第2話 True Colors

 日に日に自分の体が弱っていくことが分かったが、もう時間の問題なので、どうという事は無かった。痛みと苦しみに耐えながらその日が来るのを待つだけだ。


 少しやっかいなのは猫を一匹飼っていることくらいだ。

 まだ1歳か2歳の白い猫だ。子猫の時に近所で拾った。これが2代目だ。

 

 離婚後に先代の猫をやはり拾って飼っていた。ミイミイとよく鳴く猫だった。

 必死に鳴かれても、僕は最低限しか構わずにいた。名前すらつけなかった。


 そのせいだろうか、やがて数年でその猫はどこかに行ってしまった。

 そして次に2代目の子猫が現れた。

 なぜこんな可愛い子猫を捨てるんだろう。

 人の事は言えないか。


 さすがに少し反省して、今度は撫でるくらいはしてやるようにした。

 まだ子猫なので可愛いということもあった。

 この猫もミイミイと鳴くので、今度はミイと名前をつけてやった。


 でも、僕はもうすぐ死ぬので、ミイの行く末を少し心配した。案の定、冬の間に僕の体調はどんどん悪化していった。


 ミイは寒がりなので、冬場は僕の傍で寝ることが多くなった。


 数日前から、ベッドで遠い昔の事を想い出すようになった。

 鎮痛剤を大量に使うせいか、やや意識が朦朧としていた。

 スローな走馬灯の上映会のように思えた。もう死は近い。


 雪が降ってきて寒さが厳しいこの日、ミイは例によってふとんの中まで入り込んできた。


 今日はさすがに寒すぎる様でふとんから出ていく気配が無い。しかも耳元でうるさく鳴く。でも構っている余裕はもうない。


 また意識が朦朧としてきた。空メールを送れるのもあと数回だろう。

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