③初仕事

昼休みの終わりが近付く。周囲の学生たちが少しずつ減っていく。

俺も蒼生も、テーブルの上を片付け始めた。

「で、おじさんたち、いつ向こうに行くの?」

「あ、もうすでに。四日…五日前かな?」

「そうなの?!え、じゃ、その間、ごはんは?」

「学食とかコンビニだな。」

「…わかった、今日から行く」

新山兄弟が、いい加減な食生活を送っていると分かり、俺は今日から夕飯を作ることに決めた

「え?ありがたいけど…。予定とか大丈夫?」

「予定?陰キャに、つぶれて困る予定なんてないよ」

「は?…陰キャって、誰が?侑李が?」

「…そうだけど?」

「は?お前のどこが陰キャなの?!」

「どこがって…」

「侑李さぁ…。『陰キャ』の使い方間違ってるだろ、それ」

朱夏は「やれやれ」と大袈裟にため息をついた。

(「間違ってるぞ」って…)

顔も普通、体格も平均的。強いて特徴をあげるなら「色白」とよく言われることくらい。

(それだって「顔色が悪い」ってことだろ?)髪をいじったりもしないし、「おしゃれな服装」とかも分からない。見た目は地味だと思う。趣味と言えば料理と読書。運動はあまり得意じゃないから、買い出しとか、バイト以外は家で過ごすことが多い。

(勉強はできる方かな、って思うけど。ガリ勉だし、陰キャでなくてなんだ?)

「いやいや、侑李さぁ…。ま、いいや…」

朱夏は、まだ何か言いたそうだったけど、止めた。俺は話題を戻す。

「?朱夏、午後、時間ある?」

「ん?部活の前なら」

「じゃ、買い出し付き合って。夕飯の」

「おぉ?おっけ、じゃ、次の講義の後な」

「よろしく。あ、俺こっちだから」

「うん、じゃ、帰りにな」

昼休みが終わる。俺たちは学食をあとにし、それぞれの講義室に向かった。

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