配信くらい余裕だとぬかしてVTuberになってみたけど全然余裕じゃないんですが?!

amega

第1話 はじまり

 私、岡本想乃おかもと そのはいわゆる陰キャだ、それもかなりのだ。ついでに言えば、私はよく中学生くらいに間違われるような容姿をしているらしい。

 そのため、たまに警察の人に話しかけられることもあり、これがコミュ障の私にとっては困るのだ。なんて言ったらいいのか分からず逃げ出してしまったこともある。


 私はそうやって20年間生きてきた。もちろん友達も一人も居ない。大学生になったら友達が一人はできると思っていた。

 でも、そんな思いもむなしく・・・ぼっち生活は変わらなかった。そもそも「中学こそは!」「高校こそは!」と言ってきた人間が「大学こそは!」なんて言ったところで結果はお察しだろう。

 これじゃあ、何のために東京まで出てきたんだかわからないなあ・・・なんてそんなことを思っていた。


 でも、そんな私を変える出来事が訪れた。『VTuberオーディション』だ。VTuberという存在自体は存じ上げてはいたが、実際にどのようなものなのかということまではここ数週間前まではよく知らなかった。

 調べてみるとこのオーディションは、VTuber事務所『viglow』の3期生オーディションだったらしい。『viglow』はVTuber事務所の中でもそこそこでかいらしく、今注目のVTuber事務所の一つみたいだ。


 とにかく、インターネットで偶然このオーディションの記事を見つけたとき、興味を持った。これなら私でもできるかもしれないと。

 私は人と対面で話すのが苦手なだけなんだ。そうに違いない。そうだ、絶対そうだと。パソコンの前でただ喋るくらい、私でもできると。あわよくば、これを通して陰キャな自分も直せるかもしれないと。

 そう思い、オーディションに申し込んだ。でもオーディションというだけあって、実際に動画を送ったりしなければいけないというのは何も考えていなかった。

 でもあの時の私は調子に乗っていたのだ。それくらい私にもできるわ、なんてそんなことを思って。でも、そのあとに待ち構えている面接のことを私は何も考えていなかったのだ。


「お、お、岡本、岡本想乃です!に、20歳、現在大学2年、東京都在住でう!」


 噛んでしまった。だいぶキョドってしまった。それはそうだろう。ただでさえ、コミュ障で陰キャな私が大人4人に囲まれ、面接をしなければいけないというのだから。とにかく怖かった、その一言に尽きる。


 その後の質問もこんな感じだった。特技はなんですか、と聞かれた際には、

『と、特技は・・・子供のころ金魚すくいだけは得意でしゅた!』と。噛んでしまっただけでなく、これは0点の回答だろう。

 なんだよ、金魚すくいって。私はもう立派な大学生。成人までしてるんだ、いい歳したやつが何を言ってるんだと。

 もちろん、この時点で私はもうムリなんだろうなと悟っていた。だからこそ半分ヤケクソ気味で答えていた自分もいたのだ。


 でも帰ってきたメールは自分が想像していたものとは異なる結果であった。『合格です』と。そう書かれていた。自分ではなんで通ったのかよく分からなかった。でも受かったには受かったのだ。とにかくラッキーだったということにしておこう。


 そうして私はこの冬、VTuber事務所『viglow』の3期生オーディションに受かったのであった。

 ここからは怒涛の毎日であった。まずは自身のモデル決めから始まり。名前や活動方針、初配信で行う内容。その他諸々といろんなことを決めていった。

 幸いそういった話し合いはオンライン上で基本は行っていた。人と対面で話すと緊張してしまう私にとってはありがたい話であった。

 とはいっても、かなり緊張していたと思う。かなりキョドってしまい迷惑をかけてしまったなと反省もしている。


 そんな中ちょっとした事件が起こった。それは3期生全員の顔合わせとして行われる通話がある日のことだった。そう私はその日に風邪を引いてしまったのだ。マネージャーに連絡をし欠席することを伝えたのだったが、これにより他の3期生と私の間で既に関係値に差が生れてしまったのである。

 これは大問題である。現実で例えるのならば、始業式に欠席してしまい翌日に登校すると既にグループができていて必然的にぼっちなってしまうあれだ。

 陰キャな自分を治すためにVTuberになったはずなのに・・・既に私のVTuberライフは終わってしまったのかもしれない。


 3期生は5人。だれか一人でも、一人でも仲良くなれたらなと。そう希望を抱き、その日、熱を持った私は眠りにつくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る