第12話 嫌だなぁ
「げへへっ!お嬢ちゃんこっちにおいでぇ〜」
「ヨシトさん、ちょっとキモいです」
「
「……どこも痛くないです。……ヨシトさんって、実は凄い人なんですか!?」
「別に世界を救ったくらいだ」
「もう!ふざけないで下さい!」
あっはっは、マジなんすけど。
龍の襲撃イベントが終わり、俺はエリシアの頼みで騎士達の傷を癒やしている。
俺が爺さんの傷を治してるの見てたらしい。
別に断る理由も無いし請け負った。
「傷は治っても体力は回復してないからな、気ぃ付けぇ」
「はい!わかりました」
うんうんメルティは素直でよろしい。
じゃ、最後の患者を診ますかな。
「ほれ、エリシア」
「ヨシト殿……本当にすまない」
「謝って無いで傷見せろ、はよ、はよ」
「あ、あぁ」
ほんとっ…真面目だよな。
自分は1番最後で良いなんて、そんなに張り詰めてたら潰れるぞ。
ほい、治ったぞ。
「……………。」
「どした?他にも傷あんのか?」
「いえ、なんでもありません…失礼します」
どう考えても何か言いたそうな顔で天幕に戻るエリシア。
うむ…背中から負のオーラが出てるぞい。
「すまんのぅ、ヨシト」
「おっ、爺さん。あんたの孫娘は難しいお年頃らしいぞ?」
「二十歳にもなっとらんからのう。あと…血は繋がっておらん」
「あっ、そなの」
複雑なのね……にしても二十歳前って。
大人っぽく見えたけど随分苦労したんだな…。
「あんなに老けて…涙が出るぜ」
「老けとらんわぁ!?叩き潰すぞヨシトぉぉお!」
「冗談だって筋肉モリってすんなよ、モリって」
エリシアの事になると沸点低いなもう〜。
「んなことより…あの糞トカゲどこ行った?」
「あそこじゃ」
「……ん?」
「可愛い〜!」
「お腹空いてない僕?蛇肉あるよ?」
「わ~い僕、優しいお姉ちゃん大好き!」
「「きゃ~可愛いぃぃ!!」」
視線の先には女性騎士達に甘やかされてる子供が一人…。
おい、龍のプライドは無いのか。
何をチヤホヤされてんだコラ。
「処す!」
「これ待たんか」
「放せ!ずるいぞ小さくて可愛いからって俺だってチヤホヤされたいんだ!」
「嫉妬では無いか…なぁに危険は無いんじゃろう?」
………………。
「そうだけどさ…だからって警戒解きすぎだろ」
「竜は強い相手に従う性質がある。それは龍も例外ではないのじゃろう?だから、お主も連れてきたのでは無いか?」
「………ッチ」
流石に経験積んでる爺さんだけあるな…。
ただの孫馬鹿じゃない訳だ。
「まぁな、大幅に弱体化したから人型になって回復してんだろ」
「まさか龍が人の形になるとは…全ての龍がそうなのかの?」
「出来るっちゃ出来るけど。余っ程の事情が無いと人型にはならねぇよ…好きでなってる奴もたまにいるけどな」
「…ほぅ、では帝国の白龍もその口か」
「………帝国…白龍?」
「ラグルシア帝国、この"魔境"の先にある大国じゃ。帝国は、もちろん皇帝が治めとるが…初代皇帝の時から仕えとる一匹の龍がおる。それが白龍じゃ」
「へぇ〜そうなんだ」
そうなんだ~知らんかった〜。
「ところでじゃ」
「うぃ」
「子供でも知っとるような帝国や白龍の話を知らぬ……ヨシト、お主は何処から来たんじゃ?」
「あっはっは、そうなる訳ね」
色々あったから流されてただけで普通におかしいよね。
さて…どう答えるかな。
よーし、ここは正直に言っちゃえ。
「う~ん…女神様が俺に、ご褒美でこの世界に生まれ変わらせてくれた」
「…………………。」
「睨むなよ」
「はぁ…儂には、今の話が嘘だと決め付ける判断は出来ん。この魔境に平然と居り、しかも龍をも倒す力を持ってるんじゃ。信じるしかあるまい」
おっ、意外な反応。
てっきり怒られると思ったし。
「女神様っ…そ、それって!?使徒様という事ですか!?」
「居たのかメルティ」
「ずっと隣に居ましたよ!?」
「あーはいはい。使徒様ってのはなんだ?」
プンスカ怒ってるとこ悪いが教えてくれね?
「そのままです。神の使徒…異界から呼び出された存在です!」
「へぇ~、まぁ俺も似たようなもんだ」
「す、凄いです!生で初めて見ました!!?」
「崇め給え」
まっ、この世界の神よりも遥かに格上の女神が俺を転生させたんだけどな。
ふ~ん…居るのか、俺と同じ様な奴。
過去に転生した時は居なかったんだけどな。
「それと魔境って何よ?説明プリーズ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
はい、いわゆるパワースポットだな。
自然に魔力が溜まる場所、ここの場合は真下に龍脈が通ってるせいで自生してる植物や魔物が巨大な魔力で良くも悪くも影響を受けてるって訳ね。
「へぇ~」
「数ある魔境の中でもここは1番大きな範囲の魔境なんです。危険度は他と比べ物にならないんですよ」
「……で、そんな所になんで来たの?」
「そ、それは……」
えーそこは教えてよ〜いいじゃん。
ちょっとだけ、ちょっとだけだから。
「先っちょだけ!」
「……なんか卑猥です!」
ひ、卑猥だと!?
寄りにもよって卑猥と申したな!
ならこっちにも考えがあるからな。
「俺が持つあらゆる絶技をもって卑猥とは何かを教えてしんぜよう(両手をわきわき)」
「ひぃ!?」
「謝っても遅いっ!」
ゲヘヘっ!生娘には少々刺激が強いかもなぁ!?
「儂の可愛い弟子に何を教えるのかの?」
「ふぇ!?」
そうだった爺さん居たんだった。
「じょ、冗談だよ〜やだなもぅ〜」
「やれやれ、理由が知りたいのなら……エリシアに聞くんじゃな」
「え、話し掛けづらいんですけど?」
はぁ、でもこれは行かねばならん奴よなぁ…。
嫌だなぁ。
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