第7話 側面
「ヨシト殿、この度は命を救って頂き心からの感謝を!」
「うむ、受け取ろう…」
現在、人目があるからか天幕に居るぞ。
ふ~一時は、どうなるかと…確かこの人隊長って呼ばれてたよな。
俺の名前知ってるのはメルティが教えたんだろうな。
「それよりも先程、我に剣を向けた騎士だが…」
「!?…そ、それも含め私から謝罪をしたい!」
「いや、必要は無い」
「…っ…!」
おっ、勘違いしてるな。
そんな悲痛な顔すんなって。
「勘違いするな、我は怒ってはいない…ここに居る者、長い間ろくな休息を取れていないのではないか?」
「そ、その通りです…」
「疲労、睡眠不足に加え…突然現れた我に過剰に反応してしまった、限界だったのだろう。正常な判断も付かぬ程に」
まぁ、見るからに目がイッてたからなぁ。
戦場で良く見たよ。
「そこまで気を使って頂くとは…改めて感謝を」
「うむ、頭を上げよ…それと、そなたの名は?」
「失礼致しました。私は、この部隊を預かる隊長のエリシア・ラードックと申します」
やっぱ女か、中性的な顔だから迷ったぜ。
「エリシア殿、既に聞いていると思うが我もそなたに敬意を払い名乗ろう。我が名はタナカヨシト、ヨシトと呼んでくれ」
「はい、メルティから聞いております…私達だけでなく彼女も助けて頂いたと」
「成り行きだ、余り気にするな…」
本当に成り行きだからね。
「申し訳ありません…ヨシト殿、恥を忍んでお願いがあります」
「ほぅ、それは…一体」
「ヨシト殿が倒されたあの魔物を…譲ってはくれませんかっ…」
「ふむ…食料か?」
「………その通りです…何もかもお見通しなのですね…」
あっはっはっメルティを見れば大体、何に困ってるか見当つくしね。
別にあげても良いんだけど…。
ちょっと意地悪しちゃおう〜。
「良かろう…あの魔物は、そなたに譲ろう」
「あ、ありがとうございます!」
「それで…見返りには我に何をくれる?」
「…っ…!?そ、それは……」
「無償では、そなたも忍びなかろう?」
どうする?隊長さんよ。
「…………正直に申し上げます。今の状況ではヨシト殿に報いる物を持ち合わせてはおりません」
「ほぅ?つまり…タダで寄越せと?」
「め、滅相も御座いません!?」
あひゃ〜!この隊長さん、イジるとめちゃくちゃ面白いなぁ。
もう少し、からかいたいけど…流石に可哀想だ。
「カッカッカッ!冗談だ少しそなたを試しっ」
「物では払えませんが…わ、私の身体でここはどうか!」
「ん"!?」
「飢えで肉付きは良くありませんが…ヨシト殿が望むように致しますので…ここはっ…どうか…どうか…私の身体一つでご勘弁をっ!」
ヤヴァイ!?これ、やゔぁああい!?
追い込み過ぎた!
俺、すっごい嫌な奴にならないコレぇ!?
「そ、それは……」
「分かっています。このような戦闘を生業としてる女の身体に魅力が無い事は…」
いやぁ、俺が見る限りスレンダーで程良く鍛え上げられた身体は魅力しか無いように思えるんだけど…。
あっ、違うっ、違うっ、そうじゃなくてっ。
「そ、そなたは良いのか?」
「もちろんです…私の身体一つで部下達の飢えを凌げるのなら喜んで…」
アカン、覚悟ガンギマリしてますわ。
何なんこの人、隊長として完璧じゃん!
よし、ここは俺も男として覚悟を決めよう。
助けてぇぇえ!?メルティ!?ずっと横に居たじゃん!?
なんとかしてぇぇぇぇぇ!?
目っ!?目で訴えるぅ〜!
「……………あ、あの〜隊長?」
「メルティ…お前は関係無い、これは私とヨシト殿で解決出来る問題だ」
「いえ、そうではなくて…そのっ、ヨシト殿も良い加減、変な喋り方をやめて下さい」
「な!?メルティ!ヨシト殿に何たる無礼をっ」
「うん!わかったよメルティ!ぱぁぁ〜!あぶねぇ…マジで、マジで冷や汗出たわぁ〜」
「え…ヨシト殿っ…え?…ん?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あげるから、あげるから身体は大事にしろよ」
「………は、はは…ありがとうございます」
エリシアは身体の力が抜けて項垂れてる。
ごめんねぇ…緊張させちゃって、それにいくら覚悟があっても嫌なものは嫌だしな。
その気持ちは良くわかるよ、俺も痛いのは嫌だしな。
「助かったぜメルティ、いやほんとにっ」
「あ、はぁ…えっとヨシト殿」
「あー思ったけど殿は付けなくて良いよ、ヨシトって呼んでよ」
「なら…ヨシトさんで…」
それくらいなら丁度良いかな。
「で?なしたの?」
「ヨシトさん、今のヨシトさんが…そのっ、変な事聞くんですけど…素なんですか?」
「あれ?どして…?」
「なんと言うか…ふざけてるにしては様になってるというか、はい…」
へー、メルティ結構……鋭いね。
「今の俺は俺だし…さっきのも俺なんだよ、変だと思うだろうけど」
「あぁ…はい、わかりました」
別に隠すことでもない…10回も転生したんだぜ?
そりゃ爺になるまで生きた時だって結構あるし…。
一応、それなりに経験豊富なのさ。
「あの…」
「ん?なにエリシア」
「私の身体…そんなに魅力がないのでしょうか?」
え? 今っ、そこ気にする?
ちゃんと乙女なんだね…強いて言うならぁ〜。
「巨乳なら即決だった(真顔)」
「…………………。」
そこだけは譲れん。
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