第8話 ゲリラ配信②
「そろそろ私たちだけで話すこともあまりなくなってきちゃったし、コメントでも読んでいこうかな?」
「・・・そうですね、そうしましょうか」
「そういうことだから、リスナーさんもじゃんじゃん気になることあったらコメントしてね~!」
佐奈さんがそういうとコメントの流れが一気に加速した。
こういうところ、見習っていかなきゃだなあ・・・
[ユニット名みたいなのとか決めないの?]
[さっきのお出かけの話もうちょっと詳しく教えて~~]
[お互いの第一印象とか教えて!]
「そうだな、まずは『ユニット名みたいなの決めないの?』かな」
「なるほどユニット名ですか・・・」
たしかに私たちはしばらくの間コラボをしていくことになるだろうから、ユニット名とかあったほうが良いのかもしれない。
「そうですね、でも私あんまりネーミングセンスないので・・・」
「えー?でも、私は空乃ちゃんと一緒に考えたいけどなあ~?」
「ま、まあ・・・じゃあ、少しは考えますよ」
あんな言われ方をされたら私は断れるわけがない。きっと佐奈さんもそんな私のことをわかってわざとああいう言い方をしたのだろう。
・・・悔しい!
「そうですね、でも普通に桃空とかで良いんじゃないんですかね?」
「う~ん、まあそうなるのかなあ?」
[そうだね]
[他に何かある?]
[空乃ちゃんの乃の部分を間に挟んで"桃の空"とか?]
「あー、でもコメントでもあったけど桃の空とかいいかもね!」
「たしかにこれなら他との被りも避けられそうですしね」
「じゃあ、これでいこうかな~」
[おお]
[#桃の空]
[いいね]
「それじゃあ、次の質問に移ろうかな」
[今後二人でやってみたいこととかある?]
[最近ハマっていることとか]
[普段は何してるの?]
「あー『今後二人でやってみたいこととかある?』ねえ」
「なるほど」
今後二人でやってみたいことか・・・
何かあるかな。いや、ないとかいうわけではなくて・・・おそらくいろんなことを二人でやっていくわけで、特出してこういうのをやりたいというと少し難しい気がする。
「そうだなー、ゲームとかは絶対どこかでやると思うし」
「そうですね・・・」
こういうのは普段やるような配信とは変わったものが良いだろう。
そうすると、定番なのは――
「あ、歌ってみたとかはどうですか・・・?」
「お、いいね!歌ってみた!」
[おお!]
[たしかに二人の歌みた聴きたいかも!]
[楽しみにしてます!]
コメントと佐奈さんの反応を見るに好感触だったようだ。
とはいえ、こういってしまったからには、いつかは歌ってみたの収録とかもしなくてはいけないだろう。まあ、私は歌うこと自体はそんなに嫌いではないのでそんなに問題はないかなと。
「そしたらあれだね!私たち2人が3Dになったときには、3Dライブとか!絶対しようね!」
「そ、そうですね・・・!」
[いいね]
[夢はおおきく!]
[3D期待]
どうやら佐奈さんはずいぶん先まで見ているようだった。3D・・・いつか私たちも3Dになれる日がくるのだろうか。センパイたちでも3Dになっている人はまだ半分ほどしかいないという話を以前聞いた。
なので、3期生の私たちが3Dになるのはきっとまだまだ先の話だろう。でも、3Dになって、ライブをするのも佐奈さんと一緒だったらできる気がする。私はそう考えてしまっていた。
「でも、そうかー。私たちが3Dになれるのっていつなんだろうね」
「まだまだ先なんじゃないですかね」
[今のペースだと早くて1年後とか?]
[どうだろうね]
[3Dのペースもほどほどに早くなってきてはいるからね]
「まあ、デビューして数日の私たちがもう3Dの話しても仕方ないか」
佐奈さんは笑いながら言った。まあ、私たちはデビューしたばかりだし、この2Dの体でやれることもまだまだたくさんあるだろう。
「それじゃ、次の質問いこうかー」
[普段は何してるのー?」
[viglowのオーディションを受けたきっかけ]
[好きなゲームとか]
「そうだね『普段何してるのー?』かー。空乃ちゃんが何してるかは私気になるかも」
「わ、私ですか?」
普段何しているか、か。そう言われてもちょっと困るかも。大学生だから以前まではバイトをしていたが、viglowに受かったときに、
『そういえば、VTuberになるならバイトしなくてもいいじゃん!』
っていってバイトもやめてしまった。
なので、最近の私はというと・・・
「家で動画見たりとか・・・?」
「へえー、どんな動画とか見てるの?」
「ど、動物系の・・・?」
[かわいい]
[おお]
[いいね]
動画を見ているといっても、そんなにいろんな動画は見ていない。とはいえ、VTuberになると決まったときからは多少そういった人たちの動画も見るようにはなったけど。
「こういう動画とか・・・」
そういって私は佐奈さんにネコちゃんがわちゃわちゃしている動画を見せる。
「・・・これはたしかにかわいいね」
「ですよね」
[なんだこの空間は]
[まるでviglowではないみたいな]
[天使だ・・・]
「あ、というかそろそろ日も落ちてくる時間になってきたし、配信もお開きって感じにしようかな」
「そうですね」
[えー]
[まあそうね]
[おつかれー]
たしかにここは事務所だし、遅くまでいたら迷惑もかけてしまうだろう。それに日が落ちてから帰らせるのは危ないとかそういう佐奈さんの配慮もきっとあるのだろう。
「じゃあ、お疲れ様ー!次回の配信でね!」
「お、お疲れ様でした・・・!」
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配信も終わり、お片付けしているときのことだった。
「良かったのにー、別に私一人で片付けするから帰ってよかったんだよ?」
「いや、流石にそこまでしてもらうわけには・・・」
「でも、もう日も落ちちゃったし、危ないよ?」
最初は佐奈さんが一人で片付けしてくれると言ってくれたのだが、流石にそれは申し訳なくてできなかった。
「でもさ、想乃ちゃん。良かったよ、配信」
「そ、そうですか・・・?」
「SNS上でも好評だったぽいし、このままいけばすぐに一人で配信できるようになっちゃうんじゃないかな?それもそれで少し悲しいけどね」
なんて佐奈さんは笑いながらいってくれた。実際のところ、今日の私はどうだったのだろうか、でも少なくとも初配信の私よりも成長できたんじゃないかな。
まあ、それもすべて佐奈さんのおかげ・・・なんだろうけどね。
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