第12話 長い1日の終わり
あまりにも長い時間バスルームから出てこなかったのだ様子を見に行くと、キーラはがくりとうなだれて深く眠りこんでいたので、体を拭いて寝室着を着せ、ゲストルームのベッドへ運んだのだ、とラム入りのホットミルクが入ったマグカップを手に部屋へと戻ってきたオードリーがいった。
「随分と疲れて眠いのは知っていたのに……あなたを殺してしまうところだった」ベッド脇の椅子に腰掛けたオードリーはいった。
「でも死んでない」上体を起こして座り、手に温かいマグカップを持ったキーラはいった。正直何かを飲むような気分ではなかったが、脱水症状を心配して持ってきてくれたものを無碍にはできず、一口だけ飲んで手の中に収めていた。
「ええ、そうだね」とオードリー。「あなたは生きているし、私は殺人犯になっていない」
「その通り。二人とも無事だよ」キーラは冗談に応じて笑顔を見せた。
オードリーは立ち上がり、ナイトテーブルの上のハードカバー本を取り上げた。
「私はそろそろ出ていこうかな。あなたもそろそろ一人で休みたいでしょう?」
「……あの、さ」切り出したキーラの言葉は歯切れが悪かった。「ここまでしてもらっておいて今さら聞くのもおかしな話なんだけど、私、ここに泊まっていってもいいの?」
「ええ、もちろん」オードリーはくすりと笑った。「寝室着まで貸しておいて、もう夜も遅いから帰ってなんて言うはずがないでしょう?」
「あは、うん、確かに。それもそうだね」とキーラはつられて笑いながらいった。「ありがとう。明日、絶対に埋め合わせするから」
「嬉しいけど、無理はしないで」
言い残すと、オードリーはゲストルームを出て行った。
キーラはもう一口だけホットミルクを口へ運び、マグカップをナイトテーブルに置いた。
ベッドの中に潜り、枕に頭をのせて目を閉じる。部屋に光を満たしていたランタンがそっと灯りを小さくし、主導権を暗闇に譲った。
クロックワーク・エンジェル 佐熊カズサ @cloudy00
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