第15話 ぷちバズ

 2回目のソロ配信を終えた今、私は佐奈さんと通話していた。


「さ、佐奈さん!私できましたよ・・・!」

『うん、見ていたから知ってるよ』


 佐奈さんはどこか照れている様子だったが、私のことを優しく包んでくれるかの如く答えてくれた。


『でもさ、あのどの話をするときも最終的に私の話にたどり着くのは良くないかも・・・ね?』


 佐奈さんが少し照れた様子で指摘してきた。


「い、いや。あの、ごめんなさい!でも意識してたとかはなくて・・・なんか自然と気が付いたら佐奈さんの話をしていて・・・なんでなんだろうって、とにかくごめんなさい!」

『あ、いや。謝らなくて大丈夫だよ!私的には少し嬉しかったというか・・・でも、視聴者さん的にはこうも毎回同じ話題に繋がっちゃうっていうのはあんまりよくないかもだから、今度からは気を付けたほうが良いかもね』

「そ、そうですね・・・ごめんなさい」

『だから、謝らなくていいから・・・ね?』

「・・・」


 佐奈さんは私に優しくしてくれるが、もしかしたら佐奈さんに迷惑をかけてしまった可能性だってある。なので私は謝ったのだが、結局は佐奈さんに負けてしまった。


『それに今、Pwitter上のファンとかの間ではちょっと話題になってるみたいだしね』

「そ、そうなんですか・・・?」

『うん。だから、何も謝るようなことはないんだよ』


 どういう風に話題になっているのかはちょっと私には分からないけど、それなら良かったのかもしれない。いや、それで良かったのか・・・?


 その後は佐奈さんとこれからの方針や雑談を数時間した後に眠りについた。




 翌日。朝起きると、マネージャーからのメッセージが届いていた。


マネージャー【如月さん!やりましたね!】


 私はマネージャーが何を言っているのか、よくわからなかったが自身のPwitterを開いたときにマネージャーが何のことを指していたのかがすぐに分かった。


「私のフォロワー数が1万人も増えてる・・・?」


 そう、そして同様にYouTubeのチャンネルも1万人の登録者が増えていた。そしてその登録者も今現在も増え続けていた。


 何が起きたのか、私にはわからなかったのだが、元をたどると原因らしき1本の切り抜きへとたどり着いた。


【切り抜き】何を話しても最終的に笹川桃の話にたどり着く如月空乃2回目のソロ配信【如月空乃/笹川桃/viglow】


 昨日の0時に投稿された動画だが、既に10万再生もされていた。

 Xでも同様の切り抜きがぷちバズりしているらしい。


「ど、どうしよう・・・」


 別にどうこうする必要はないとは思うが、だとしてもこの状況に頭を悩ませている中、私のもとに1件の連絡が届いた。


笹川桃【空乃ちゃん、バズってるじゃん!おめでとう!!!】


 いや、まあ・・・他人事みたいになっているけど、佐奈さんも当事者というか、関係者みたいな感じではあるんですけどね。

 そんな風に思っていたら、佐奈さんからまた連絡が届いた。


笹川桃【せっかくだし、この流れで今日コラボしちゃおうよ!】


 たしかに、バズっているのであればその流れに乗るというのはインターネットで活動する上では当たり前かもしれない。

 わかりましたというメッセージを送ったら、今日の夜ね。というメッセージと共に、好きな鍋料理を聞かれたのですき焼きと答えておきました。

 なんで聞かれたかはよくわからなかったけど、鍋料理と言われてとっさにでてきたのですき焼きだったのでそう答えておきました。

 この後、鍋料理って何があるのかとか調べてみたけど、『こんなのもあったな』とかなったりして意外と面白かったです。




 今日は休みだったりするのだが、特にやることもなく暇をしていたらピンポンとチャイムが部屋の中で鳴り響いた。


「あれ、何か通販で買い物とかしたっけ・・・」


 そんなことを考えながら、玄関を開けるとそこには見知った人物がいた。


「想乃ちゃん、来ちゃった!」


 そこにはそう、佐奈さんの姿があった。


「え、なんでここが・・・あ」


 たしかに、佐奈さんは以前会った際に私のことを家まで送ってくれたんだった。


「でも、なんで佐奈さんが私の家に・・・?」

「せっかくぷちバズりしたんだしさ、想乃ちゃんの家でオフコラボでもしちゃおうかなーって?」


 コラボしようと言ってまさか突然人の家でオフコラボするとは思わないじゃん!


「あ。ごめん、やっぱり突然家でオフコラボするとか嫌だったかな・・・?」


 上目遣いで佐奈さんにそんなことを言われてしまった。そんなことをされたら家にあげるしかないじゃん・・・?


「わ、わかりました。良いですよ」

「やったー!」


 そういって、私と佐奈さんのオフコラボが決まったのであった。


 そして私は忘れていた。

 この家の中のがどうなっているかを――

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