第16話 おうちオフ

「そ、想乃ちゃん。これは・・・?」


 佐奈さんは私の部屋を見てそう言った。


「あ、いや。これは・・・あはは」


 私は笑うことしかできなかった。いつだかも言ったかもしれないが、私の部屋は散らかっている。よくインターネットとかで見る汚部屋とまではいかないかもしれないが、それでも汚い。


「想乃ちゃんのお部屋が汚いのはちょっと予想外だったかも・・・」

「な、なんかごめんなさい」


 とりあえず私は謝っておいた。


「想乃ちゃん!」

「は、はい・・・!」


「まずはこの部屋を掃除しましょうね」

「わかりました・・・」


 突如として始まってしまったお掃除会だったけど、私は別に物を捨てられない貧乏性とかではなく、単純に片付けるのが面倒になってやる気がでなかったような人間だったので、別に物を捨てるのにためらいなどはなく、案外片付け自体はすぐに終わったのであった。


「終わったねー」

「でもすぐに終わって良かったです。それに佐奈さんに片付けさせてしまって申し訳ないです」

「そう思うんだったら、これからはちゃんと掃除するようにしようね?」


 佐奈さんの笑顔から恐怖を感じた瞬間だった。


「でも、せっかく掃除したのに面白いものなかったなー」

「え、」

「いや、はは。まあ、こういう掃除するからには何か面白いもの出てくるかなってちょっと期待してたんだけどねー」


 どうやら佐奈さんには面白いものを期待されていたみたいだが、正直あまり私にはこれといった趣味もないので、散らかっていたものも大半が生活用品のゴミだった。

 最近VTuberになったことをきっかけに他のVTuberさんを見たり、いろんなゲームに興味を持ったりはしているが、元々はそういったものとも縁がなかったので、そういったグッズみたいなものは持っていなかった。


「想乃ちゃん、キッチン借りていい?」

「え、いいですけど・・・」


 そう言って佐奈さんはキッチンへと向かった。

 何をするのかと私は佐奈さんを見つめていたら、答えてくれた。


「今日、好きな鍋料理聞いたでしょ?」

「あ、はい」

「せっかくだから鍋パでもしようかなって思って」


 どうやら今日の夜ご飯はすき焼きへと決まったらしい。


「そういえば、想乃ちゃんって料理は・・・作ってなさそうね」

「あ、いや・・・まあ、そうですけど」


 勝手に決めつけられたが、実際そうなので何も言い返すことができなかった。というか、キッチンも他の部屋同様に片付いていなかったのだから、料理をしていないと考えるのが妥当といったところだろう。

 でも、決めつけはよくないですよ・・・!


「正直、想乃ちゃんがまともな生活を送っているのか不安になってきちゃったよ」

「そ、それは・・・」


 私は佐奈さんから目を背けてしまった。毎日スーパーやコンビニの総菜や冷凍食品などしか食べていない生活がまともであるはずがないのだ。


「この様子じゃ送ってなさそうだね」

「は、はい」

「これからは自分の食生活も見直すこと、いいね!」

「はい・・・」


 佐奈さんが私のお母さんみたいになってしまった。でも実際、指摘されていることは正しいことではあるので、多少は気を付けようと思いました。多少はね。


「とりあえず、今できることは終わりかな!」


 そういって、佐奈さんは私のもとにやってきた。


「とりあえずやることもないし、どうするー?」


 どうすると聞かれても正直この家には特に遊べるようなものもなく、あるとすればそれこそHontendo Swachくらいしかない。


「じゃあ、Swachで何か遊びますか・・・?」

「お、いいね!」

「っていっても、ゲームソフトはあんまりないんですけどね」


 そう言いながら私たちは手元にあるゲーム一覧を眺めながらとあるレースゲームに決めたのであった。


「モリオカートいいんじゃない?」


 モリオカートとは世界的にも有名なモリオブラザーズという2Dゲームのキャラクターを使用してレースをするゲームといったところだ。

 ちなみに私はデビューする際に、このゲームを事務所からSwachと一緒にもらっていた。おそらくいつかやることになると思うからと言われ、有名なマルチゲームはいくつかデビューする際にもらっていた。


「じゃあ、遊んじゃおっか?」

「は、はい・・・!」


 そんなこんなで、配信もすることなく二人っきりで、モリオカートをすることになったのであった。

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