第13話 憂鬱
憂鬱だ…とても憂鬱な気持ちで天幕に向かう。
はぁ…どうしてだろう。ため息が止まらない。
これも全部、爺さんのせいだそうに違い無い絶対にそうに決まってる!
「あーそこの君」
「え?俺ですか」
「そうだ、錯乱して俺に斬り掛かって来た君だよ」
あっはっは、傷直してあげた時の気まずそうな顔は忘れてないよ〜。
「あの時は……ほ、本当に申し訳ありませんでした!」
「おぅ!気にすんな!俺も、もう少しで殺すところだったからな」
「え、えぇ!?」
「覚えとけ名も知らぬ騎士くん。戦場で怖いのは敵だけど…錯乱した味方はもっと怖い」
「そ、そうなんですか?」
「敵の攻撃は警戒するけど、味方のはしないだろ?戦場での死因は敵よりも味方同士の同士討ちも同じ位あるからな、気ぃつけな」
「わ、わかりました!」
ふぅ、偉そうに言ったけど本題は違う。
「ちなみにさ」
「はい?」
「エリシアに付いて君はどう思ってる?」
「た、隊長ですか!?その…す、好きです!?」
あっ、へー…まじかぁ。
「ごめん聞き方が悪かった、隊長としてどうって話」
「あっ!?えっ…!?そのっ」
「大丈夫だから!男同士の秘密にしといてやるから」
「そ、それなら。隊長は────────」
ふ~ん、おけ
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さてとっ…事前情報もゲットしたし。
行きますか。天幕に入ろうと扉代わりの布をかき分ける。
ここは全然気にしてないよって感じで入るか。
「お〜い、エリシアちょっと聞きたいことが…………」
おっと(・∀・)……やっちまったでな。
「よ、ヨシト……殿…」
「すまんっ!着替中だったか」
おーそうだ、そりゃそうだ。
女の子が一人で居るんだから声くらいは掛けるべきだった。
俺が悪い、これは俺が悪い。
「大丈夫だ!俺はEカップからしか興奮しないからっ!」
「そうですか…こんな傷だらけの身体を見ても劣情も何も沸か無いでしょうが」
ちょっと、ふざけてみたけど…あれだなエリシア卑屈になってんな。
「もうすぐ終わりますので、そのままお待ち下さい」
「うぃ」
あぁ…大丈夫かな。
この場面、爺さんに見られたら俺…多分殺されるよね?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お待たせしました…話とは何でしょうか?」
「いやぁ…聞いていてなんだけど大丈夫か、顔色悪いぞ?」
良く見れば目の下のくまが凄いなぁ。
美人さんなのに勿体ない魅力半減だぜ?
理由はなんとなく分かるけどさぁ…。
「大丈夫です。少し…疲れてるだけですから」
「ふ~ん…まぁ、いいや。爺さんから魔境にわざわざ行った理由を聞いて来いって言われたんだよね」
「モゴルの差し金ですか…良いですよ」
目線を合わせず、少し俯きながらエリシアは語り始める。
「我が国の姫…第三王女のメアリ様の為です」
「つまり、国ぐるみって事か?」
「えぇ…大きく見ればそうなります」
へぇ~王女様の為ねぇ。
「簡単に言ってしまえば派閥同士の争いでメアリ王女が毒を盛られました」
「う〜ん、何処でもやってることは一緒か」
「……?」
「こっちの話、続けて」
「はい、一命は取り留めましたが…どうにも盛られた毒が特別なもので如何なる魔法も薬も効果が薄く…魔境にある薬草を採りに来たのです」
そりゃ大変だ。
「日に日に容態が悪化するメアリ王女に心を痛めた王が国中にお触れを出しました」
「なんとなく読めた」
「えぇ…ヨシト殿の想像通り、魔境にある"女神の涙"と呼ばれる薬草を見つけよと」
「冒険者に任せれば良いじゃん?」
「もちろんギルドにも依頼が行きましたが…場所が場所ですから」
この世界の冒険者は腰抜けか?
未知を求めてこその冒険者だろうが。
「痺れを切らした王は遂に騎士団に命令を出しました……魔境へ趣き、女神の涙を持ち帰れと」
「それでエリシアが行くことになったと?」
「そうです。…しかし、私は王の命が無くとも行く気でした。メアリ王女は………私の…幼馴染みなのです」
そういう事ね。
……それは行かないとな、つーか行くしかないよな。
「これが…我々が魔境へと足を踏み入れた経緯です」
「そうか…話してくれてありがとう」
「いえ、……そろそろ夜も遅いので」
「あぁ!悪い。じゃ、ちょっと早いけどおやすみ」
「はい…おやすみなさい」
最後まで目ぇ合わせなかったな。
ん~聞きたいことは聞いたし俺も戻りますかぁ。
メルティが寝床準備してくれるって話だし。
「………………。」
なぁ…俺よ。
どうして後ろを向いて天幕から出ようとするのを止めたんだ?
いや、分かってる…俺は理由を十分、知っている。
憂鬱な気持ちが収まらないのも理解した。
はぁ…俺は、どうしてこう〜ほっとけ無いかね。
どうしても過去の俺と今のエリシアが
「エリシア」
「…はい?まだ何か…」
「大丈夫か」
「…………何がですか?」
振り向きエリシアの目を真っ直ぐに見つめる。
タイミングを逃したのかエリシアは目を逸らす事はしない。
「大丈夫なのか?」
「ですからっ…何を」
「お前は大丈夫なのか」
「仰ってる意味は分かりかねますが…私の事なら心配ご無用です」
「いいや、お前は大丈夫じゃない……」
エリシアの身体がピクッと反応した。
「エリシア……もう一度言うぞ。お前は大丈夫じゃないんだ」
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