第7話 ゲリラ配信①

 その後は何事もなく無事に事務所についた。

 よくよく考えたら、二度目の配信がゲリラコラボ配信はどうなのかなとか思ったけど、マネージャーさんが良いと言ってくれているから別に問題はないのだろう。たぶん。


「じゃあ、配信始めよっか?」

「あ、はい!」


 ちなみに配信の準備とかは全部佐奈さんがやってくれた。ちなみに配信は事務所からお借りしてきたパソコンで配信をすることになった。


「じゃあ、付けるよ?」


 佐奈さんにそう訊かれ、私は頷いた。

 こうやって配信が始まった。


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【雑談】ゲリラコラボ配信かもです?!【如月空乃/笹川桃/viglow】


「さてさて、始まりました!ゲリラコラボ配信です!」


[ゲリラコラボだと?!]

[如月ちゃん、大丈夫なのか?]


「え、えっと。viglow3期生の如月空乃です。今日はよろしくお願いします」

「同じく、viglow3期生の笹川桃です~!よろしくね!」


[まるで正反対ともとれる二人だけど]

[おもしろい組み合わせ]


「実はね~今回はね、空乃ちゃんとのオフコラボなんですよ」


[ふぁ?!]

[はやくもリアルで対面してるってこと!]

[というか空乃ちゃん呼び?!]


 そうか、今は配信中だから、空乃ちゃん呼びなのか・・・

 なら、私もリアルでは下の名前で呼ぶことになったし、それに合わせたほうが良いのかな・・・?


「さっきまで桃さんと一緒にお出かけしてきたんですよ。桃さん、本当にいい人です」

「そうだね、さっきまで私たち2人でおでかけしてきてたんだよね。あ、そうそう!空乃ちゃんね、事務所に帰ってくるまで私と手を握ってたんだよ~。いいでしょ?」

「っ?!」


[なんだと?!]

[こっちも桃さん呼びだと?!]

[一体どんな関係値なんだ・・・?]

[羨ましい・・・]

[てえてえだ]


 たしかに私は佐奈さんに手を握ってもらっていた。でもそれは、途中から。あのナンパして来た人を佐奈さんが追い払ってくれたあと。私は少し怖くなってしまい、事務所までは一緒に手を握ってきてもらったのだ。


「た、たしかにそうでしたけど・・・いや、あれはなんというか――」

「でもあの時の空乃ちゃん。すごく可愛かったよ?」

「っ?!」


[本当に握ってたんだ]

[なんててえてえなんだ・・・]

[?!]


 そういって佐奈さんが私のことを抱きしめてきた。

 不覚にも少しだけドキッとしてしまった私がいる。

 今日の朝、抱かれたときは抱かれても何と思うこともなかったのに、これは一体どういった心境の変化だろうか。まあ、そんなことはどうだっていいだろう。


「い、いやそんなこと言われても困ります!あ、あと私を抱きしめるのをやめてください!」

「え~、空乃ちゃん小さくて抱き心地が凄く良いんだけどなあ~」

「やめてください!」


[抱きしめているだと?!]

[っていうか空乃ちゃんってこんなに喋れる子だっけ?]

[ね、まるで初配信の時と比べると結構喋ってるね]

[これが笹川パワーか・・・]

[お姉さんの力ってすごいんだな]


「もー、仕方がないなあ~」


 そういって、佐奈さんはようやく私を抱くのをやめ、元の場所へと戻っていった。


「まあ、今回はさ。思い付きで始めたコラボだったからさ、特になにかやろうみたいなものもないし、どうしよっか?」

「そうですね・・・」

「あ、でもとりあえずだけは言っておいたほうが良いんじゃない?」


[ん?]

[なんのことかな]


 きっと、佐奈さんが言っているというのは、私が配信慣れするまでは佐奈さんと一緒に配信をするということだろう。


「まあ、単刀直入に言うと私と空乃ちゃんはしばらくの間一緒に配信すると思います」

「は、はい。そうですね・・・」


[おお!]

[ん?でもそれはどうなんだろう]

[まあ、いいんじゃない?]


「あ、いや。これは私が悪くて・・・まだ、私が配信慣れできてなくて、その・・・私が配信に慣れるまでは桃さんに付き合ってもらうようにしてもらうことになりました」

「いや、別に空乃ちゃんは悪くないよ!結局は私がやりたくてやってるだけだしさ!それに私は私で普通に配信はする予定だからね!」


[ああ、なるほど]

[たしかに、桃ちゃんと一緒にいるときの空乃ちゃんって前よりも安定してる気がするし]

[桃ちゃんは桃ちゃんで配信するなら安心かな]


「わ、私もなんとか配信慣れできるように頑張るので・・・」

「え~、でも私はずっとこのままでも大丈夫だけどね?」


[がんばってね!]

[たしかにこの光景をずっと見ているだけで幸せかも]

[てえてえ]


 佐奈さんは全力スマイルでそういってきた。

 なんというか――


「・・・ずるいです」

「ええ~、私からしたらそういう顔した空乃ちゃんも可愛くてずるいけどね!」


 そういって佐奈さんはまた私のことを抱いてきた。


 本当に、ずるいですね―――

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