番外 かわいいひと ~蒼生side~

腕の中にあった体が、その温もりが消えている。

(侑李くん、起きた?)

でも、近くで気配がする。

「…蒼生の方がかっこいい。それに、ずっと優しい…」

すぐそばで、侑李くんの声がする。

(なんか、褒めてられる…?)

今すぐ起きて、なんのことだか聞きたいのに、まだ、体が動かせず、目も開けられない。

「ふふ、しあわせ…」

侑李くんの可愛い声。

(俺もしあわせ…侑李くん)

「あ、そうだ」

弾んだ声がして、侑李くんの気配が離れていく。それが少し寂しい…。

それからまた少し微睡んで、ようやく覚醒してくる。近くに感じる気配に目を開けると、居間のテーブルに、侑李くんがトーストとハムエッグを並べているところだった。

「…あ、起きた?ふふ、おはよ。朝御飯、もうできてるよ」

はにかんで、少し頬を赤くしている侑李くん。立ち上がって、キッチンの方に歩いていく。

昨夜、ほとんど気を失うみたいに、侑李くんは眠ってしまった。だから俺が体を拭いて、Tシャツを着せた。ちなみに、侑李くんのではなく、俺が昨日着ていたTシャツだ。「彼Tシャツ」で、キッチンと居間を行き来する侑李くんは、

(想像の何倍も良い…)

あまりにも可愛くて、起き上がって、その姿を堪能する。

「蒼生~、コーヒーでいい?」

「う、うん」

そう言えばさっき、

(俺のこと「かっこいい」って言ってなかった?)

その件は、朝御飯食べながらゆっくり聞こうと思う。

だけど目の前の恋人が可愛すぎて、

(近付いたら、冷静じゃいられないかも…)

Tシャツの下から伸びる、ほっそりした足をチラチラ見ながら、俺はそわそわするのを止められなかった。


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