第15話 ユリス・キーダ姫、昇天。
「じゃあ……行くよ?」
全員がコクリと頷く。それを確認するとガーラがぼんやりとするゼフィーへと飛び付いた。
「ママ〜!!」
「……っ!?」
瞬間。ゼフィーがガシリとガーラの首筋を掴む。掴まれたガーラはダラリと足を垂らした。
「テメェ……俺様がいつママになったぁ?」
「ふぇぇ……」
怒りの形相で、フルフルと震えるフルヘルムの幼女を掴むゼフィー。その姿は以前までのゼフィーそのものに見えた。
「やったぞ! ゼフィーが元に戻った!」
「……良かった」
ニアと2人、胸を撫で下ろす。
「良かったです。ゼフィーが元に戻ってくれて」
優しい微笑みを浮かべるユリス姫。今回は本当に彼女に助けられた。
ユリス姫が手に入れた「オギャるワイバーンの涙」。それを飲んだことでゼフィーは完全に正気を取り戻したのだから。
良かった……本当に……。
「あ〜!? お姉ちゃんが泣いてるよ〜!?」
「え?」
ガーラに言われて目を拭う。
……そうか。私も、ガーラがママになって心配していたのだな。騎士団長たらんと冷静でいたつもりだが、どうも熱くなっていたみたいだ。
「ん? ん? なんでみんな涙ぐんでるんだよ?」
ゼフィーは混乱したような顔をした。
◇◇◇
「マジかよ……俺様が、ママに……」
事情を聞いたゼフィーが顔を青ざめる。そして、その手をギュッと握りしめた。
「クソッ! 俺様が突っ走ったせいかよ! ……すまねぇアレックス……」
肩を落とすゼフィー。そんな彼女の様子を見ると胸が苦しくなる。少しでも励ましたくてその肩に手を置いた。
「前に言ったろ? ゼフィーの失敗は私の統率不足によるものだ。私の責任だよ」
「だけどよアレックス……」
「……ゼフィー。そう思うなら次からはアレックスの指示をちゃんと聞いて」
「ニア……分かったぜ。これからは戦闘中でもアレックスの言葉をちゃんと聞くようにするぜ!」
ゼフィーが自分に言い聞かせるように何度も頷く。
私も精進しないとな。複数を指揮するのは初めてのことばかりなのだから。
「ふふふ……幼女達の友情……なんて素晴らしいの……」
私達を見てユリス姫が笑う。
私は、そんな姫に跪き、その手を取った。
「え!? なんですかアレックス?」
姫の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「姫。貴方には感謝しても仕切れません」
姫に悲痛な顔など見せられない。私は最大限爽やかに見えるよう笑みを浮かべた。しかし、瞳の涙は止められず、私の頬を一筋の涙が伝う。
「姫。本当に、ありがとう……姫の恩に報いる為ならば私は……」
ん?
なぜ姫は顔を赤くしているんだ?
「あ、あ、あ……」
固まったママ、目を大きく見開く姫。体を小刻みに
「姫……?」
話しかけようとしたその時。
ゼフィー達が姫の前に
「姫様! 俺様の為に命まで賭けて下さり、本当に感謝致します! 俺様の命は姫様のもの……姫様は命に変えても、お守り致します!」
「わ、
姫がビクリと痙攣する。
「……ボクも我が友ゼフィーと同じ想いです。この身は姫様のもの。御命令とあらばどんなことでもやってみせます」
「どんなことでも……んんっ!?」
再びビクビクと痙攣する姫。大丈夫だろうか?
「姫様大好き〜♡」
ガーラがヒシッと姫に抱きついた。
「〜〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡♡!?」
その瞬間。
姫がバタリとベッドに倒れ込んだ。
「「「「姫ええええええええ!!??」」」」
ビクビク痙攣しながら天井を見つめる姫。その顔は惚けたよう。
まさか、毒にでもやられたのか?
……あり得る。姫は王宮育ちだ。我らとは違い僅かな毒でもやられてしまうかもしれない。
心臓が早鐘を打つ。我らの恩人を死なせてはならないと脳が警告を発する。
「ニア。姫は森で毒にでも当たったのかもしれない。早く処置を」
「……う、うん。あの森、蛇型やクモ型モンスターを見かけたからその毒かも……」
「俺様に任せろ! こういうのは咬まれた後があるはずだ! ガーラ! 手伝え!」
「分かったよゼフィー。姫様ぁ……死なないでぇ」
サワサワと姫の体を
頼む……っ! 死なないでくれ、姫……っ!?
しかし。
「ひぅぅ!?」
毒がさらに回ったのか、姫は鼻から血を吹き出し空中に血の噴水を作った。
「「「「姫えええええぇぇぇぇぇ!?」」」」
「あ、へへ……ロリヴァーナイツが……
ユリス・キーダ姫の
―――――――――――
あとがき。
昇天してしまったユリス姫。しかし姫は毒にやられてはいなかったようですのでご安心を。
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