第10話 カップラーメン

 佐奈さんと顔合わせをしてから1日が経過した。

 今日は普通に大学の日だった。一応本業は学生であるので、そこはしっかりしていかなきゃなといったところだ。


 まあ、学生としての私はまだまだで昨日の私はどこへやら・・・といった感じで私はいつも通り、何も変わらなかった。

 それもそうだ。今になってわざわざ私に声をかける人はいないし、私に声をかける勇気ができたかというとそんなわけはない。大学に入りたてだったら別だったかもしれないが、もう大学3年目だ。今頃誰かに声をかけるなんていくらなんでもハードルが高すぎると感じた1日だった。


 そして今現在、私は既に家に着いていた。

 だからといって特にやることもなく・・・だったらこの散らばったモノたちの掃除とか、たまには自炊とかをすればいいのに、毎回気分が乗らなくて結局やらずじまいで終わってしまう。


 そんな感じで何をしようか考えていたが、一応VTuberになったのだから最近のトレンドとか喋りとかを研究するために他の人たちの動画や生放送を見ることにした。

 まずはせっかくなので、佐奈さんのチャンネルを見ることにした。


『今日食べたごはん?あー、今日はね。肉じゃがとほうれん草のおひたし作ってみたよ~』


[おー]

[うまそう]

[いいね]


『まあ、私は会社員のときから自炊はしてたしね。最近は空いてる時間も増えたわけだし、料理もちょっと凝ったものを作る日も増えたかなあ』


[食べてみたい]

[いいなあ]


「いいなあ。私も佐奈さんの料理食べていたいかも。というか、私まだごはん食べてなかったっけか・・・」


 そういって私は冷蔵庫の中を見てみた。


「なにもないなあ・・・」


 本当に冷蔵庫の中には調味料とか飲み物とかを除いたら、食べ物なんてものは何も入っていないに等しかった。


「そういえば、戸棚の中にカップラーメンまだ入ってたっけか・・・あった」


 ということで、私の今日の夕飯はカップラーメンになった。

 自炊をしている佐奈さんを見ていると、何というか虚しくなってきたので、別の人の動画を見ることにした。


「そうだな、これにしよ」


 次に開いた動画は私の事務所の先輩の歌ってみた動画だった。

 名前は星乃ほしのまい。viglowの中でも特に人気が高く、チャンネル登録者もviglow唯一の100万超えの登録者を誇っている。

 ちなみに私はというと2万人だ。一般的に見ればすごい数なのはわかるのだが、この箱の中では下から1番目の少なさだったりする。まあ、初配信の放送事故一歩手前みたいな配信が原因だと思う。とはいえ、昨日の佐奈ちゃんとのコラボで登録者は増加現行で、あとちょっとで3万に届きそうなのだ。

 とにかく先輩や同期たちの足を引っ張らないように私なりに頑張っていきたい。


「あ、タイマーなった・・・」


 そんなことを考えながら先輩の歌ってみたを聴いていたら、カップラーメン用にセットしていたタイマーが鳴った。先輩の歌ってみたは流石といった感じの歌声でとにかく凄かった。なんというか・・・本当に言葉にできない凄さがあった。感情に訴えてくる・・・みたいな感じ。


「私もこういう歌い方できるようになったらいいな」


 佐奈さんといつか歌うことになるその日までにはここまでとは言わないが、ある程度上手くなっておきたいなと思いながらも、私は手を動かしながらカップラーメンを食べ始めた。


 次はいろんなゲーム実況を漁ることにした。


「なるほど、こういうゲームとかいいのかな?」


 そういって見ていたのはおもちゃ工場を舞台としたホラーゲームだった。見ているとは言っても、もしかしたら自分がやる可能性もあるので、冒頭を少しだけ見ていた。


 次の配信の内容を考えていたところだから少し参考にしてみても良いかもしれない。どちらにせよ次の配信は何かしらのゲームをプレイする予定だった。というのも、初配信とゲリラコラボと続いて雑談系の配信になっているので、ここらでゲームを挟んだ方が良いと思っていたからだ。


「といっても、私普段はゲームとかしないんだけどね・・・」


 私のゲームの実力は定かではないが、雑談系の配信よりはマシになるのではないかと思う。正直雑談系の配信は、私の話題の種が少なすぎてあまり頻繁にはやれない。なので、今後はゲーム配信が必然と多くなっていく可能性がある。

 なので、少しゲーム慣れをさせておいたほうが良いのかもしれないな・・・


「明日の配信はこのゲームにしよう・・・」


 そういって、明日の配信でプレイするゲームを決めるのであった。

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