第11話 人化


 魔力を凝縮したレーザー、言葉にすればこんな感じだけど実際にはそんな生易しいもんじゃない。

 やってることは魔法でもなんでも無く魔力を大質量でぶつける。

 これがまぁ厄介、下手に防御するとそれごと貫かれる。



 対処法は2つ、躱すか、同程度の威力で相殺する。





 『……逃げたか』

 「避けたんだよバカっ」




 移動系の魔法ならブレスを避けんのはそこまで難しく無い。





 『ふんっ…いつまでも逃げられると思うな!』





 はぁ…一つ勘違いしてるみたいだな。

 

 


 「ウィル・ロンド風と踊るウィル・ゴル風が導く




 何時まで自分が格上だと思ってんだぁ?



 

 






 『………ん…?何処にっ』





 ドゴォォォォォォォォォォォォオ!!!




 「ごぁぁぁぁぁぁぁ!!?」




 龍の無駄にデカイ腹に拳が深々と刺さる。

 痛いか?痛いだろう、どうせ碌な痛みも知らずに生きて来たんだろう?




 『ぎぃぃ…!?ふざけるなぁ!!!!』



 

 怒り狂った龍がその自慢の鉤爪で俺を切り裂こうと腕を振る、デカさ的に切り裂くってよりは押し潰すだけど。

 


 ちなみに遅い。





 フッ…。






 風のルートに従い俺はで高速移動する。

 どうだ音が無いから、まるで消えたみたいだろ?

 俺を見失い意味も無く左右に首を動かす




 『何処だぁぁぁぁ!!逃げれると思うなよぉぉぉお!!!』





 頭上に注意されたし。








 「頭がお留守だぞ!糞トカゲぇぇぇぇぇえ!!!」










 龍が居る高度より更に上に登り落下する速度も加えて頭部に踵落としを決める。

 これは中々効くんじゃね?







 ゴシャァァァァァァァァァァァア!!!






 『ぶむぅぅぅぅぅゔゔ!!?』





 うん、弱っ。

 俺が会ってきたどの龍よりも未熟だな。

 けど龍は龍だな普通の魔物なら今の攻撃で終わってる

 耐久力と再生能力が持つ異常なタフさ、嫌になっちゃうよ。



 『…ぐぅぅ…なんで…人間は弱い筈なのに…』

 「そうだな…龍に比べれば人間なんて弱くて脆弱な存在だろうな」




 残念でしたァァァァァ!

 俺は例外ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!



 「まぁ!喧嘩売ったのは、お前だからな!」



 満面の笑みで言ってやった。

 うんうん苦しゅう無い怯え給え。





 ん〜魔力充填!




 『……え?…魔法陣?…デカくない?』


 


 もちろん、お前の小さなブレス見たら情け無くて。

 俺なりに龍のブレスを再現しようと思ってな。





 「あっはっはっは消し飛べ糞トカゲ」




 魔力を収束…極限まで圧縮して放つ疑似ブレス。

 そうだな、名付けるなら…。




 「ドラゴニック・ブレス龍の息吹





 

 ズォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオ!

 





 わぁ…我ながらすっごい。

 



 『ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!!?』



 

 あっはっは、吹き飛んでらぁ。




















 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 「よ、ヨシト殿……これは一体」

 「うん!捕まえた!」

 


 お前も挨拶しなさい!

 


 「この度は皆様を怖がらせてしまって申し訳ありませんでした…」

 「この子もそう言ってますし勘弁してやって下さい!」




 「…またふざけてるんですかヨシトさん」

 「なんかメルティ俺に厳しくなってない!?」

 「何と無くです」



 な、何と無く!?

 仮にも命の恩人なんですけども!



 「ヨシトよ、これは…先程の龍で間違いないのかのぅ?」

 「おぅ、やっぱ龍だな。しぶとく生きてたから人化させて連れて来た」

 「……子供では無いか」



 見た目はな、5歳くらいかな。

 糞トカゲが糞餓鬼になった位だ、そんなに変わらんでしょ。



 「くそっ…屈辱だ…」

 「おや?糞トカゲ今なんと」

 「い!?」



 「やめぬかヨシト!怖がってるじゃろぅ!」

 「ヨシト殿、子供相手に大人気ないですよ」 

 「私、子供に優しく無い男の人嫌いです」



 「おかしいじゃん!?ねぇ!おかしいじゃん!?」



 こいつ、さっきまで俺等の事殺そうとしてたんだぞ!?

 ちょっと見た目が幼くて庇護欲唆られるからって、おかしいじゃん!?



 「あの人、こわいよぅ…」

 「おぅ、そうかそうか、儂が付いておるからのぅ。な~んにも心配せんでえぇ」

 


 「なにを抱き抱えてんだ!?孫じゃねぇぞ爺さん!」




 完全に孫と爺さんじゃねぇか。

 



 「エリシアを思い出すのぅ〜昔は四六時中付いてきてのぅ…いかん、どうも歳を取ると涙腺が緩くなるわい」

 「モゴル!?」

 「こんなに大きくなって……思い残す事はないのぅ」



 何、浸ってんだよ爺さん。

 あと糞トカゲも抱っこされて心地良さそうにすんな!

 仮にも龍だろうが。



 「お前は取り敢えず降りろコラ」

 「うわぁ!?放せっ!人間が気やすく触れるな!!?」



 抱っこされてる時に言えやその言葉わ。



 「のわぁ!?孫返せぇぇ!」

 「孫じゃねぇよ。ふざけてる暇あるなら、そこで抱っこしてほしそうなエリシアに構ってやれよ」

 「おぉ、すまんのぅ。そうじゃったのか…ほれ」



 「ヨシト殿!何を言ってるんですか!?…おじぃ……モゴルもやめろ!」



 そうかぁ…糞トカゲ見て羨ましそうな顔してた癖にぃ。



 

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