第3話 顔合わせ

 あの配信を終えてから一晩が経った。

 よくインターネットインフルエンサーみたいな人とかはエゴサをするとかいう話を聞くが、私はなんて言われてるのか怖くて、とてもじゃないが調べることなんてできなかった。


 そして今日。マネージャーさんから一つの連絡が届いた。

マネージャー【如月さん。配信することに対して緊張しているようであれば、配信に慣れるまでは誰かと一緒に配信してみるのはどうでしょうか・・・?】


 いやいやいや・・・そうじゃないじゃん。たしかに配信に対して緊張というか、緊張だけど緊張という言葉では言い表せないくらいのそれはあるけど、人と話すとなるとそれはまた違う緊張があってですね・・・

 そもそもですよ。私、岡本想乃はですね、大学入学を期に引っ越して以来、本当に人とは必要最低限の言葉以外を交わしていないというか・・・

 つまるところもう2年以上はろくに人と会話をしていないんですよ。たしかにviglow事務所に入る際の面接で多少話したりはしましたけども、それ以降は基本文章上のやり取りがメインで、しかも私は例の3期生全員の顔合わせにも欠席してしまったわけで。

 とにかく、私にはもっと他のやり方があると伝えなければ・・・!


如月空乃【わかりました】


 ムリでした・・・!私みたいな陰キャコミュ障はそもそも断ることもできないんだった。とにかく私は諦めてマネージャーさんの連絡を待っているとすぐに返信が送られてきた。


マネージャー【良かったです!それでですね。如月さんさえよろしければ、同じ3期生の笹川桃ささかわ ももさんと一緒に配信してみてはどうでしょうか?彼女、如月さんに興味を持っていたので、ぜひよろしければと。】


 笹川桃さん、どんな人なんだろう。そもそも、他の人の初配信を何も見ていないので、正直同期のことを私は何もしらない。この機会だから全員分の初配信を確認しておくのも良いだろう――


 ――同期全員分の初配信を確認し終えた。その感想だけど、正直みんな面白かった。この人たちの中に私がいていいのかなとか思うほどには。

 それで肝心の笹川桃さんだけど、頼りになるお姉さんみたいなそんな感じの人だった。たしかにこの人だったら、ちょっと頼りがいあるし?みたいに思ってしまった。

 でも不思議だ。なんで笹川さんが私に興味を持ってくれたのか。なんで私をコラボ相手に選んだのか。


「そういえば、まだマネージャーさんに返信返してないっけ」


 そんなことを思い出した私はマネージャーさんに返信を返す。


如月空乃【わかりました。笹川さんにお願いしますと伝えておいてください。】


 返事はYesだ。

 何というか、この人だったら私を導いてくれる。何となくそんな気がしたんだ。


マネージャー【笹川さんに連絡を取ったところ、近いうちに顔合わせしておきたいとのことだったので、そこら辺のやり取りは笹川さんと直接してもらえるとありがたいです!】


 マネージャーさんからの連絡だ。

 顔合わせ・・・たぶん事前に通話をするということだろう。少しハードルが高いけど、配信直前に初めて話すなんてよりも数倍はいいと思う。でも、緊張することに変わりはなくて――


笹川桃【如月さん、こんにちは!マネージャーさんから話は通してもらったと思うんだけど、今度顔合わせしないかな?で!】


???


 ごめん、見間違えか何かかな。嘘でしょ、こういう顔合わせって普通にさ、Piscordの通話でとかじゃないの?

 私は目を疑ったけど、どうやら見間違えではなかったみたい。なんだろう、陽キャだ。私とは真逆。本当に大丈夫なのだろうか。


如月空乃【え、えっと。こういう顔合わせって普通通話とかじゃないんですか?】


笹川桃【普通はそうだけどさ、如月さん可愛かったし実際に会ってみたいなって思ったのと、実際にあった方がすぐ打ち解けられるでしょ?】


 なんだろう、流石は陽の方だなと関心を受けた。

 私には絶対ない考えだなあと。でも、たしかに一理あるのかもなとか思ったり。


如月空乃【わかりました。いつ行けばいいでしょうか?】


笹川桃【明日とかは?】


???


 明日・・・?

 もうなんだろう、凄すぎてついていけないや。

 でも、実際明日は日曜日で都合は良い。どうせ私は大学がない日は基本家にいるだけで、外出もしないし。


如月空乃【わかりました。明日、事務所で】


笹川桃【やったあ!楽しみだなあ~~】


「本当に、どうしたらいいんだろう・・・」


 手土産とか何か持って行ったほうがいいのかなとか、そもそもデビューしてから事務所に行くのは初めてなんだよなとかそんなことを思いながらも、眠りにつく私なのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る