第18話 底知れぬ実力



 「お~飛んでった、飛んでった」



 一応、魔法で空気抵抗やら何やらを和らげてるけど。

 あのままじゃ、爺さん以外は地面に叩き付けられて死ぬな。



 「さてとっ……俺もさっさと行きますかぁ〜」




 今更感はあるが…今回の俺の身体、11回目の転生体の限界を測るのにも丁度いい。




 「ほんとっ、少し戦闘しただけでも結構良いっぽいんだよね」



 当然だが。



 俺が過去転生した肉体は全て特徴が違った。

 肉体的にも、魔力的にもな。



 「まずは…普通に走ってみるか」




 タッ タッ タッ




 暫く抜きながら走って………加速!




 ドンッッッッ!




 おぉ、早い早い。

 身体強化しないでこれか。




 森の中を走り、時には木の枝を掴みながら移動する。



 ダダダダッ! ガッ! ヒュンッ!



 うん、素の身体能力は過去トップ。




 それじゃあ次は魔力。





 「ウィル・ロンド風と踊る



 足と地面の間に空気の層が生まれる。

 う~ん、流石俺の十八番の魔法、魔力消費もほぼ無いし使いやす〜。





 って…コレじゃ無い。

 つい癖で使いやすい魔法使っちゃった。



 もっと魔力を使うやつを……。




 「ウィルド・テペル烈風が貫く



 

 風の魔力が手に集まり、回転を加えて真っ直ぐに放たれる。




 ブォォォォォォォォオン!



 

 放たれた範囲は、まるで暴風が吹き荒れた様に何もかもを吹き飛ばす。

 うげぇ…マジか、こんなに威力あったっけ?




 魔法が通り過ぎた後は綺麗な一本道が出来上がる。

 



 まっ、丁度いい。




 「ルーク・ラウズ光が如く




 この魔法は俺が使える中で最速の移動系魔法だ。

 効果は………五体を光と化して唯、真っ直ぐに突き進む。




 キィィィィィィィィィィィィィン!




 実際に光速まではいかないんだけどね〜精々、音速を越える位かな?

 あと弱点は曲がれない、一度発動すると中断が出来ない一定の距離を絶対に移動しないといけなくなる。

 身体に掛かる負担も半端ない。 

 一度の使用で身体中の筋肉が断裂しそうになる。

 この時の痛みが痛いのなんの…ちょっと癖になる感じだ。




 「あっはっは、マジかぁ〜全然痛くな〜い」




 本来なら、そろそろ痛みが現れるんだけど……うん!

 全然、大丈夫そう!

 やっべ最高だなこりゃ。



 キィィィィィ………………



 効果が切れそうだ、じゃあ……もう一回だ。



 「ルーク・ラウズ光が如く



 再び光と化す。




 二回目の連続使用もノーリスク。

 過去の転生は無理矢理回復して使ってたのになぁ…。

 はぁ…ズルいなぁ。

 魔力消費も全然問題ない…。





 「魔力も過去トップか…」



 

 ん?空に何か………あ、エリシア達だ。

 おかしいな、後一回は魔法使わないと追い付けない計算だったんだけど…。

 さっきもそうだけど魔法の威力、効果も上がってるな。



 「ここまで追い付いたならウィル・ロンド風と踊る、これで十分かな」















 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇












 「ぎゃぁぁぁぁぁあ!?死んじゃいまずぅぅぅぅぅ!?これ死んじゃいまずっでぇぇぇぇえ!?」



 「なぁに心配せんでも、えぇじゃろう」



 「モゴ爺ぃぃぃ!なんでおちついてるんでずがぁぁぁぁぁ!?わばばばばばば!?」




 「なんの考えも無しにヨシトがこんな事をするかのぅ?」




 「やるか、やらないかならやる方でしょぅぅうううう!?」





 「…………………むぅ…」




 「むぅ…じゃねぇよ!?筋肉爺ぃぃぃぃ!!!!」


























 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 


 「よし!皆楽しんでんじゃん!」



 気持ちいいよな、大空を飛ぶのって……いや、落ちるか。

 さて、メルティの叫び声も聞こえて来たし。





 「っしゃ!こぉぉぉぉぉぉぉい!!!!」




 ここは、彼等に頼もう!




 「風の精霊の皆様!お願いしまーす!」



 「「「「「「「ふ~!」」」」」」」



 姿は地の精霊と大差無いけど、1つだけ違う特徴がある。

 背中にちっさい、蝶みたいな羽が生えてる。

 よしよし、集まったな。




 「落としたら負けだぞ〜?上手くキャッチしてくれ」




 「「「「「「「「「ふ~」」」」」」」」」




 風の精霊が皆に向かって跳び上がる。

 ある程度近付くと、風の魔法で落ちる速度を少しずつ和らげる。



 やっぱり精霊は凄いなぁ〜感覚で魔法を使うから強弱とか調整完璧だし自然だ。

 流石精霊先輩!勉強になります!




 「ぎゃあああじぬぅ!?私、処女のままでじにだぐなぁぁぁぁあい!?カッコイイ王子様と結婚して何不自由なく余生を過ごしたぁぁぁぁぁい!?」

 「死の間際って人の本性が出るって聞くけど、欲塗れだなメルティ」

 「……は!?ここは!?」

 「地面だぞ〜ありがたい、ありがたい大地の恩恵だぞ〜」




 よし、皆無事に降りれたな。




 「ガッハッハ!面白かったのぅ〜!」

 「爺さん分かる!?この面白さ分かってくれる!?」

 「玉がヒュンッとなる感覚がどうも病み付きになるわい」

 「さっすが爺さん!」




 理解者を得られて俺は嬉しいよ。





 「こ、この子も可愛い…えへ、えへへ」

 「も~」

 「ふ~!」




 エリシアは……いつの間に風の精霊捕まえたんだ?

 地の精霊と同じ様に抱っこしてやがる!?





 「……? あれ!?居ない!?」

 「なんじゃメルティ、大きな声を出して」

 「リオ君が居ないんです!?後ろの方に居た筈なのに!?」




 「あぁ、糞トカゲなら」



 ほら、来たぞ。




 「落ちてくるぞ」






 ドォォン!ズザザザザザザザザ〜! 




 糞トカゲは顔面から地面に落ちた。

 あっはっは、気分が良い!





 「ギャァァァァァァァ!?リオ君!?なんでリオ君だけ助けてくれないんですか!?」

 「ぐぇ!?首絞まってるメルティ!?」

 「この龍殺しぃぃ!」

 「だ、大丈夫だって!」

 「大丈夫な訳ないでしょう!?あんな高さから落ちて無事な…」






 「ぬぉぉぉぉぉぉ痛いぃぃぃぃ顔がァァァあ痛ひぃぃぃぃぃぃ!!?」




 「ぶ、無事そう…」




 龍ならあれ位大丈夫だって…。

 まっ、すっごい痛いだろうけどね!




 でも、あれだなぁ〜。

 思いの外、今回の転生した身体が凄過ぎて底が見えなかったな。

 

 

 

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