第2話 初配信
春。そんなこんなで私の大学生活は3年目を迎えた。それと同時にVTuberのデビューものこり数日後まで迫っていた。結局同期との顔合わせもできずにここまで来てしまった。最初は配信なんてと余裕をこいていた私だが、今になって緊張し始めてきてしまった。
とはいえ、初配信から逃げることができるわけはなく・・・というか、既にデビューの告知もされており、昨日はPwitterで初ポストもしたばかりだ。当たり前だが、ここまできてやっぱりなしでとかは通用するはずもない。というか、そもそもそんなことを言う勇気も元からないわけで・・・。
そして、初配信の日を迎えました。
結局どうしたらこの状況を打開できるかとかそんなくだらないことばかり考えていたら当日を迎えてしまいました。手元にあるのはマネージャーさんからいただいた今日の生放送の進行手順。初配信の枠の時間は30分。
でも私は知っている、30分という時間の長さが状況下によって上下するということを。
私の手元にある進行手順を見て私は後悔する。こんなことなら、ちゃんと自分で台本やらなんやらを用意しておけばよかったと。
でもやるしかないと。ここまで来たらやってやろうと。
あ、ちなみに他の同期の配信は怖くて見れませんでした・・・
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【初配信】どうも、如月空乃です。【如月空乃 /viglow】
ついに配信が始まってしまいました。
そんなことよりも同接数が3,000超えは聞いていないです。だって3,000ってどういうことですか。規模感がもはやわかりません。
誰ですか、あの時パソコンの前だけで喋るなら余裕だと言っていた人は・・・。
[まだ?]
[遅いね]
[手間取ってるのかな?]
「あ、そろそろ始めないとまずいかも・・・」
そうして私、岡本想乃。いや、如月空乃は意を決してマイクをオンにして、配信画面を切り替える。
[お!]
[きた!]
「ど、どうも~」
第一声はとても今すぐにでも消え入りそうな、そんな声だった。
「は、はじめまして。
[かわいい]
[ちょっと緊張してる?]
「あ、あの・・・えっとまずは・・・ってあれ、見つからない?!」
[どうしたの?]
[?]
[なにかトラブルかな?]
ま、まずい。先日スタッフさんからもらった資料が見つからない。やっぱりちゃんと準備しておくべきだったんだ。あぁ・・・だから私はダメなんだ。いつもこんなんばっかりだよ。
やっぱり私にはまだ早かったんだ。
「ど、どうしよう・・・」
[泣いてる?]
[な、なにがあったんだ?!]
焦りすぎてもうどうしたらいいかわからなくなってしまった私はもう半泣き状態だった。
そんな中、マネージャーからPiscordに連絡が届いた。
【配信用の資料が見つからないようであればこちらのファイルを今からダウンロードして、配信ソフトに取り込んでください!】
「マネージャーさん・・・!」
[おお]
[かわいい]
もうこれはマネージャーさんじゃなくて、マネージャー様だ。マネージャーさんには私の心でも読めるのだろうか。そんなことを思いながら、私はもらった画像を配信ソフトに取り込み、改めて配信を仕切りなおす。
ちなみに既に配信開始から5分以上経過している。もはや軽い放送事故である。
「それでは、気を取り直して!わ、私、如月空乃の初配信を行いましゅ!」
[かわいい]
[大丈夫か~]
やっぱりダメかもしれない。
「では、まずは私の自己紹介からしていきますね――」
なんだ、意外といけるじゃん。
自己紹介から配信タグ決めまでは何とかなっていた。それもこれもマネージャーさんからもらった進行手順のおかげだった。
そしてそんな進行手順だけど、次の項目にはこう書いてあった。
・リスナーさんとおしゃべり!
やっぱり、台本とかを用意しておくべきだったと。またしても後悔した。
「え、えっと・・・こ、ここからはリスナーさんとおしゃべりということで、質問とかに答えていければなとか、そんな感じでやっていければなとか思います――」
[お、おお]
[急に早口]
[順調に見えたんだけどなあ]
そんな感じでこの後もグダったりしたものの何とか初配信は終えることができました。
正直もう配信はしたくないです。
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