第10話 対話
ん~参ったな。
「少し落ち着いたか…?」
「は、はい…ですがっ…なぜあんなものが」
「まぁ、龍脈の近くは竜の縄張りだからな」
「…あ、あれが…竜、私が知っているものとは…かけ離れてる」
そりゃ当然。
「あれは竜が存在を更に高め行き着く先…龍だよ」
「……は、早く撤退を!」
「エリシア、もう手遅れじゃ…奴はこちらに気付いておる」
「も、モゴル…ど、どうすれば」
「ガッハッハ!やはり泣き虫は治っとらんな、どれ…」
爺さんは自分の身長とほぼ同じ長さの大剣を手に取る。
それもう…ただの金属の板でわ?
「殿はこの老兵が受け持とうでは無いか」
「だ、駄目だ!モゴル、お前を失う訳にはっ」
「エリシアよ…お前は隊長じゃ。皆の命を預かっておるのを忘れるな、今…何をするべきか…誰を生かすべきなぞ明白」
「それはっ…でも…おじいちゃん…死んじゃやだよぅ…」
え?そうなの?爺さん、エリシアの爺ちゃんなの?
「なぁに別に死ぬつもりはないわい!それにのぅ…当然、お主も儂と殿を務めるんじゃろぅ?」
「まぁ…あ、はい…多分、原因は俺だしね」
「ほぅ?そうなのか」
「恐らくね」
そんじゃ、ぐずぐずしてると厄介そうだから始めるか。
「ちなみに爺さん、龍と戦った事は?」
「遥か昔に一度、尿と糞を撒き散らしながら逃げたわい」
「それは心強い」
「私は何をっ」
「エリシアは皆を一箇所に集めてくれ、変に逃げてそこを突かれると守りにくい」
「了解しました…モゴル、ヨシト殿…どうか戦神の加護があらんことを」
うん、やっぱ送り出されるのは良いな、しっくり来る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さてと…どうするかのぅ?相手は遥か上空、こちらからは手が出せんぞ?」
「一応行く方法はある。後は僅かな可能性に賭けて話し掛けてみる」
「……通じるのか?」
「あぁ、実はね。基本向こうが見下してるから会話しないだけ」
「爺さん、もし向こうが問答無用で襲って来たら皆を護ってくれ」
「よかろう…」
「それと、その傷実は結構やばいだろ?」
「ガッハッハ!お見通しか」
立って話せてるのがおかしいくらいだぞ。
「
「……器用じゃな、光属性かのぅ?」
「傷は塞いだけど体力はそのままだから」
「やはり…お主は不気味じゃ…同時に、面白い!」
そりゃ、どうも。
準備も整ったし行きますか。
「よっ!」
ドォォォォォォォオン!!!
取り敢えず出来るだけ高く飛び上がる。
このままじゃ普通に落ちるんで魔法を唱える。
「はい、お馴染みの
これだと格好良く落ちるだけなんで追加だ。
「
風、大気を凝縮して足場を作る。
先にルートを決めないといけないのが面倒臭いけどね。
今回はルートを龍に一直線に引く。
後は滑り登る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やぁ!こんばんは…今日は良い天気だ雲一つない空。夜空が綺麗だと思わない?」
龍と真正面で向かい合い話し掛ける。
俺がここに来るまでの間に何もしなかったんだ、ただの敵なら撃ち落とす。
良い意味でも、悪い意味でも俺に興味がある筈だ。
ちなみに龍の姿は西洋のドラゴンそのものだな。
俺が最初に見た白龍は東洋のよくある細長いやつ。
こいつは鱗が少し赤いな、龍の強さってのは冗談に聞こえるかも知れないが鱗の色で大体分かる。
存在の格、魔力の強さが高ければ高い程…色が際立つ。
「黒っぽい赤褐色……成り立てか?」
龍になってそこまで年月は経ってないみたいだ。
『………………。』
「言葉は分かるだろ?」
う~ん…無視か。
それにしてもこいつ…。
嗤ってやがる。
表情筋無さそうな顔してるくせに、なんか分かるんだよな。
『……気分が悪い』
「…ん?」
『お前達のようなゴミは大人しくしていれば良いものを…』
はい、話は出来るけど会話をする気がないタイプね。
「あー良いか?気分が悪いのは申し訳ない、謝るよ。その寛大な心で見逃してくれないか?」
『……少し、異様な魔力を感じたが気の所為か…まぁ、良いだろう』
「話通じねぇな」
はぁ…龍ってプライド高い奴ばっかだなマジで。
『しかし…気分が悪い』
「あーはいはい、分かったって。会話する気ねぇんだろ?のくせにこっちに分かるように言葉発っしてんの性格悪いぞ」
『人間の分際で、俺と同じ様に空を飛ぶとは…ゴミは地に付してこそ多少なり価値があるというのに』
空気中の魔力が龍の口内に集まる。
龍は魔力量も他の魔物より圧倒的に持ってるのに、自分以外の自然に溢れてる魔力も使えるってのが糞仕様だ。
で、この糞トカゲがしようとしてんのは……まぁ。
ブレスだよね~。
『ゴァァァァァァァァァァァァァァァァ!』
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