第2話 ガチ泣き


 それは会社から帰宅中に起こった。




 あれは……とても寒い雪の日だった…。






 「ぶぃぃ寒いぃぃ!?」




 肌に突き刺すような風の寒さ…。





 「待ってろよ〜家に帰ったら温めてやるからなぁ~」





 コンビニで買ったおでんのパックに視線を向けながら俺は早く家に帰りたいからと少しだけ小走りだった。





 「お、で、ん~♪」




 

 その前の日は…少しだけ気温が高くて雪が溶けてたんだな。

 溶けた雪は水になり、蒸発しなかった分は綺麗な氷になってたんだ。





 「お、で、」





 ズルッ






 「おっ?」








 凄い…………滑りやすくなってたんだよね。






 「俺のおでっ!?」



 宙に舞う、おでんのパック…一瞬の浮遊感と氷で滑ったと理解する俺。

 あの時、何故おでんに向かって手を伸ばしてしまったんだろう……。




 「ん“!?」




 ゴッ!




























 俺は、氷で滑って頭強く打って死んだ。




 享年26歳、彼女なし…いや、居たけど寝取られた。





 儚い人生でした…………言っとくけど笑い事じゃないぞ、冬の雪が軽く乗った氷はマジで危ないからな?

 俺が言うんだ間違い無い。






























 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇












 「いってぇ……尻が…」




 くそっ、嫌なこと思い出したじゃねぇか。





 「困ったわねぇ…」

 「フレイシア、どういう事だ?」

 「言ったでしょ?魂の格が上がり過ぎて私じゃ、というか…もう、何も出来ないってこと」



 はいぃ!?

 なんじゃそりゃぁあ!?




 「これは予想外よ、10個の世界を救ったせいで魂が変質したのね」

 「つまり…どゆこと?」

 「う~ん…分かりやすく言えば。ほぼほぼ神に成ってるわね」

 



 …………我、神ぞ?




 「しかも、すっごい。嘘でしょ…私に近しい存在よ」

 「…え?……凄いの?」

 「あんた私のこと舐めてるわよね?」

 「まぁ、多少は」



 

 初めて会った時よりは舐め腐ってるぞ。

 

 

 「はぁ…良いわ。残念だけど成仏するには魂の力が強過ぎるわ。無理無理」

 「そ、そこを何とかっ」

 「無理やり突っ込んだら輪廻のシステムがバグ起こして良くて〜あらゆる次元、とか何もかも消滅?」




 ………めっちゃヤバいじゃん、良くてそれって…。




 「わ、悪かったら?」

 「う~ん…多分、私もろとも消えるから〜宇宙とか、空間っていうか…なんだろう、最初に戻っちゃうかも?」

 「最初って何よ!?」

 「無の前の無…無すら無い虚無、ぶっちゃけ何が起こるか分かんないわよ」




 ……………………お前で分かんないって。




 「さっ!成仏出来ない事だし、これからも長い長〜い付き合いになるわねぇ、言っとくけど寿命とかそんな概念消え去ってるから」

 


 わ、嗤ってる…こいつ、嗤ってる!?



 「ねぇ~ヨシト…」

 「……な、なんだよ?」

 「私って…凄い大変なのよ。あらゆる次元、そこにある宇宙、それぞれの世界を管理してるのよ」




 それは…知ってるけど。

 


 「世界って無限に増えてるのよ…もうね…管理が大変で大変で…」

 「ひ、ひいっ…!?」

 「一人じゃ手に余り始めてたのよ…そしたらどうかしら!」



 ギャァァァ!?

 こっちに来るなァァァァ!!?



 「こんな所に偶然、私とほぼ同格の存在が居るじゃない…ふふっ、私もね…丁度部下が欲しいなって思ってたの」

 「ひぐっ!?」



 ま、拙いっ…フレイシアの奴、俺に手伝わせようとしてやがる!?

 嫌だぞ!?絶対に嫌だ!



 「嫌だぁ!?」

 「あら、百万年に一回は休みをあげるわよ?」

 「ぶ、ブラック…なんつー純度の黒だよ…」



 ぎゃ、逆転の一手を…な、何かっ。



 



 俺の思考は今、猛烈に回っている…そこから導き出した結論は……。



 (こ、こうなれば戦うか?………いや、駄目だ格が近いといっても奴はババァ、経験豊富………経験、経験)






 「あっ」


 「何よ?そんなアホ面晒し…」




 ちなみにフレイシアは以下にも神様が着てそうな絢爛豪華な格好をしている。

 つまり…長いスカートがヒラヒラ。




 「ていっ」


 





 バサッ




 俺はフレイシアのスカートを下から持ち上げた、腕を目一杯上げてな。

 おいおい、マジかよ…。




 「ベージュかよ」





 ずっと同格が居ない、つまり…こういった事に慣れてないのではと俺は思った。

 だってこいつの今まで生きてきた中でスカート捲りあげるなんてされた事無いだろうなと思ったんだ。




 一瞬でも動揺してくれれば話を上手く逸らして……。





 「あっ、駄目だベージュは面白過ぎるって、プヒャハハハハハハwwwwwwwww」





 女神ともあろう、お人がベージュおぱんちゅw





 「ひぃ~死ぬっ!笑い死ぬぅぅぅぅ!」




 健康的な白くきめ細やかな肌とベージュは合わんてっ!

 ぶぶぅー!

 だめだ、腹が痛いw



「あー久し振りに呼吸出来なくなるまで笑ったな」

 「…………ぃ」

 「え?なんて?」



 スカートが仕切り版みたいになってるからフレイシアの顔が見えない。

 でも、なんか言ってる。

 どれどれ…顔真っ赤にして怒ってるかぁ〜?

 人を永遠に働かせようとするからこんな目に遭うんだぞ〜。



 「…別にぃ……ぃ…いつも…ひっぐっ…じゃないし…」

 「えっ…あっ、フレイシア?」 

 「そ、そ……そも…そも…あんだ、なんがに…ぃ…見せるっ、つもりも”…な“い”ぃ」





 あきません…一瞬の隙もクソも無い。



 ガチ泣きだこれ。




 

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