔は真っ赤になっていると思う。


 今、私の裸が見られているということに加えて、さっきまでは下着姿だった佐奈さんも今は裸になっているわけで・・・ものすごくえっちだ・・・

 でも、これはお風呂に入るだけであって、友人にこのような感情を持つのはおかしなこと・・・だと思う。


 だから、なるべく平常心でいようと思う。

 けど・・・やっぱり佐奈さんの裸を自分が見ていなくても、自分の裸を佐奈さんが見ているということを考えるとやっぱりどきどきしてしまう。


 まだお風呂に入ってもいないのに・・・私、このままどうなっちゃうんだろう――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る