第19話 お泊りオフ③

 2時間近く続いた怒涛の桃鉄配信も終わり、少し休憩モードに入った私たちは再び雑談を始めるのであった――


「やっぱりお泊りオフコラボの醍醐味と言えば・・・お風呂だよねー」

「え・・・?!そうなんですか」


[きたああああああああああああああああああああああ]

[神]

[語弊がwww]


「まあ、流石にBANとか怖いから配信では入らないかなー」


[けち]

[ちょっとだけでいいので!]

[たのんますよー]


「ま、感想は後日教えてあげなくもないけど」

「と、というか・・・私、誰かと一緒にお風呂入ったことなんてなくて」


 これは本当だ。私はさすがに家族とはあるが、修学旅行とか避けることのできないようなイベントごとを除くと、誰かと一緒にお風呂に入るなんてしたことはない。もちろん自分から進んで銭湯に行くこともない。

 いくら佐奈さんとはいえ、一緒にお風呂に入るのは少し抵抗感がある。なんというか・・・胸がドキドキして。ドキドキ・・・?

 少し緊張とは違う、何かまた別のなにか――


「まあまあ、せっかくだしねー?」

「ま、まあ・・・せっかくなら?」

「やったああああああああああああああ」


[きたあああああああああああああああああああああ]

[てえてえ]

[やべえ]


 私は許可を出してしまった。佐奈さんに対して、一緒にお風呂を入っていいと言ってしまった。半分無意識のうちに口走ってしまった。

 ど、どうしよう・・・


「あ、いや・・・その――」

「うわー、楽しみすぎるー」


 佐奈さんにこんな顔をされたら、断ることができなかった。

 だって今の佐奈さんの顔、凄く嬉しそうだった。こんな幸せそうな顔を、崩すことは私にはできなかった。

 ま、今日は佐奈さんに家の片付けとか料理とかをしてもらったわけで・・・そのお礼として、ということにしておこう。そうしよう・・・


「でも、今日はあれだねー。空乃ちゃんとたくさん話せて楽しかったよ」

「あ、はい。それは私もです・・・」


「こういうことを言うのはなんかあれだけどさ、つい先月までの空乃ちゃんは配信テンパっちゃってさ、私と初めて会ったときだってさ、凄くおびえてて小動物みたいだった。そんな空乃ちゃんが今では私とこんなに仲良くしてくれて、一人で配信できるようにまでなっちゃってさ?」

「それは桃さんのおかげで・・・」


 これだけは言える。私がちゃんと一人でも、まだ二回しかできてないけど。それでも一人で配信が再びできるようになれたのは佐奈さんが私に付き合ってくれたからだと。こんな私を変えてくれたからだと。


「でもさ、私としては少し複雑かも――」

「ど、どうして?」

「お母さんみたいに空乃ちゃんを見守ってきてさ、ここまで成長して・・・きっと空乃ちゃんは近いうちにもっと成長すると思う。でもさ、そうなると私はお役御免になっちゃうじゃん」


 そ、そんな――


「そんなことはありません!」

「そ、空乃ちゃん!?」

「わ、私は桃さんをお役御免なんて思ったりしません!私にとって、桃さんはた、大切なお友達なんです!」

「っ?!」


[うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお]

[神回きたああああああああああああああ]


「私は桃さんのことを利用しているとかそんなんじゃないんです。好きだから、桃さんだから。私はコラボをしているんです!私は佐奈さんのおかげでこの場に今立ててるんです。桃さんがあの時、オフで顔合わせしようと言ってくれなかったら、私は・・・私は、逃げていたかもしれません。だから、だから!絶対、絶対に私が桃さんをお役御免と思うことはありません・・・!」

「そ、空乃ちゃん・・・」

「は、はい・・・」


「空乃ちゃんってこんなに話せるんだね、あはははは」


 なぜか佐奈さんに笑われてしまった。


[やばい]

[空乃ちゃんってこんなに大声出せたの?!]

[マジで天使だろ]

[てえてえだあああ]


「私ってさ、思ったより重たい女なのかもしれないね。でも、空乃ちゃんの言葉を信じるよ」

「はい・・・!桃さんさえよければ、私はまた毎回コラボしたっていいんですよ?」

「そ、それは嬉しいけど・・・また逆戻りしちゃうし、せっかく一人で配信できるようになったんだから・・・ね?」

「そ、それはそうですよね」


[w]

[それはそう]


「ま、私の思いも吐き出しちゃったし、今日の配信は終わろっか?」

「ああ、はい。そうですね・・・!」


[うわあああああああああああああ]

[一生配信してくれええええ]


「じゃあ、今日の配信は終わります!お疲れ様でした!」

「お疲れさまでした・・・!」


[おつ]

[おつ]

[おつかれー]

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