第17話 覚悟は良いか?


 「王にどう説明すれば……はぁ…」



 頭を抱えるエリシア…う~ん、がんば。



 まっエリシアには悪いが、こればかりは俺でもどうにもならん。

 がんばり給えよ。




 「色々、あったけど糞トカゲ」

 「ん?なんだ、気安く話し掛けるな」



 ゴチッ!



 「痛ぁい!?」

 「お前、この森に長いこと居たのか?」

 「ふん!ここは俺の巣だぞ居るに決まってるだろう」

 「じゃあ女神の涙って名前の薬草知ってるか?」

 「知らん」



 あっそ、だと思った。

 聞いた俺が馬鹿だったよ。



 「女神の涙というものは知らん…だが、食べれば傷が治る草はあったぞ」

 「あっ、それだ。何処にある?」

 「もう少し向こうに生えてた筈だぞ?」



 ふーん、だってさエリシア。



 「向こうだってさ。今のルートだと少しズレそうだぞ」

 「…………………。」

 「お~い聞いてんのか〜エリシアー」

 「あ……あるのですか?そこに…え?」




 

 


 





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 「こんな……簡単に……」



 暫く森の中を進むと…そこに一際目立つ野草が生えていた。

 


 「山吹色だなぁ、これか糞トカゲ」

 「そうだ、食べたら大体の傷は癒えるぞ」

 「龍の傷を癒す程の薬草なら、ほぼ間違いないだろ」



 俺と糞トカゲが話してる間にも、エリシアと他数名の騎士が何やら資料と見比べながら考え込んでる。




 「……間違いない…これが…女神の涙…」



 エリシアは女神の涙を大事そうに皮袋に入れる。

 


 「よかったなエリシア、これでお姫様も助かるんじゃないか?」

 「えぇ……ヨシト殿…そうですね…」



 歯切れの悪い返事、どした?話し聞こか?



 「こんなにも…あっさり手に入るとは…」

 「人生そんなもんだぞ?」

 「そうなのですね……ははっ」



 ふらふらと歩き…エリシアはそこら辺にある手頃な段差に座り込む。



 「大丈夫か」

 「申し訳ありません……少し疲れたみたいで」

 「緊張の糸が切れたんじゃないか?」

 「そうかも知れません……それに…」




 おい、泣くなよ〜。




 「これでっ…死んだ皆がっ…浮かばれる……無意味じゃなかった」




 他の騎士達も空気を読んでエリシアから距離を置く。

 よし!ここは俺も少し離れ………おや?



 何故に俺の袖を掴むのです?エリシアさんや。




 「少しだけ…ここに居て…」

 「え?いやぁ…はぁ…分かったよ」



 そんな子猫みたいな顔されたら断れんわな。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 「帰ろう!帰ろう!今直ぐ帰ろう!」



 女神の涙も採ったし後は帰るだけだな!



 「なぜそんなに喜んどるんじゃ?」

 「だってさ〜魔境、暇なんだよね〜」

 「そんな事を言えるのはヨシト位じゃな」



 だって見渡す限り森!森!森!

 つまんねぇ~なんの面白味もねぇじゃん。



 「心配せずとも国に戻る準備を始めておる」

 「………ちなみにここに来るのに何日掛かったの?」

 「ん?そうじゃのぅ……大体、20日以上は掛かっておるの」



 あっ、無理。



 「待てるか!」

 「待つ待たんの問題ではなかろぅ?っ…!何処に行くんじゃ!?」




 エリシア〜!何処に居るんだい~エリシアちゃん〜。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 「なぁ、エリシア」

 「はい?何でしょうか…?」

 「時間掛けて帰るのと、今直ぐ帰れるのどっちが良い?」

 「え?それはどういう事ですか?」

 「どっちが良い?」

 「……直ぐに帰れるのなら…はい…」



 ほい、分かったよ〜。



 「隊長命令という事で…」

 「え!?」



 地面に向けて声に魔力を乗せて話し掛ける。




 『お~い、遊ばないか〜?』



 返事は直ぐに帰ってきた。

 二度目だから俺の魔力を覚えてたのかな? 




 「も!」

 「よく来たな〜」



 「ヨシト殿……この可愛い…ゴホン!この子は何ですか?」

 


 お?エリシアは見たことないのか。



 「精霊だよ、こいつは地の精霊だ」

 「精霊魔法までも使えるのですか!?それはエルフか精霊に好かれた者しか使えないと聞いていますが」

 「あ〜そんな大層なもんじゃないよ。ただ、遊んでるだけだ」

 「遊ぶ?」



 結構、単純だぞ?



 「精霊ってな基本的に遊びが好きなんだよ、というかこの世の全てが精霊にとっては興味を引くおもちゃだ」

 「おもちゃ?」

 「だから俺が精霊に一緒に遊ぼって言えば、精霊は喜んで遊んでくれる…こいつ等は娯楽に飢えてるからな」

 「は、はぁ……」



 まっ、見た方が早い。



 「も!」

 「面白い事したくないか〜?」

 「も!?も!」

 「ごにょごにょごにょ…いけそうか?」

 「も!」

 「他に隠れてる子も」




  「「「「「「「も!」」」」」」」



 おっ…既に居た。

 よっぽど俺の魔力が気に入ったみたいだな。




 「魔力貰ってけ〜」

 「も~!」




 「………あ、あの…」



 ん?エリシア? 



 「そのっ…出切ればで良いんですが……抱っこしても良いですか?」

 「へぇ~エリシア可愛いもの好きなんだ」

 「そ、そういう訳では…」

 「お願いしてみな」

 「どうすれば…?」

 「自分がこうして欲しいって思いながら話し掛けるんだ」



 細かく指示出すなら魔力が必要だけど、簡単なものなら精霊も以外と感じ取ってくれる。




 「も?」

 「…え、えっと…抱っこしても良い?」

 「も~も!」

 「可愛いぃぃ!?」



 地の精霊を抱っこしながらエリシアは破顔した。

 すんげぇ、表情が蕩けてるぞ。

 まぁ、喜んでくれて何よりだ。



 「じゃ、始めるぞ〜!」






 「「「「「「「「も~!」」」」」」」」



 


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!




 地面が揺れる…暫くすると二箇所から土が盛り上がる。



 「凄い…」

 「も~?」












 こんなもんかな。



 現れたのは巨大な2本の腕、無駄に筋肉付いてる造形は……どっから着想を得たんだ?




 「556!557!558!」




 あっ、向こうで爺さんが筋トレしてる。

 あれ見たんだな…つーか何で今、筋トレやってんだよ。




 「まぁ良いや。エリシア皆を集めてくれ」




 「は、はい…分かりました」

 「も~?」





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 「あの!?ヨシトさん!?ヨシトさん!?」

 「今更怖気付いたのかメルティ」

 「何も聞いて無いんですけど!?」




 エリシアの部隊は丁度20人、片手に10人づつ

 土で出来た巨大な腕…その手の平の上でメルティがぷるぷる震えてる



 「メルティ、国の方角はどっちだ?」

 「こ、ここ…このままで大丈夫です…」

 「方角よ~し!天候よ〜し!覚悟よ~し!」




 「ガッハッハ!ヨシトと居ると退屈せんのぅ!」



 よ〜し、それじゃあ精霊の皆様…お願いします!




 「ぶん投げろぉぉぉぉぉぉ!!!」





 「「「「「「「も~!」」」」」」」





 ギギギギギギギギギッ  ブォォォォオン!!


 



 「ギャァァァァアこんなの嫌ァァァ──


 「ガッハッハ、これも経験じぁ─────


 「人間に…何故俺は名を教えてしまったのだ──


 「大丈夫!私が守ってあげるからね────

 「も~?──────




 よしよし、皆楽しそうに飛んでったな。



 「俺も追い掛けるか〜」



 

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