第6話 お姫様


 「思わぬ食料ゲット」


 以外と精霊達が食べる遊びに夢中だから量が減ってたんだ助かる。


 

 「大丈夫か…?」

 「…………………え?」

 「大丈夫かって、聞こえてる?」

 「あ、あ…はい…聞こえてます…」



 そんなに目を開くなよ怖いな。

 


 「あ、貴方は…一体?」

 「ん?俺、タナカヨシト。ヨシトって呼んでくれ!あんたは?」

 「わ、私は…メルティです」

 「よし、メルティこれも何かの縁だ一緒に食べようぜ!」


 

 旅は道連れ世は情けって言葉もある位だ。



 「それはっ…有り難い提案ですが早く部隊に戻らないと」

 「急いでるのは何と無く分かるけど、その為には体力が要るだろ?ほれ、丁度良いの持ってんじゃん」

 「え…?……あっ…」


 俺が渡した串焼きを見てメルティは驚く。

 ははっ…渡されたモノが何かすら認識出来て無かったのか。

 それだけ疲労してたってことだろ。


 

 「わ、私だけこんなっ!?」

 「仕方ないだろ?今はお前しか居ないんだし」

 「でもっ…」

 「じゃあ返せ俺が食べる」

 「えっ!?あっ、嫌っ!」



 そ、そんな拒否しなくても……ちょっと傷付いた。



 「ご、ごめんなさい」

 「謝るなら食え、はよ、はよ」

 「……(ごくり)」



 恐る恐るといった様子でメルティは肉を口に入れる。

 一口食べたら、もう止まらない。

 次から次へと肉を入れる。



 「んむっ…んむっ…」

 「ほら、泣くなって頑張ったな」

 「…っ…ん…」



 口いっぱいに肉を頬張りながらポロポロと涙を流す。

 事情はさっぱり知らないが大変だったのは確かな筈だ。

 こんなにボロボロになってるんだからな。













 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 「ご迷惑をお掛けしました…」

 「いや、それ程でもない」

 「あの…ヨシト殿」

 「はい、なんでしょ」



 メルティは未だに放置された魔物の死体を見て、直ぐに俺へと視線を戻した。

 わっ、あれだなこれ…このパターン何度か経験したぞ。



 はぁ…一回助けちゃったし仕方ないか。



 「お願いが御座います…」

 「ほいほい」

 「ど、どうか…私と共に行動して頂き、できれば…部隊に戻る迄の間、私を守ってくれませんか?」

 「……………。」



 予想はしてたけど…はぁ、一応休暇中みたいなもんなのによぅ〜俺って奴はどうしてっ。



 「分かった…行こうか」

 「ほ、本当ですか!?」



 頼まれると断われ無いんだよなぁ~。

 マジでこの悪癖治したいわぁ。


 「あぁ…そのかわり今直ぐだ」

 「え?い、今ですか…その有り難い話ではありますが…もう夜になりますけど」

 


 嫌だ、早めに終わらせる。

 


 「お嬢さん、お手をこちらに」

 「は、はぁ…その何をっひゃん!?」

 「失礼、少し我慢しててくれ」



 強引にメルティをお姫様抱っこし俺は魔法を唱える。



 「ウィル・ロンド風と踊る

 「え?え?」

 「それではお姫様、口を閉じてジッとしてて下さい」

 「ちょっと待っ」

 



 出発ぁぁぁぁぁぁつ!!!!



 「キャァァァァァァァァァア!!?」



 こらこら、口を閉じないと下を噛むぞ。












 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 「イヤァァァ!?速い!速いぃぃぃ!!?」

 


 えー現在、我々は暗闇の中ノンストップで森を駆けています。

 障害物なんてなんのその!

 縦横無尽に駆け回っておりますぅぅぅぅう!!!!



 「魔力が集まってるのは……あっちか!ヒャッホォォォォォォオ!!!!!」



 はいっ!勢いのままトリプルアクセル!



 「要ります!?今の動き要りますか!!?」

 「え?要らないけど」

 「二度とやらないで下さい!」

 「えぇ…」


 

 遊び心は大切だよメルティ君。

 


 「キシャァァァア!」



 「ま、魔物です!?」

 「あー無視っ」


 

 カマキリっぽい魔物だな、構ってる暇ないんで。



 「じゃ!」




 「キシャァァァア!……きしゃあ?…」



 

 また何処かで会おうぜ!





 「お?そろそろ着くぞ」

 「う、嘘…こんなに速く」

 「う~ん…でも、拙いな…デカイ魔力がある。こりゃ襲われてるな」

 「そ、そんな!?」



 慌てんなよメルティ…俺が来たんだぜっ(キラッ)。

 ほら、誰か見えてきたぞ。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 「た、隊長!?西側より何か来ます!」

 「くっ!こんな時にっ!」

 「途轍も無い速さでこちらにっ……あ、あれは……人?」

 「なんだと!?どういう…」




 到着っ!

 



 「メルティをパスっ!」

 「きゃっ!?」



 「な!?…ん?め、メルティ!?何故ここに!?」

 「た、隊長…!?え、えっ…と。多分見てれば分かります!!!」

 「はい?」


   


 流石に適当過ぎないかぁ?

 まっ、見たほうが早いのは俺も同じ意見だ。

 前方!ヘビ型の魔物を目視!

 トップスピードを維持しながら慣性をそのままっ。





 ドロップキック!




 「死に晒せボケェェェェェエ!」




 ドッゴォァォォォォォォォオオオオ!




 華麗なるドロップキックが魔物の頭部側面に命中!




 「かっ…!?」

 「終わりじゃねぇぞ?仕込みも同時にウィル・ザール風刃波



 複数の刃が魔物の長い胴体を断つ!

 ボトッ、ボトッと大きな肉塊が地面へと落ちる。

 それと同時に俺も地面に降り立ちっ…。



 「……我が風は万物を斬り捨てるっ!」



 はい、決め台詞。

 よしっ…完璧にキマったな、あかん…カッコ良すぎるっ。

 自分がっ、眩しいです!




 「あ、あ…化物!?うぁぁぁぁあ!!」



 近くに居た騎士、斬り掛かって来たし!?

 あぶねっ!



 「ボクミカタダヨー」

 「うぁぁぁぁあ!」



 あ、駄目だこいつ目がイッてる。

 混乱してるな…ったく面倒くせぇな。







 







  

 









 「このっ…馬鹿者がァァァ!!!」


 ゴッ!


 「あがっ!?た、……隊長…?」

 「命の恩人に対して剣を向けるとは何事か!それでも貴様は騎士か!?」

 


 おっ、なんとかなりそう。



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