第18話 幼女とママと妹と。

「ひはははははは!!」


 突如奇声をあげ、長い爪で斬撃を繰り出すイモータル・シスター。その連続斬撃を両手のダガーでいなしていく。


 キンキンキンッ!!


「ほらほらぁ!! 可愛い可愛いロリババァちゃんは私の妹になりましょうねぇ!!」


「何故そこまでに妹を求める? 罪もない子供達を攫う?」


「そんなの決まってるでしょぉ!? 妹こそが至高!! 妹こそがこの世で最も美しい存在だからよぉ!!」


「全く意味が分からん!!」


 斬撃の隙をぬってイモータル・シスターへと飛び込む。その卑猥な体に2連撃を放つ。



 スパンスパンァンッ!!



 放った斬撃がイモータルの体に深々と傷を刻み込む。


「く……っ!? ふふっ。無駄よぉ〜!!」


 一瞬にして再生する傷。やはり不死属性。一筋縄では行かないか。


「今度はこっちの番ね!!」


 シャキンシャキンキンキンキンッ!!


 放たれた斬撃をダガーで受け止める。しかし、その時、ビシリとダガーに亀裂が入った。


「どこまで耐えられるかしら!?」


 イモータルは話しながらも連続で斬撃を繰り出していく。ダガーで受け止めるが、徐々に押されていく。


 シャキンキンキン!!


「私の妹になったら毎日添い寝してあげるわ!!」



 シャキンキン!!



 チラリとガーラ達を見る。ガーラが捕まっていた子供達を連れ、扉を出て行く姿が見える。


 ……もう少しか。


「お風呂も一緒! その綺麗な髪も綺麗にとかしてあげる!!」



 シャキンキンキンキン!!



「その可愛い顔におやすみのキスもしてあげるわ!!」



 シャキンシャキンキンキンキン!!



「逃げ出したらどうなる?」


「決まってるじゃない……死、あるのみよ!!」



「やはり貴様は邪悪な存在だな」



 イモータルが振りかぶったタイミングで腹部を蹴り飛ばす。



「ぐっ……!? そこまでして私を拒否するのぉ!?」


「貴様のような偏執的な姉はいらん」



「綺麗だけどムカつく子ねぇ!!」



 襲いかかるイモータル。その爪の斬撃を避け、両手のダガーをヤツへと投げつける。


 シュッ!!



 タンタンッ!!


 

 イモータルの体に2本のダガーが突き刺さる。


「かはっ……!? でもバカね。武器を捨てちゃったんだからぁ!!」



 イモータルが私の両腕を掴む。



 扉の方に視線向けると、予定通り彼女・・・・・・が来ていた。皮袋に何かモゾモゾ動く物体を持って。



 よし。作戦通りだな。



「私の妹になりなさい!!」


「断る」


 イモータルの顔がスッと笑みを消す。そして冷たい言葉で私へと言い放った。



「そう……ならここで殺す」



「人の話を聞かないヤツだ……お前はここで倒す」



不死・・の私を倒すことはできないわよ? 諦めて死になさい……ロリババァ」



 イモータルがその両腕に力を込める。勝利を確信した顔をする。



「じゃあね。私の心の中で永遠に姉と慕ってね?」



 その邪悪な目を真っ直ぐに見つめ、声を上げる。



 イモータルへと絶望を叩き付ける為に。



「違うな。お前はママになるんだよ」



「は? 何を……」



 イモータルがそう言った直後。



 ヤツの背後に迫っていたゼフィーが、あるもの・・・・を投げ付けた。



「オラァ!! くらいやがれ!!」



 ブォン!!



「ママ〜!!」



 それは、彼女が捕まえて来た「バブみスライム」。ゼフィーに屈辱を与えた魔物。それが、イモータル・シスターの顔をブチュリと取り込んだ。



「がぼっ……!? な"、な"んなの"、これ"……!?」



「バブみスライム。その水分を摂取したものは催眠効果により、強制的にバブみスライムのママとなる」



「な"、な"ん"です"って"ぇ……」



「貴様の永遠の命。スライムのママとして過ごすのだな」


 ニュルリとイモータル・シスターから離れるバブみスライム。プルプルと震えたスライムは、愛を求めるようにイモータルの豊満な胸へと飛び込んだ。



「ママ〜!!」



「よしよし♡ スライムちゃんは今日はママと寝ましょうね〜?」

「ママぁ……ママァぁぁぁ……っ!」



 イモータルがバブみスライムに口付けをする。慈しむように。母のように。



「しゃっ! これで俺様もスライムに仕返しできたいしぃ? イモータルも倒せて一石二鳥だな!」


 ゼフィーが気持ちの良い笑みを浮かべた。



「ゼフィー」



「ん? なんだよ?」



「信じていたぞ」



 そう言った瞬間。ゼフィーの頬が赤く染まる。



「へへっ。まーな! アレックスの背中を守るのは俺様だからよ!」


「よし。では助けた子供達を村に送り届けるか」



 ゼフィーと共に部屋を出る。ふと振り返ると抱き合う魔物の姿が目に入った。



「よしよし♡」

「ママぁ〜♡」



 ママを求める者と妹を求める者。



 愛を確かめ合う2体の悲しき魔物。その姿は、本当の母子のようだった。






―――――――――――

あとがき。


 無事に幼女達を助け出したアレックス。次回、彼女達は新たな地へと旅立つ……。




 モンスター図鑑


 イモータル・ママ


 イモータルがバブみスライムの洗脳によりママとなった姿。不死の彼女は永遠にスライムのママとなる。悲しき定めを背負った魔物。


 しかし、その姿を見た者は言った。


 例え偽りの絆でも、その親子はとても幸せそうであった……と。

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