第19話 風のように気ままに



 「あっはっは!ごめん、ごめん」

 「ごめんじゃないでしょう!?本当に死ぬかと思ったんですからね!」

 「あっはっは」

 「笑ってんじゃねぇよ!?」



 そんなに怒んなってメルティ、シワが出来ちゃうぞ。



 「そうだ、エリシアどれくらい短縮出来たの?」

 「えぇ…信じられませんが。後一日もあれば王都に着く距離かと思います」

 「んじゃ、出発〜!」



 旅は行く間は楽しいけど帰りはつまんないからなぁ〜。

 早く帰れるなら帰るべきだ。

 まっ、俺行きは居ないんですけど…。



 「本当に…凄まじいですねヨシト殿は…」

 「…ん?」

 「もし、初めからヨシト殿が居れば…皆は死なずに済んだのでしょうか」

 「絶対とは言わないぞ?でも…まぁ、今よりは多かったろうな」

 「……………。」



 だから、直ぐ泣くなって。



 「涙拭いて前向け」

 「…グスッ……そうします」



 そうそう、美人は笑ったら更に美人さんだ。

 



 「お、おい…」

 「……なんだ糞トカゲ、今感動的なシーンだぞ」

 「わざとだな…?わざと俺を放っといたな!?」



 当たり前じゃん、だって龍だし。



 「あっ、そうだ糞トカゲ」

 「は!もうお前の話を聞かん」

 「お前、メルティが死んだらお前も死ぬから気を付けろよ」

 「ふん、それがどうし……た?」



 あっはっは、青褪めてらぁ。

 おもろー、もっと無様な姿を見せておくれ偉大な龍よ(笑)



 「どういう事だ!?は、はぁ!?」

 「全て捧げるって言っただろうが、多分メルティが寿命で死なないと契約は解かれないぞ精々頑張れよ~」

 「ぶ、ぶぎょぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!?」



 どういう感情の表現だよ、その叫びわ。









 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 




 「お?見えてきたんじゃね」




 目線の先に巨大な城壁が見える。

 ふぇ~何処の世界も造りは大体似るんだなぁ。




 「か、帰ってきた…うぇぇぇえん!?帰ってこれましたよぉぉぉぉお!リオくぅぅぅうん!?」

 「ええい!?引っ付くな人間、危ないだろう!?」




 「そんな邪険にすんなよ、お前の主だぞ?あ・る・じ〜」

 



 「ぶぎょぅぅぅぅぅぅぅぅう!?」




 だから、本当に何なんだよその感情わ。

 まぁ良いや、ん?あらメルティさん。



 「……………。」



 泣くか…?泣くのか〜?




 「何しとるんじゃ」

 「うへぇあ??い、いや、何も〜?」

 「どうせ良からぬ事を考えていたんじゃろぅ?」

 「いや、エリシアが泣くか泣かないか自分の中で賭けてた」

 「外道かお主…」



 そんな言わんでも〜。




 「ほれ、もう直ぐ着く……大人しくしとれよ?」

 「あっはっは、任してよ爺さん」

 「はぁ……」



 そんなに深い溜息吐かないでよ失礼な爺さんだ!









 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇












 「良いねぇ王族用の出入り口」

 「仮にも王命ですから、入国で手間取っては元も子もないので」



 確かに。



 「魔境探索部隊、隊長のエリシア・ワーテルだ」

 「え、えぇ!?ま、魔境探索部隊……き、帰還出来たのですか!?」

 「あぁ、無事に任務は果たした。通れるか?」

 「す、直ぐに手配致します!?少々お待ち下さい!」




 すげぇーこういうの見るとエリシアって偉いんだなって再確認するよね〜。

 ほんで、そっから色々手続きを終えて馬車に乗って移動だってさ。

 



















 ガラガラ……




 「乗り心地…良いなこれ」

 「王族が乗るかも知れんからのぅ。馬車一つとっても最高級品じゃ」

 「つーか……狭い!狭ぇよ爺さん!?」

 「仕方無かろう?儂の身体ではこうなることは明白じゃ」

 「嫌だぁ!?爺さん臭ぇ!あっちのエリシア達乗ってる方乗りたい!」

 「諦めるんじゃ、あと…儂、そんなに爺さん臭い?もしかしてエリシアもそう思っとるの?」



 知らねぇよメンヘラ爺ぃ!









 暫く馬車に揺られながら王城に向かう。

 てか、面白い場所に王都あんのね。



 「魔境との距離近いのに大丈夫なのか?」

 「ぬ?逆じゃ、魔境であれば踏み入らぬ限り問題は無い…それにのぅ、魔境側からは他国から攻められぬ保証があるからのぅ」



 あっ、へーそういう感じね。

 



 「ほれ、着くぞ」

 「ん?お、おぉ……すげぇ…」

 「良い忘れておったなヨシトよ。ようこそオルベス王国へ!」






 やっぱ城はいつ見てもテンション上がるな。

 うん、オーソドックス白い城は趣きがあるなぁ…。







 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 「かぁ〜狭かったぜ」

 


 マジ、二度と爺さんとは馬車に乗らねぇ。



 「も!」

 「ふ~!」


 

 「ん?なんで精霊が?呼んでないよな俺…」

 「す、すみません!?ヨシト殿っ…つ、連れて来てしまいました…可愛くて…つぃ…」

 「ふ~ん、まっ、良いんじゃない?こいつ等もエリシアと居て楽しそうだし。上手く行けば精霊魔法使えるかもな」

 「え!?せ、精霊魔法ですか…?」

 「ぶっちゃけ精霊と仲良くなれば誰でも使えるぞ」



 あ、それと…。



 「あの糞トカゲはどう説明するんだ?」

 「帰りで保護した孤児という事にしようかと、問題が無ければメルティが居た孤児院に預ける考えです」

 「良いねぇ~」




 ん〜後はなんか……そうだな。



 「エリシア」

 「は、はい?なんでしょうか」

 「あんま抱え過ぎんなよ。たまには爺さんにも甘えてやれ」

 「そ、そんな!甘えるなんて…」

 「もっと周りを頼れって事だよ。一人じゃどうにもなんねぇ事なんて世の中腐る程あるからな」



 一応、これ経験談ね。

 まじ、頼れる奴には頼っとけ潰れちゃうぞ。




 「はははっ、忠告感謝します!」

 「本当にどうにもならなくなったら……あー、近くに居たら助けてやる。今回みたいにな?」

 「は、はぁ…まるで別れの挨拶みたいですね」




 あっはっは!




 「エリシア隊長、早くお城に入りましょう!?もう身体ベタベタで凄い臭いなんです!早くお風呂に入りたいですぅ!?」

 「…あっ、あぁ、そうだな」



 「メルティ、風呂も良いが先ず最優先は王へ報告じゃぞ?」

 「何ですかモゴ爺!?モゴ爺だって臭いですよ!爺さん臭いです!」

 「あがっ!?」



 「俺はこれから…どうなるんだ…」

 「リオ君も一緒にお風呂に入りましょう!?お姉ちゃんが洗ってあげます〜」

 「ぬわぁぁ!?放せぇぇぇ!!?」










 「全く……騒がしいな。!…すみませんヨシト殿、ヨシト殿も御一緒に城へ今回の事を王に伝えればもしかすれば貴族の位も………貰え……………」

 






 ……………………………。





 「よ、ヨシト殿!何処ですか!?」





 ……………………………。





 「ま、またふざけてるんですね!私もそう何度も驚かされませんよ………ヨシト殿…?」

 




 ……………………………。




 「お、怒りますよ!早く出てきて……」

 「全く、最後まで自由な奴じゃ」

 「モゴル!?ヨシト殿が…何処にも…居ないんだ」

 「なぁに…別に死んだ訳ではなかろぅ?また…いつか会えるじゃろ」

 「だって、こんなっ…別れの言葉も…」





 「も~?」

 「ふ~?」



 「あ、ごめんねっ!なんでもないよ」

 「エリシア…姫様が待っておる」

 「……あぁ…わかった。ヨシト殿、また何処かで」











 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇















 「おぅ、また会おうぜ。エリシア」




 建物の屋上から城に入るエリシア達を見送る。

 まだ、転生して何日も経って無いのに面白い奴等に会えたな。

 あ~楽しい…本当に楽しい。




 「ウィル・ロンド風と踊る




 魔法を唱え、建物の屋根から屋根へ飛び移りながら移動する。

 あぁ…ほんとっ、気ままにってのは良いなぁ。













 「次は何をしようかな?」





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